6、後悔
「ねえ、お姉ちゃん……」
武器屋から帰宅する途中、ココルは姉に向かって口を開く。
「どうしました?」
「セトさんってさ……カッコいいよね……」
突然の言葉に、ココロは顔を赤くして戸惑う。
「え……!?あ……ええ、そう、ですね……」
「どう思ってる……?」
「え……?」
「セトさんのこと、どう思ってる?」
「私が、ですか……?」
「うん」
「わ、私は……」
ココロはそこからかなりの間を置いて、一度深呼吸をしてからようやくその問いに答える。
「……ステキな方だと、思います。優しくて、強くて、頼りになって……本当に、ステキな方です」
「そのステキな方っていうのはさ……セトさんを恋愛対象として見てるっていう、そういう意味?」
「え!?や、それは……その、やっぱり、同じ騎士同士ですし……恋愛対象として見るのは、セトさんにも失礼かなと……といっても理想の方ではあるというか……。ど、どうしてそんなことを聞くのですか?」
「いや、その、ね、私は、ちょっと本気で好きかもしれない」
その時、その瞬間、ココロは先程の自分の発言を後悔した。後悔し、そして思った。
先をこされてしまった、と。
そこから暫く沈黙が流れた後、ココルが再び口を開く。
「お姉ちゃんがセトさんを恋愛対象として考えていないなら、私のこと応援してほしいの。ここまで本気になるのも、私人生で初めてかもしれないからさ」
「あ……あ……の、私……そ、の……」
……私も、好きなの……。
「ダメ?」
「ダメという……わけでは……ないです……。ただ、えっと……」
……私も、好きだから……だから、応援はできません……。
「何?」
「えっ、と……いえ……。そう、ですね……分かりました……」
……分からない……今は、何も分からない……。
ココロのその言葉にココルは満面の笑みを浮かべ、喜んだ。
「本当!?やった!じゃあよろしくね、お姉ちゃん!まずは、そうだな……やっぱ舞踏会だよね!そこでちょっとアタックしてみようかな。というか、そもそもセトさん参加するかどうか聞いてみないとね」
「ハハハ……そう、ですね……」
ココロの絶望の表情に、ココルが気づかない筈はなかった。ただ、彼女は姉に対する罪悪感を無理やり押さえ込み、笑顔で続ける。
「じゃあ、ちょっと私今からお城の方行ってくるね!お姉ちゃんは先に帰ってて」
「……わ、分かりました……」
そしてココルは、一人ルヴェール城へと向かう。
その途中、彼女は小さく「ごめんなさい」と、そう呟いていた。