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「ここに誓え、本当に俺の勝ちでいいんだな?」

「ああ、魔王の言うことなぞ信じられんかもしれないが儂の負けで、お前の勝ちだ」


 俺は「ふうぅ~」と息を吐き全身の力を抜いて魔力を収める。

 不意打ちの可能性も捨てきれないが、もういい。

 やれることはやったのだ。

 踵を返して寝かされているクロのもとへ向かう。

 クロは目を覚ましていて、お腹を押さえて泣いている。


「にゃ、赤ちゃんがいるにゃ全部だめにゃと思ってたのに・・・・」


 クロを抱き寄せて魔王に向き直る。

 魔王はこちらによって来ていた。


「お前は無能力では無かったのか? ラベンからの報告はほぼ一般人と聞いていたが、その魔力や強靭さは明らかに勇者のものだ。しかも魔力は桁違いの」

「ご主人やっぱり勇者だったにゃ!」

「俺は無能力ではなかったんだ。この世界に来た初めから」

「そうだったか。やはり運命を司る女神に呼ばれたことはある。儂のところに来るよりも、まんまと儂がお前の前に引きずりだされるとはな」


 魔王が天を仰いでいた。

 こんな負け方は予想だにしていなかったのだろう。

 何せ魔王は、神も、呼ばれた勇者も俺以外はすべて倒したのだ。

 最後の勇者候補として、無能力で、偽物の現実世界でクロとの不幸を見世物にされた俺以外は。


「それよりも俺とクロを現実世界に返して、お前がこの世界の神になれ、それで俺は満足だ」

「そこまでの力は儂にはないぞ。」

「俺の魔力はお前に渡す、それで俺を元の世界に返してくれ。現代日本に帰って、異世界でできた妻と幸せに暮らす、それが俺の初めの願いだ」

「にゃ? ご主人の願いってゴース様に伝える前に地上に来たんじゃにゃいの?」

「長いしそれは戻ってからでも話すよクロ」


 俺は右手を魔王に差し出す。

 魔王はそれを握り返す。

 俺は魔王に魔力をすべて渡す、魔力のタンクのような感覚のものも全部。

 俺の魔力がカラになったところで手を放す。


「儂が訊くのもおかしいが、本当に儂が世界を収めていいのか? 魔王なんだぞ」

「実は、俺は呼ばれたときにこの世界を魔王の手から救う約束はしていないんだ。女神もそういっていた、もう負けるのは分かっていたんだろう」

「わかった。お前ら人間が住むにはつらい世界になるかもしれないが儂は人間に負けた身、善処はしよう」

「ありがとう」

「では元の世界への門を開けるぞ」


 そういうと魔王は神妙な面持ちで両手をかざすと光に包まれた道が現れる。


「それじゃあこれで」

「ばいばいにゃ」


 まさか魔王と友達みたいなやりとりをして帰るのも普通ではないのだろうが、これからは普通ではないクロと暮らしていくのだ。魔王との別れが異世界最後でもよい思い出だろう。

 クロと手をつないで光の中を歩く、するとこの世界で初めに会った顔がいた。


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