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「 Greed ━ 僕の体の99%を占めるもの ━ 」




 「好きな人ができたの。」

 その10文字を咀嚼すればするほど,彼女の言葉は僕の体中の骨を叩き,砕いていった。

 そして同時に,僕の体の中で,何かが,生まれた。




          1


 いちかと出逢ったのは大学の英語の授業だった。A大学は,英語能力ごとにクラスわけを行い,習熟度別学習を行う。1番レベルの高いクラスは担当も外国人,授業で使える言語もイングリッシュオンリーという徹底ぶり。低いクラスは日本人で高校レベルからのスタートとなる。僕は上から3番目の,中の上か上の下か,くらいのクラスだった。

 いちかの存在には気づいていた。なぜなら僕が30分より前に教室に到着する生真面目な性格であった以上に,時間をきっちり守り,いつも窓際前から2番目の席に座っている,気になる存在だったからだ。

 いちかはぶっきらぼうであった。教室に入ってきた僕に対して一瞥をくれるも,すぐにぷいと窓の方を向き,空を眺めている。僕はいつも挨拶をしようと思っていたのに,こんなことが何回も続いたので,次第に挨拶をすることを諦める様になっていった。

 しかしいちかは可愛かった。白い透き通るような肌に,ふわふわした可愛らしいワンピース,ほっぺは少し膨れていて,目はとろんとしているのか,ぱっちりしているのかわからないような妖艶さを醸し出している。もし「愛嬌」という名前の人物がいたとすれば,彼女のよう風貌をしているに違いない。彼女は魅力的だった。


 4週目,僕は有らん限りの勇気を出して彼女に話しかけた。


 「おはよう。」


 彼女は声のした方へ,何かを取り繕うかのように体を向け,笑顔ではにかんだ表情をみせた。

 

 「おはよう。」


 やはり「愛嬌」が具体化したものと表現しても過言ではなかった。表情,仕草,足の動かし方から,至るところに「愛嬌」の欠片が内在しており,自身に見惚れさせ,目を釘付けにする技能を彼女はもっていた。それを彼女が自覚していたか否かは定かではないが。


 「いつも早く来てますよね。俺だって早い方やと思てたのに・・・」


 「うち家が亀岡で遠いから,帰ったりできひんし,次の授業の教室が開いてたらそこで待つことにしてるんです」


 なるほどと聞きつつ,時計を見る。

(今は12時40分。昼食時間を挟んでいるから前の講義が終わるのが12時。・・・1時間もここにいるのか。毎回・・・。)


 そこからは他愛のない話をし,彼女がBUMP OF CHICKENをこよなく愛していること,方面に関する様々な知識を有していること,そしてそれに対して中途半端な興味や関心で話題を振ったりすると「ミーハーだ!(とでも言いたいのであろうか)」とてつもなく不機嫌になることがわかった。かなりのプライドをもって,BUMP OF CHICKENを愛しているらしい。


 この日から,僕と彼女は一緒に横に並んで授業を受けるようになった。


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