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「ラベンさん、仕事ですよ。勇者候補様が来られたんです。冒険者カードはどこですか?」
「ん? おおフマルか、おっと勇者候補様初めまして、ラベンといいます。食事中ですみませんね。あれね、金庫に入ってるんだわ。ちょっと待っててください、すぐ持ってきますんで」
男は酒が入っているのか、上機嫌らしく早口でそう言ったのちに外に出ていく。
「昼間からお酒なんて困っちゃいますよね。雪で誰も来ないからって、まだ仕事中なのに」
「まあ、そうですね」
と適当に相槌を打ったが、俺は気になっていたことがあったのだ。
ドアがあれだったのに、暖炉などの暖房機器が見当たらないが、明らかに外より暖かいのだ。
おそらく室温は20度くらいだろうか、それに何やら天井に光の出る宝石のようなものがありとても明るい。
「何もないのにずいぶん暖かいんですね。それにとても明るい。さっきの門番は火のついたランタンを持っていましたが、他のものが普及しているんですか?」
「ああ、魔法による暖房が効いているんですよ。確か地下にあるんじゃなかったかな?明かりも一緒で、そこの黒い筋に魔力を流し込むと天井の魔石が反応して明るくなるようになってるんです」
よく見ると壁伝いに細い黒い筋が通って宝石へと繋がっていた。
中世くらいの世界観だと思っていたのに魔法というのはずいぶん便利なものがあるらしい。
とそんな会話をしているとラベンが戻ってきたようだ。
「戻りました。これが勇者候補様用の冒険者カードです。なんでも最近司祭様がゴース様から賜った、新しいものらしいです」
「せっかくですからここでやってみてくださいよ。あなたの能力を私たちにも披露してください!」
とラベンに言われる。おそらく能力は無いのだが。
カードの大きさは名刺より大きいくらい。金属製なのか少し重たくすべすべしていて何も書いていない。
どうすればいいのかわからない。
「どうすればいいんですか?」
「血を一滴たらせば浮かび上がります。厨房から針か何か借りてきますね」
そうフマルから言われ、フマルは厨房に木串か何かをもらいに行ったようだ。
と、ラベンの食べているものを見ていたら俺も腹がすいていることに気づく。
じっとみていたのをラベンに気づかれたらしく、
「アキラ様、お腹が空いていらっしゃるようですね。おーいこちらの方に肉ランチを1つ!」
と気を利かせラベンがウェイターに注文していた。




