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dシリーズ

dozi(ドジ) dシリーズ4

作者: TAMAKI
掲載日:2011/01/16

「まさか、あいつがマキと?」


 学食に置き忘れてある健二のケータイ。ケータイを変えたことすら知らなかった。

 そして思わず、中を覗いてみたんだが。

 そこに頻繁に届いている、真樹夫なる、一見男っぽいメール。中身こそ消されてはいるが、履歴は残ったまま。


「いかにも、だなあ」


 もちろん、この行為自体もも罪の一つだろう。だが


「罪にも、重い軽いがあるはず」



 早速、親友の水島茜に相談してみる事にした私。


 喫茶店の向かいの席でレモンティーを口にしている彼女だが、ストローで吸っている気配はない。


「驚いたなあ。健二君と、あのマキがねえ?」

 と、目は丸くしているも


「でもさ、里香? それって、証拠不十分じゃない?」


 そう言ってくるとは意外だった。だが、これには


「それとね、恥ずかしい話だけど……最近ちっとも会ってくれなかったし、あいつ。今日なんて、たまたま学食で出くわしただけで」


「今度は状況証拠か」

 茜が頭を掻きながら


「それでさ、どうする気?」


「どうって」


 そこまでは考えてなかった。ううん、考える暇もなかった。

 これに彼女は


「明日にでも、彼のアパートに行ってみる?」


「そ、そうする」


「それからどうするの?」


「えっと、事実を突き止める」


「そっかあ」

 ここで彼女は、ようやくレモンティーを吸い始め


「彼が認めて謝ってくるケースと、認めても開き直ってくるケース、それとさ」


 何を言いたいのかわかった。


「認めないケースかあ」


「そそ。この三つのケースが考えられるね。でさ、その時に里香がどんな態度を取るべきかね、前もって決めてたほうがいいよ」


「わかった」


 やはり気が立っていたのだろう。これらの他のケースなど、考えもしていなかった。



 茜と別れた後、その足で寮まで戻ってきた私。

 本当に疲れた一日だった。でも、これからがさらに疲れるのは、目に見えている。


「開き直りとか、認めないっていうのは論外だ。でも、もし謝ってきたら?」


 こんな気弱な私に、声がかかる


――謝ろうが、謝るまいが、事実は事実なんだからね!


 そうだ、そのとおりなんだ。私が傷ついてるのは事実なんだから。


 そしてこの場に及んで、健二の顔より、マキの顔のほうがクローズアップされてきた。

 小学校以来、ずっと一緒だったマキ


――これこそが、許せない!


 よし。健二の部屋に着いたら、マキも呼び出そう。

 徐々に、自分の取るべき行動が明確になってきた。

 そして――もはや、誰にも止めることはできない……


「明日の午前中に、ホームセンターに行こう」



 そして夕方。これで、今日三度目だったが。

 心臓を激しく鼓動させながら押した私のチャイムに、中から


「誰?」


 これに、昨夜考えた台詞を口にした。計画性を持って行動せよ、茜の指示通りだ。

 すぐに声を大きくした私


「マキ……」


 悲しかった、とても。何の返事もなく、チェーンが開けられてしまった。


「どうぞ!」


 こう言って見せてきた笑顔を、みるみる険しくさせた健二。

 そこに、こう言ってあげた。


「……の親友の里香よ」



 久しぶりに訪れた彼の部屋。だから、私の記憶違いかもしれないけど……いや、やはり以前とは様相が異なってるような。

 あれだけしょっちゅう来てたのに。


「どうしたんだ? 突然?」


 テーブルを挟んで椅子に座った私。


「最近、ちっとも会ってくれないよね?」


 だが、これには澄まして


「ああ、ゼミが忙しいからなあ」

 そして、すぐに顔を近づけてきて


「そんな事を言いにわざわざ?」


「あ、いや」

 今だ! 無造作に、テーブルの上に置かれているケータイを顎で指した私


「そこに載ってる真樹夫って誰?」


 少し強めに言ったつもりだったが、相手はさらに強く言い返してきた。


「人のケータイ見たのか? それって犯罪だぞ!」


「罪くらいわかってる! それは謝ります!」

 すぐに頭を下げた後、私は再び相手の目を直視し


「じゃあ、健二は罪を犯してないって言い切れるの?」


「どういうことだ?」


 いくら予測どおりとはいえ、心が折れてしまいそう。

 で、でも、ここは気を確かに! 何しに来たんだ? 里香!


「マキと付き合ってるんで……付き合ってるよね! さっきも、マキって聞いたからドアを開けたじゃない!」


 ど、どう出てくる? あ、謝りなさいよ、ねえ?


「何、言ってるんだ? 俺が付き合ってるのって、おまえに決まってんじゃん!」


 あ。そ、そうなんだ。そうくるんだ。じゃあ


「だったら、今から電話して、マキもここに呼ぶからね!」


「え?」


 やはり、これは効いたんだね。もろに驚いてるし。


「わ、わかった。正直に言うよ」

 数回頷いた彼、後ろを振り向き


「ちょうどコーヒーも沸いたようだし、それを飲みながらでもいい?」


「いいよ」



「はい、どうぞ」

 カップを私の目の前に置いた健二


「えっと……」


 これに呆れながらも、私は


「砂糖は二つ、よ!」


「ああ、そうだった」


 場の雰囲気にはそぐわない、心地良い香りが部屋中に広がっている。


「どう? 美味しい?」


「一応は」


 私の返事に、彼が苦笑いをし


「一応ねえ」


「さあ、しゃべってよね! ホントのこと!」


「はいはい」

 健二、露骨に嫌そうな顔で


「付き合ってる子いるよ」


 予想してたんだけど、してたんだけど


「以上!」


「そ、それだけ? マキでしょ!」


 この時背後から


「パパの名前ね、真樹夫っていうんだ」


 心臓が止まりそうだった。こ、この声って?

 思わず振り返ると


「あ、茜! な、何でいるのよ?」


 これに答えようともせず、彼女は


「たまたまだけどさ、まさかマキと勘違いするとはね。パパの名前借りて大正解だったよ」


「ちょ、ちょっと、一体何の……」


「まさか、真っ先に相談に来てくれるとは! やっぱり常日頃の親交って大事なんだね」


「え? え?」


「ホント、マキもいい迷惑だよね。勝手に疑われちゃってさ」


 ここで、ようやくわかった


「じゃ、じゃあ、健二と付き合ってるって、いう、のは」


 声がかすれてきている。


「私、水島茜です。驚いた? そりゃ驚くよね?」


「そ、そん、な、あ」


「里香って、自分の意志で来たって思ってるでしょ? 違うんだよなあ、これが」

 すぐに彼女、大きく口を開け

 

「アッハッハ、私に上手く誘導されたんだよ!」


「ま、まさか、あ」


「大体ね、会ってくれないなら、嫌われてるって証拠じゃん? それくらい気づきなさいよね。健二だって、ホント困ってるんだから」


「け、けんじ、って」


「何? 健二を健二って呼んだだけじゃん。それに、ホームセンターで包丁買ったのも見たよ」


 何だか、言ってることが聞こえづらくなってる。


「なあ、里香?」


 な、なに? けんじ?


「あと二つだけ言うね」


 ふ、た、つ、だけ?


「一つ。みすみす、殺されるわけにはいかない」


 え? な、ん、て……


「二つ。俺の専門は、キミも知ってのとおり」


 き、き、こ、え……



「化け学」                    了


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