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「やっぱり食べ物が美味いんだよな、この世界」
今まで食べたものが全体的においしかった。
香辛料はほとんど利いていない料理ばかりなのだが、不思議と美味しく感じた。
俺の舌がおかしくなっていなければだが。
「そうかにゃあ? けど昔はひどかったにゃ。勇者が増えてからマシになったにゃ」
元から飯が美味かったわけではないらしい。
「にゃあもそこは勇者に感謝にゃね」
「もう10年くらいになるんだろ?」
「にゃあが成人してしばらく後だからそのくらいにゃ」
ん?
顔立ちから、だいぶ年下だと思っていたが違うのか?
「クロって何歳なんだ?」
「レディに聞くのは野暮ってことも、もうにゃいかにゃ。30にゃ」
ブーと俺は飲んでいた水を噴き出してしまった。
言動や見た目から、てっきり10代後半くらいに見えた、だから不味いと思っていたのだ。
同い年とは思わなかった、厳密には違うと思われるが。
まさかのフマルやマレインより年上なのか。
「なんにゃ?」
「俺と同い年なんだなと思っただけだ」
「若く見えて客が取れればよかったけどにゃ。肌のせいでそうもいかにゃかったにゃ」
相変わらず重い過去を持っているらしい。
話相手もいなかったらしいし聞いてやろう。
「思い出したくなければいいんだけど、君の、クロの過去をもっと聞かせてくれないか?」
「いいにゃ。代わりにアキラのことも教えるにゃ」
そうしてクロの過去の話を聞いた。
幼い頃は貴族で不自由なく暮らしていたこと。
15歳で成人してからは役人になる予定で勉強していたこと。
そのあと急に魔王という存在が現れ戦闘が始まったこと。
いわゆるダークエルフが魔王側に加担し始めて、褐色肌は悪者扱いされ始めたこと。
「家も潰されるし、全員がまとまって暮らせにゃくにゃって離散したにゃ」
とんでもないレッテルもあったものだ。
「この街で最近やっと落ち着いて暮らせてきたにゃ。少なくとも食べるに困ることはにゃいにゃ」
「それでも犯罪はしていなかったんだな。入れ墨も焼き印もないだろ?」
「・・・・・・バレにゃきゃいいんにゃ」
それに関して俺は肯定も否定もできなかった。
彼女自身は何も悪くないのだから。
雰囲気が暗くなってしまったから俺の過去を話すか。
「俺はこの世界でも何もできないし、元の世界でも何もやってなかったんだ」
「どうやって生きてきたにゃ?」
「・・・・・・親のすねを齧り続けてた」
事実、最近は全く何もしていない。
毎日ゲームやネットばかり、引きこもっていたわけではないが。
「楽な世界にゃね。こことは大違いにゃ」
「そうだな。毎日がギリギリの生活とは無縁だったかな」
こちらに来てから、一人で暮らす大変さが身に染みた。
ギルドという場所で世話になってなかったら野垂れ死にもありえたし。
急に気になったことがあった。




