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「ラベンは魔王側の人間だったよな? 初対面の俺の名前を知っているはずはないし」
「ええ、そうでしたよ。だから能力がある、と悟られた時点であなたや、周りの者ごと消そうとしたはずです」
「アイフェには気づかれていたのかな?」
「あの子はアキラから切り出さない限りは魔力の話題はしないように考えていたようです」
ということは、異世界で俺が勇者たる能力があると気づいていたのはアイフェだけか。
ああ見えて口が堅いアイフェだったらしい。
「串焼き屋を手伝わずに、強大な魔力をアイフェに打ち明けた場合は、今あの子がアキラの隣にいたことでしょう」
「にゃあは別に、アキラが他の女とくっついても嫉妬にゃんかしにゃいにゃ」
些細なことでもないが、それで運命は分岐していたらしい。
「天気が気になって教会へ行けばマイヤに、雪の日にぬいぐるみの話題を挙げていればマレインに、もっとあなたのいた世界のことを詳しく話せばフマルに、そうやって隣にいる方は変わっていたかもしれません」
(このあと魔王が神となり、統治する世界で一番辛い思いをするであろう方がクロでした)
ゴースは頭に直接語りかけてくる。
(他の方は偽りの平和の中暮らしていきますが、敗北した魔王軍側ということになってしまうクロさんの未来は酷いものです)
「時がくるまで何もするな、知らない声にただそう言われて耐えられる人間はそうはいません。だからこそ、あなたは最低限の犠牲で最後に勇者となりました」
「俺がさっき倒したのが魔王軍の幹部すべてだったんだろう?」
「そうですね。魔王軍は勇者をつぎつぎとすべて倒して、勇者に姿を変化させた魔物を街へ送りこみ、戦果を挙げたようにみせていました。あなた以外の勇者はすべて偽物にすり替わっていたのです」
めちゃくちゃ狡猾な魔王軍だな。
すべてを掌握するまで負けを演じていたとは。
「今頃、化けた勇者たちは上の者がいなくなったことで困惑しているでしょうね」
そりゃそうだろう、祝勝会へ行ったはずの上司が全滅しているんだから。
「それにしても勇者を捕らえて、祝勝会で見世物にするなんて。魔物の考えることは本当に理解しかねます」
「魔王はそれほど乗り気じゃなかった気がするが?」
「部下の考えを無碍にするほど、魔王も狭量ではなかったということです。それを逆手にとってアキラを召喚したのですが、私の読みは大正解でした」
暴君でないのを女神に突かれて負ける、こんな話初めて聞いたな。
俺はいいように使われただけか。
それでもいい、どうせなら俺はちゃんと元の日本で生きていきたい。
「さて、そろそろお別れのときが来たようです」
「そうみたいだな」
この先はひと際光が強くなっている。
「もうあの世界のことは気にする必要はありません。少しゴタゴタしますが、いずれ平穏になるでしょう」
「あなたの活躍は誰にも知られることなく去ることになってしまいますが・・・・・・」
「別にいいよ。連れて帰るクロがあの世界にいた証明だ」
もしかしたらアイフェが気づくかもしれないが。
もうあちらへの別れは済んでいるつもりだ。
「クロもいいのですね?」
「いいのにゃ。どうせアキラに会ったときににゃあは死んだようなものだからにゃ」
「では・・・・・・これからの2人の生活に幸福を、どんな困難もあなたたちにはどうということはありません。女神の私が保証します」
「ありがとう」
異世界でも感謝の言葉ばかりつかっていたな。
それだけ周りが優しかった。
そうして俺たちは次の光へと歩みだした。




