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冷蔵庫からばらちらしを3つ出してきて箸と一緒に長テーブルに並べる。
ついでに箱買いしているペットボトルのお茶も3つ。
うちの食卓は洋室のリビングに普通に座布団へ座って食べる、じいちゃんは椅子だが。
「アキラさん」
クロに呼ばれて目で何か合図された。
ああ、箸がわからないのか。
代わりにスプーンを出してやる。
「ありがとうございます、まだこちらの生活に慣れなくて」
どうやらそういう方向で行くらしい。
いつまで猫被りがばれないのかは定かではないが、そのうち素で喋り始めるだろう。
クロはこちらをチラチラ見て様子を伺っている。
生魚も米も食べたことないよな。
もっとイージーなものにしてやればよかったか。
「いただきます」
じいちゃんがそういって蓋を開けて食べ始めるので、俺も蓋を開けて醤油をかけて食べる。
米を食べるのは久しぶりすぎる。
クロも同じように蓋を開けて、スプーンですくって口に入れた。
直後は目をシパシパさせていたが口にあったらしく、どんどん食べている。
「とても美味しいです」
「いつもアキラが買ってきてくれるんだ。こいつの舌と目利きは確かだよ」
普段そんなことを言われないから少し恥ずかしい。
ペットボトルのお茶を飲む。
クロも真似して開けて飲んで、少し眉を顰めたように見えた。
濃いお茶だからな、苦かったのだろう。
「ごちそうさまでした」
食べ終わって、食器をシンクに置く。
あとで洗えばいいだろう。
「部屋に2人でいるから」
「はいよ」
飲みかけのお茶を持って、クロを連れて部屋へ戻る。
と、その前に洗濯物を干さなければ。
「クロ、ちょっと待ってくれ」
洗濯機へ向かい、籠に洗濯物を入れる。
2人で2階の部屋へ戻り、俺はベランダに洗濯物を干しに出る。
クロも真似して一緒に干してくれる。
ちょうどサンダルも2人分あった。
「にゃあ、あれはにゃんだったんにゃ?」
「どれだ? 全部か?」
「まあ、そうにゃ」
当然だ、すべてが初めてなのだから。
「まずは昼飯、あれは米っていう主食だ。上にのってた具は生のエビ、イカ、あ~魚みたいなもん、とか、キュウリとか」
異世界生活でエビは見たことなかったな、イカも。
たぶん海が近くになかったからだろう。
「魚を生で食べたのははじめてにゃけど、最高においしいにゃ」
「あれは鮮度がよくないと食べられないから、あっちじゃあ出てこないだろうな」
ハンガーに服を引っかけて物干しざおへ干す。
飛ばされないように洗濯バサミで補強する。
「あとはお茶か?」
「苦かったにゃあ」
「あれもこの国では普通の飲み物だから慣れてくれ。水は水道のを飲める」
タオルも間隔を開けるようにして干す。
並んで洗濯物を干していると熟練した夫婦のようだな。
実際には会って数か月しか経っていないが、ずっと一緒だった気がしてくる。
そう感じるくらいには相性がいいのだろう。




