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時間は矢のようにすぎる。
まるで時計を早回ししたように。
クロの出産が近づいていた。
病院へ連れて行くのも面倒事になりそうなので、訳あり用の金を握らせた医者に自宅出産にしてもらった。
1部屋丸ごと出産用の機器を置いて備えている。
部屋には医者と産婆、クロの3人だ。
俺はリビングで待機している。
クロの荒い息遣いが聴こえる。
もう生まれるのだろうか。
長い時間が経ったように思える。
凄い勢いと共にドアが開き、血相を変えた産婆が部屋から出てくる。
「旦那さん、大変なんです!!」
どうしたのだろう?
「それが・・・・・・息をしていないんです」
なんだって?
見ればヘソの緒のついた生まれてきたであろう、猫耳の赤ん坊は泣いていない。
息をしていないようだった。
俺の顔を見て医者は首を振る。
そんなことがあっていいのか?
俺は目の前の出来事が信じられなくて、泣きながら近くにあった箪笥に頭を強く打ち込む。
1回、2回、3回、・・・・・・何度も頭を打ち付ける。
血が止まらない、それでも頭を打ち付け続ける。
医者の静止も振り切り打ち付ける。
痛みの限界で意識が無くなる。
その瞬間だった。




