幕間─1
「クッ……流石にくらい過ぎたか……」
片手で押さえる腹からボタボタと血を溢しながら、『紅之大鎌』は一人グランツホルンの森まで引き返してきていた。
そして彼が森の中心辺りまで来たところで、突如その体を癒しの力が包み込む。
「あ……?誰だ……?」
同時に彼の前に現れたのは、二人の騎士。
「貴方がクリームなんとか……とかいう人ですかね」
そう口を開いたのは、顔に大きな縫い目のある軽装備の女。短めでオレンジ色の髪に身長は150㎝そこそこ、腰には二本の短剣を携えている。
「クリーム……舐めてんのか?」
「ええ、クリームを舐めるのは好きですよ。それであの、話は変わりますが──」
そんな彼女の後ろに立つもう一人は、フード付きのローブに包まり、さらに不気味に笑う仮面を被っているため性別すら分からない。ただ手にはメイスを握っているので、『紅之大鎌』を包む癒しの力は彼が発動しているもののようだ。
「──うちらを、子分にしてくれませんか」
彼女の言葉に『紅之大鎌』は暫くその女を睨み、そして問いかける。
「……理由は?」
「あの……イマイチ、生きる意味が分からんのです」
「……いい理由だ。名は?」
「うちは、そうですね……縫い目のヌイちゃんとでも呼んで下さい」
「イヌだな、分かった。そっちは?」
『紅之大鎌』はもう一人の仮面を指差すが、しかし答えたのは縫い目の女だった。
「こっちはうちの相方ですね。ADGとか呼んでます」
「ADG……?なんかの略か?」
「てきとうですナ」
ナ……?
「……まあいい。ついてこれるならついて来やがれ。使えねえようならぶっ殺すがな」
「ヘイ」
こうして縫い目の女とADGは、『紅之大鎌』に同行することとなる。
このときから、彼らは改革派、保守派に次ぐ新たな勢力となり始めていた。