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「ここの家賃の相場ってどのくらいなんだ? 俺はタダで寮に住まわしてもらってるんだが」
正直、家賃を払う状態だったら生活が破綻していてもおかしくない。
本来なら水道だってタダではないはずだった。
「にゃあは天引きされてるからわからんにゃ」
「給与の明細とかないのか?」
「そんにゃん交渉の余地にゃし、言い値にゃ。今の給料は1日、中銅貨1枚と小銅貨6枚にゃ」
1食が小銅貨3枚くらいとして、クロは酒飲みみたいだし足りる訳がない。
それじゃあ貯金する余裕もあるわけないな。
一般人は冷蔵できない分、食事の保存が効かないのが痛すぎる。
毎日外食しか選択肢が取れないから。
「まあ服は貰えるし、生きるのはできるにゃ。生きるのが面白くにゃいだけで」
「・・・・・・」
やっぱり出会ってしまった以上、俺にはクロを見放すことはできそうになかった。
これから暇なときはできるだけ会いに行ってやろう。
子供ができているなら尚更、酒を飲んでいないか監視してやろう。
「食べ終わったし、もう少し散歩して帰るか?」
「そうにゃね」
俺たちはゆっくり歩き、少し遠回りしながら街への帰路へついた。
特段面白い出来事もなかったが、街の外へ出ることができた。
街へ着いてギルドへ戻る。
もちろんクロはフードを被っている。
「おかえりなさい。外はどうでした?」
「特に何もなかったですよ。帰る手段がないので遠出もできませんし」
「いいじゃないですか。私なんて、だいたい毎日カウンターの前で座ってるだけなんですから」
「今度、フマルさんも行きますか?」
「もちろん行きます。ラベン様が休みをくれればですけどね」
初めての門の外はこんな感じで終わった。
異世界へ来てからずいぶん経った。
毎日、昼間はダンの串焼き屋の売り上げ向上のため宣伝方法を考えたり、新メニューを考えたり。
夕方以降はクロの家へ行って、一緒に過ごして帰って寝たり。
クロへの感情は初めは同情からのものだったのかもしれない。
だが今はずっと一緒に居たい、そう思えるくらいには好きになっていた。
そんな生活をしばらく続けていた。
少し暑い日が増えてきたころ、急にその日はやってきた。
朝の鐘が鳴った直後、外から大きな声と共にパラパラ、パサパサという音が聞こえる。
靴を履いて何事かと通りに行ってみる。




