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「にゃあは馬車になら乗ったことがあるにゃ。お尻が痛くにゃるから好きじゃにゃかったけど」
俺は結局、異世界で馬車も牛車も列車も乗らなかったな。
特に未練はないけど。
「あれはなんにゃ?」
自販機を指さしている。
「飲み物が売ってる、無人の販売機だよ」
家ではお茶と水ばかりだ、たまには他の飲み物もいいだろう。
小銭入れから100円を出す。
「これ、にゃかに誰もいにゃいんにゃ?」
コンコン側面を叩いている。
「いないよ、どれが飲みたい?」
100円を入れながら聞く。
「ん~、これにゃ」
オレンジジュースだ。
スイッチを押すとガコンと缶が出てくる。
いっしょにお釣りもだ。
缶を取り出す。
「今飲んでみるか?」
「飲むにゃ」
缶を開けてクロに渡してやる。
クロは一口飲んで、
「めちゃくちゃ甘いにゃ、前に飲んだ茶色いやつのが好きにゃあ」
オレンジジュースといっても様々だから甘味料多めのやつだったようだ。
俺はもう100円出してミルクコーヒーを買う。
「じゃあこっち飲むか?」
「いいのにゃ?」
「そっちの飲みかけと交換でいいよ」
そうしてクロのオレンジジュースをもらう。
2人でジュースを飲みながらゆっくり歩いていく。
ジュースを飲み終わり、着いた場所は15年ほど前に通っていた中学校の近くだった。
いつの間にか踏切もなくなり、何もなかった周りはショールーム、レンタル倉庫、コンビニが増えていた。
卒業以来、全く来なくなったのだがずいぶんと変わったものだ。
「そこはにゃにしているのにゃあ?」
見ると中学の校庭でバスケットボールをやっている。
体育の授業か何かだろう。
「学校だよ。みんなで勉強とかするんだ」
「? 勉強は家でするんじゃにゃいのか?」
「ある程度の年齢になると、こういう場所にみんなで集まって教わるんだよ」
「にゃんだか窮屈そうだにゃあ、教えてくれるのはありがたいとは思うんにゃけど。にゃあみたいに嫌われてたらつまらないにゃ」
まあそうだ、俺も学校が嫌いだった。
何をやるにもみんなでやる、高校まではまるでやる気が出なかった。
大学は自由に好きな授業が受けられるし、サボるのも自由で肌にあっていた。
興味のあるほぼ全科目で満点を取るくらいには。
必要なものだけ自分で取捨選択できるほうが楽だった。
「あっちには学ぶ場所はなかったのか?」
「貴族は家に教師を呼ぶけどにゃ。にゃあも読み書きと言葉遣いくらいは教わったにゃ。たぶん普通の家じゃあ親兄弟から教わるけど、働きづめの家じゃあ無理にゃ」
異世界では勉強も金が無ければできない。
日本は恵まれているほうなのだろう。
すべてまとめて、個人を無視した方針がいいのかは俺にはわからないけど。




