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女隊長の春  作者: 神白響
1/1

プロローグ

 

 彼女がそれを聴いたのは、まさに戦場の直中。

 その瞬間まで切り結んでいた相手の懐を取った時だった。


「・・・」

「・・・」


 視線こそ互いに外さなかったが、二人の耳には確かにその音が聴こえていた。

 物悲しく、響いていく鐘の音。

 戦場においては幕引きの合図。

 やがて、両手剣を構えていた屈強な戦士が呟いた。


「・・・負けたか。」


 その声は、何処か安堵したようにも、何かを悔しがるようにも聞こえる。

 これまで何度も戦場で見え、何度も切り結んできた相手の一言。自分とさほど変わらぬ腕前を持つこの男を、彼女はじっと見上げた。

 苦しい戦いだった。

 悲しい戦いだった。

 何故、やめることができないのかと嘆いてきた。

 だが、今初めて、終わりなき戦いは終焉を迎えたのだと、彼女は男を見上げながら思った。

 男は、涙を流していた。

 一筋の涙を。

 男の眦から零れ、血を吸った大地に落ちていく。

 大の男が、武勇の将として恐れられる男が流す涙は、彼女の気持ちさえ表しているように見えた。

 彼が涙しなければ、自分がしていただろうと思うくらいに。


 言葉はなかった。


 ただ、彼女は黙って自分のあるべき場所へと戻るため、武器を納め踵を返す。





 ようやく帰れる。



 そう何度も繰り返しながら。

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