恋の共犯者
その秘密を知ったそのときから、私たちは共犯者。
あなたが好きな人は私の親友。私が好きな人はあなたの先輩。
あれは2ヶ月前のこと。高2になって、少し経った頃・・・・・・。
* * * * *
あなたのことは高1から同じクラスだし、そうでなくてもそれなりにかっこいいっていうのと、なによりあの有名人な先輩と仲がいいってことで目だっているから知っていた。それに、視線を感じていたっていうのもあるしね。もちろん、いつだって視線をそそがれているのは、私の隣にいる超絶美少女=親友ですから、お間違いなく!
――だからね、別にびっくりすることはなかったんだ。
* * *
放課後、誰もいない教室で予習をしていると、部活を抜け出した彼がやってきた。私は普通にびくりとしてしまい、それを感じとった彼はなぜか謝ってきた。私は「ううん」と否定する。・・・・・・で、気まずい空気。(だってただのクラスメイトだし)
それを彼が打破した。
「宮前って、よく教室に残ってるよな」
「あ、うん。家で勉強するより調子いいから・・・・・・」
「そっか」
「うん――。そ、いえば、八城くんはどうしたの?」
「――休憩」
! くすくす笑ってしまう。だって
「こんなところでわざわざ? みんな、外にいるよ」
私は窓の外を見て(私の席は窓側の後ろから3番目で、教室は2階)、グラウンドの様子を伝える。すると――
「そこ特等席だろ」
突然言われドキッとし、その後の「先輩のこと見てるだろ」という問いかけに反応が遅れた。
・・・・・・・・・・・・。
「はあ!?」
彼は少し間をあけて、カラッと笑い
「協力してやるよ」
押し付けのような親切を言ってきた。だから、ピンときた。
「ああ、あのことのこと、とりもってほしいんでしょ」
私はいじわるく尋ねる。
「いいよ。協力してあげる」
私は笑って言いました。
* * *
私たちは恋の共犯者(ネーミングセンス0ですいません)になっていた。
でも――協力するってことにしたのは、先輩とのことを協力してくれるからじゃない。だって、わかるよね?
私が好きな人は彼です。
だから、好きな人の恋を実らせたいって想ったんだよ。せめて友達になりたいって想ってしまったの・・・・・・。それが――どんなに苦しいことか心でわかっていなかったから。
* * * * *
「ねえ、“悦郎"。なんでこの問題がわかんないの?」
私はにっこりと、八城くん呼びからいつのまにやら名前呼びに変わった彼に、問いかける。彼は少し私をむっと拗ねた表情で
「俺は“こより”と頭のつくり違うんだよ」
きっぱり言いきった。
えー、本日、教室に残って、テスト勉強中です。ちなみにメンバーは私と悦郎の他に2名。私の親友、彼の先輩なのはおわかりでしょう。なのに、できたペアは私と悦郎。親友と先輩。・・・・・・いえ、うれしいですよ? うれしいけど、彼の気持ちを考えると複雑な気持ちになってしまう。
でも、仕方ない。必然的に教える側になるのは、私と先輩なのだ。別に男女に分かれればよかったのかもしれないが
「先輩。教えてください♡」
なんてあのこが頼んだのでしょうがない。
別に彼女は先輩が好きってことはないんだけどね。理由は――
「宮前、スパルタだな。そうはみえないのに・・・・・・」
先輩が言ったこの一言につきる。
「ですよね、先輩。だから、こよりに教えてもらうのは嫌なのよね」
付け加えていただかなくて結構なんだけど・・・・・・。まったくね。だいたい
「さっき教えたばかりのとこを、間違えられるのってショックなんだよ」
私が抗議の声をあげると、先輩が納得してくれた。でもって、残り2名が更なる抗議の声をあげたのでした。
そんなこんなで、結局自分の勉強してたのか謎のまま帰宅の時間。悦郎は笑って感謝の意を述べた。その笑顔が苦しいのをあなたは知らない。
たまにわからなくなる。私はなにをやっているだろうねって想う。だんだんと友達でいるのが苦しくなってきている。私の本当の秘密を隠すことが苦しい・・・・・・。
* * * *
テストが終わった。でも、放課後の教室に、私はあいもかわらずいます。今日は雑用を頼まれてです。
うー、暑い。お茶、ほしいなあ。――買ってこよ。
私は仕事を中断させて、自販機に向かう。ちなみに校内の自販機に好きなお茶がないので、わざわざ体育館横に設置されているところまで・・・・・・。でもって、本当は靴に履きかえなきゃいけないのに、うわばきのままなのは、昇降口からまわるのは遠回りだからです。
お金をとりだそうとすると
「こら!」
怒鳴られて、振り返る。
って・・・・・・
「先輩! おどかさないでください!!」
「いやー、悪いね。けど、そんなにびびるとは・・・・・・」
先輩はかなりうけているよう。でも
「お詫びにおごる。なんにするんだ?」
さすがって感じです。
私は先輩におごってもらったお茶を、先輩はスポーツドリンクを飲んでいる。
「休憩中ですか?」
「まーな。宮前は?」
「雑用、頼まれたんですけど、自主休憩です」
「なるほど。で、わざわざここに買いにきたのか?」
「好きなお茶がないんですよ」
「ははは、いいな、それ」
「どーゆー意味ですかっ」
「なんからしいって想ったんだよ。っと、そろそろ時間だ。じゃな、宮前。がんばれよー」
先輩はぽんっと肩をたたいて、戻っていった。
先輩が人気あるのってわかるよねえ。でもさ――やっぱり、恋じゃないんだよね。仲よくなれたのはうれしいけど、利用してるみたいで、申し訳ない気持ちになる。
「はぁ――」
さてと、私もこんなとこにいてもしょうがないし、戻るかな。
そのとき、部活に戻ったもんだと想った先輩の声が聞こえた。不思議に想って、声がするほうへ行ってみると――
こ・告白シーン!? 先輩、告白されてるよ。もてんのは知ってたけど、見てしまうとはなあ。でも、すごいな。あの女の子。告白なんて前よりもっとできない気がするもん・・・・・・。
そう想うと、またため息がでた。
このとき、私は知らなかった。この告白シーンを私の他に見ている人がいることを・・・・・・。私が見ていることを知っている人がいることを・・・・・・。
終わったー!
ところで私は外を見る。
あ。やった☆ 悦郎たちも終わったみたいだ。声かけれる。
なんて外の様子を見ていると悦郎と目があった。で、なにやらジェスチャー?
意味がわからないでいると、彼が昇降口に向かってるのがわかった。
ここにいろってことかな?
私が教室で待っていると、彼が来たのでどうやらまちがいではなさそうだった。
「どうしたの?」
「こより、いいのか?」
「は? なにが?」
「先輩がもてんの身をもってわかっただろ」
「・・・・・・あ。悦郎もいたんだ。すごいよねー」
「おい、そんなんでいいのかよ。ため息ついてたくせに」
! なんでそんなとこまで。それに、あれはちがうというのに・・・・・・。
「あれは、告白できるなんてすごいなって想って、私は弱いなって想ったからだもん」
彼は呆れたような顔をして
「ライバルほめてどうするんだよ」
「う、うるさいなっ。いいでしょ、告白しようとしまいと私の勝手じゃん」
「勝手って、俺、協力してんだけど」
私は少しむっとする。
「そんなの頼んでない。だいたい悦郎こそ告白したらどうなの。あのこ、もてるよ」
「――俺はいいんだよ」
ずきっとなる。
だって、私、がんばったんだよ? そんなのって――なくない?
「なにそれ・・・・・・。悦郎こそ勝手じゃん! 他人のこと言えないじゃない!!」
私は大好きな人を睨みつけた。
「はっきり言う。私は先輩に告白なんか一生しない」
間があく。
「はあ!? なんでだよ!? あきらめるのか? 告白してみないとわかんないだろ!?」
「そういうことじゃない!」
「じゃあ、なんで告白しないんだ?」
――っ、告白、告白って・・・・・・
「そんなに私に告白させたいの?」
私は彼をじっと見て、うつむいた。
「でも、私は先輩には告白しないよ。だって、私、先輩のこと好きじゃない」
声が震えていた。
「こより?」
私は泣きながら彼を見た。
「私が好きなのは先輩じゃない。悦郎――なんだよ? 私は最初からずっと悦郎が好きだった。なのに・・・・・・」
私は笑う。
「もう、協力なんかいらない。でも、もう協力できない。限界、だよ・・・・・・」
私がかばんを持って帰ろうとすると、腕をつかまれた。
なっ
「離し・・・・・・て、ょ――」
言葉が弱くなっていった。だって、彼はすっごい真っ赤なんだもん。涙もひっこんでしまう。
「え、悦郎?」
「俺、本当に頭のつくりやばいじゃねーか」
「はあ?」
「俺は! こよりが見てんのは先輩だと想ったんだよ!」
「へ?」
「へ? って、わかれよ」
「な、なに」
「――っ」
彼はため息をついた。
「俺が見てたのは、こよりってことだよ」
・・・・・・! 真っ赤になる。だって、それって――
「私のことが好き?」
彼は更に真っ赤になって、ちょっと焦った感じになって――
「好きだ」
ぽそりとだけつぶやいた。
* * * * *
悦郎とつきあいはじめました。放課後はあいかわらず教室です。ちがうことは、堂々と悦郎を見れること。あなたが迎えにきてくれること。そして、共犯者じゃなくて、恋人だってこと――です。
はじめに補足です
悦郎くんがあの日教室に行ったのは先輩のさしがねです、というか罰ゲーム的?
先輩は悦郎の気持ち知ってましたからね
で、なぜ彼はあんなことを言ったかといいますと、あほだからです
一応、こよりの幸せを考えたようだが、はっきりいって不幸に・・・・・・
先輩もびっくりです、だってこよりの視線の先一緒にいて気づいてますからね
こよりの親友ちゃんも両想いだろうことには気づいてましたね
補足はこんな感じですかね、本文にと思ったが、簡潔にしたかったので、あとがきで
王道バンザイ! なお話でした