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「犯罪者には入れ墨もしくは焼き印があります。私たちであれば、なければ問題ない判断をしますが、役所の判断ですね」
それは聞いていないし、見たところなかったはず。
背中とかはちゃんと見ていないから怪しいが。
「体のどのあたりの入れるのが普通ですかね?」
「手の甲や首が一般的です。もっとも盗みをしていた場合は両手を落とされるのですぐにわかりますけど」
サラっととんでもないことを言われたな。
「ああ、両手はよほどでないと落とされませんよ。普通は片手です」
顔にでていたらしいが、気になったのはそこじゃない。
ファッションかと思っていたが、街を歩いている獣人は手の甲に入れ墨をしているものが少なからずいた。
とりあえずクロにはその部分にはなにもなかった。
「それなら大丈夫だと思います」
「じゃあ発行してもらえば北門から出られますよ。1年間で中銅貨2枚かかります」
食べていくのがギリギリの生活だと厳しい感じだな。
そもそも人手はこの街より外のが必要みたいなのだ。
ここは大きな街ではないようだし、ここから別の場所へ稼ぎに出るのが通常のようだった。
「発行は即日なので行く当日で平気ですから」
「わかりました、じゃあ明日は外へ行ってきます」
ドアを開けるとフードを被ったクロがいる。
「おはようにゃ」
「まだ鐘も鳴ってなくないか」
「楽しみで全然眠れにゃかったにゃ」
遠足前に眠れないタイプらしい。
そう思ったが、10年くらいまともに休息していないのだから仕方ないか。
「まだ外へ出る木簡を発行する役所も開いてない、ちょっと寝ていけ」
「だから眠くにゃいにゃ」
なら強く言わなくてもいいか。
「もう朝飯でも行くか? 食酒所は冒険者向けだからずっと開いてるみたいだから」
「行ってみたいにゃ」
そういえば外見のせいで一人で外食もできなかったのか。
想像するだけで俺が疲れてくるようだった。
「じゃあ行こうか、着替えるから待ってくれ」
パッと着替えを済ませてカバンも持つ。
今更クロに着替えを見られても何でもない。
早朝の食酒所は当然ほとんど人がいない。
「ほい、メニュー」
「ありがとにゃ。・・・・・・ここずいぶん安いのにゃ?」
来てからずっとここで食事をしてきた俺には普通の金額だと思っていたが、やはり安いらしい。
もしかして本当は一般人は入れなかったりするのか?
そんなことを考えているとふいに店内が暗くなる。
何か異常かと思ったが、すぐに明るくなった。
見れば黒い筋に手を当てている人がいる。
魔力切れっていうやつだろう。
定期的に魔石には魔力を入れなければ動かないらしいし。




