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「彼女はアイフェ、若いがこの街でも屈指の魔法使いだ。冒険者カードを見せてごらん。」
とラベンが促すと、「はいよ」アイフェは頷いて冒険者カードを見せてくれる。
俺のカードとは少しフォーマットに差はあるが能力は書いてある。
筋力1、器用さ7、敏捷さ2、知力8、魔力9、幸運5となっていた。
「勇者候補様のを見せてもらえます?あ、アタシはアイフェ、魔法使い。候補様の名前は?」
「名前はアキラ。やっぱり特別な能力は何にもないと思うんだが。」
面倒になってきたので苗字は省略することにする。
アイフェは「ふうん」といい俺のカードを見る。
「魔力が4もあればちょっとは違うはずだからわかるかもしれないけどなぁ。アキラ様、手を触らせてもらってもいいかな?」
そう言ってアイフェは俺の手に触ってくる。
その時、俺は息を飲んでアイフェの顔をまじまじと見てしまっていた。
「あれ? どっかで会ったことありましたっけ? 流石にそんなに見つめられると恥ずかしいというか」
「いや、何でもないよ。ちょっと見惚れてただけかな」
と自分でも雑な返事をしたのは分かっていた。
「おお。勇者候補様に惚れられちった」
などどアイフェは言っているが。
「うーん、言っちゃ悪いかもですけど魔力4も怪しいくらい何にもないレベルでしたよこれ。多分1か2、下手すると0かも。もしかして元の世界には魔法がなかったりとか?」
「ああ、なかったよ」
「あちゃー。じゃあこれも怪しいもんですな。なんで勇者候補様なのにこんなに能力が低いんだろ?」
「それは・・・・・・」
とここでこの街に来るまでのいきさつを話した。
ただ、ゴースが討たれたところは伏せて急に落ちたことにしたが。
「ではやはり能力は未獲得ということになりますな。でもこれでは勇者候補様としての仕事も怪しいのでは?」
とラベンが言う。
確かにその通りだ。無能力ではどうやって魔王など倒すことができよう。
「えーと、言いにくいけど無能力の一般人だとその辺の魔物どころか、森林の野生生物ですら怪しいかもしれないよ。この勇者候補様だと冒険者の護衛が必要になるくらいには」
とアイフェは言う。
まあ現代でも熊や猪なんかは一般人では倒すのは不可能だから、当たり前といえばそうだ。
「とりあえず勇者候補様なのには変わらないですから、これからの待遇は定められたとおりに行いますよ」
フマルがそんなことを言ってくれた。
無能力でも普通の待遇は受けられるらしい。
「では、今日はこんなところにしてギルドに戻りこれからの話でもしましょう。アキラ様も疲れていらっしゃるはずですしね。アイフェ、ありがとう。今の支払いは全部私がしましょう」
ラベンがそう提案する。
そういうところで俺たち3人はギルドに戻った。




