表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅ノ月ガ沈ム迄 ーTHE TOWER OF PRINCESSー  作者: Sodius
第二章 ルヴェールの影
14/73

3、白い牙

 セト、ココロ、ココルの三人は、ルヴェールを出て東へ。シェーンヴェントを抜け、雪原地帯ルイヒネージュへと辿り着く。


 ここからは気温もガクッと下がり、降り積もる雪を踏みしめながら進むことになる。


「うー……さっむ……」


 ココルの言葉にセトは剣スキル〈ガーディアンズグローリー〉を発動。それによりココルの体に加護が付与され多少寒さは軽減された。


「え……あ、ありがと……」


 顔を染めてそう言うココルに、セトは穏やかな笑顔で答える。するとココロも、少しだけ恥ずかしそうにしながらセトに向かって口を開いた。


「わ……私も、いいでしょうか……?」

「ええ、もちろんですよ」


 そして再び〈ガーディアンズグローリー〉により、今度はココロに加護の力を付与する。


「あ、ありがとうございます……。暖かいです……」


 顔を染めながらも、ココロはそう言ってセトに笑顔を向けた。


 そうしているうちに、三人の前方から一体の魔物が現れる。


「フロストファングですね」


 フロストファングは白い毛に覆われた体が特徴の狼型モンスター。全長2m程度で動きはかなり素早く、普通のファングとは桁違いの戦闘能力を秘めている。


「よーっし、いくよー」


 そう言ってココルが矢を引き絞り、ココロはメイスを構える。セトはそんな二人の前へ出て、アンネローゼから貰った白色の剣を抜き放った。


 牙を剥きながら飛びかかってくるフロストファングを、まずはセトがその剣で受け止める。


 それとほぼ同時にココルの矢が放たれたが、しかしフロストファングは素早い身のこなしでその矢を紙一重でかわしていった。


「なーっ!!!」


 隣で叫ぶココルを無視し、ココロは冷静に敵の動きを見極めメイスによる魔法撃を放つ。


 矢をかわした隙を突いたこの一撃は見事にヒット、若干怯んだ敵にセトは〈ディミニッシュブレイド〉で追撃していく。


「浅い……」


 が、彼が呟いた通り、〈ディミニッシュブレイド〉による一撃は素早く動く敵を掠めるだけにとどまった。


 フロストファングは若干のダメージを負いながらもスピードは落とさず、鋭い爪でセトに斬りかかる。その動きを瞬時に読み切ったセトは、今度はただ受けるだけでなく、敵の攻撃に対し〈シャープスラッシュ〉をぶつけていく。


「よし」


 またしても呟いた通り、ここはセトが押し切り、敵の体制を大きく崩すことに成功。


 それに合わせ、ココルは矢による一撃を、ココロは魔法撃を、それぞれ放ち、今度は重ねてヒット。フロストファングはその場に崩れ落ちた。


「せ、セトさん、盾はどうなされたのですか?」


 敵が倒れたことを確認し、ココロがそう言いながらセトに近づいていく。


「まだ、買い直していませんね……。その、お金を持っていないので……」

「そうでしたか……。あ、あの、よろしければ私の盾を使ってください。後衛の私よりも前衛のセトさんの方が使用頻度は高いと思うので……」


 ココロの言葉にセトはいつも通り穏やかな笑顔を向けるが、しかし首を縦には振らなかった。


「ありがとうございます。ですが、気持ちだけ、受け取っておきます。自分は剣一本でも大丈夫ですから」

「で、ですが……」

「ココロさんは、一番傷を負ってはいけないヒーラーです。盾は必要な筈ですよ」

「は、はい……そうですよね……。で、ではあの、今回の任務が終わったら、その……私から、盾をプレゼントさせてくださいっ!」


 彼女のその言葉にセトは驚き、暫くの間言葉が出なかったが、その間にココルが二人に近寄ってくる。


「よかったら私もお金出すよ。セトさんには……ほんと助けられたし」

「こ、ココル……!?い、いいんですよ、貴女の分も私が──」

「何?いっつも大人になれって言ってるのはお姉ちゃんじゃん。子供扱いしないでくれる?」

「べ、別に子供扱いしている訳ではないです!ただ、姉として、姉としてですよ!」

「そんなこと言って、ほんとはセトさんにいいとこ見せたいだけなんじゃないのー?」

「ち、違います!」


 喧嘩が始まりそうなので、セトがここで割って入る。


「で、では、お二人のお言葉に甘えさせていただきますね。今はとにかく標的を探しましょう」

「「は、はい……!」」


 そして三人は、積もった雪を踏みしめながら歩みを進めていくのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ