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「男のほう、うまくやったな」
「いやー、助かったっす」
木札を渡して金を受け取る。
こうして俺たちは賭けに勝ち、小銭を増やした。
「兄貴、せっかくだから最後もやってきましょう」
3試合目、赤側は1.1倍の全身入れ墨の獣人と、青側は左腕のない隻腕の1.8倍の選手だった。
とても見た目はわかりやすいマッチだ。
だが、ボッチャは力があれば勝てるわけではなかったはず。
片方の腕がなくとも試合に出るだけの自信はある、ということだ。
何かを感じて俺は、
「青側に5点差で、大銅貨2枚」
「・・・・・・正気っすか兄貴?」
さっき勝った分も入れて大きな賭けに出た。
手持ちのほとんどを入れる。
勝てば3.6倍、大銅貨7枚以上になる。
俺は青、5点差、大銅貨2枚と書かれた魔石入り木札を受け取る。
「ないっすよ。少なくともそっちが5点差にはならないっす」
ダンは自分の賭けた赤の5点差、中銅貨5枚の札をヒラヒラ振りながら言う。
ダンのその言葉と裏腹に隻腕の選手は正確に相手のボールを打ち、自分のボールを白いボールに近づける。
相手のボールを遠ざけ、白いボールも動かし、自分のボールをさらに近づけるトリックショット、まず3点取って見せた。
会場からはどよめきやら悲鳴やらがあがっている。
まさか投げるバランスの取れなさそうな片腕の選手が強いとは、誰も予想していなかったらしい
次のセット、獣人の選手は何とか点を取ろうと、ただ力任せにボールを投げつけているだけだ。
明らかに精彩を欠いているプレー、勝てるわけがない。
それを見ていた観客からヤジが飛ぶ。
また青が2点、もう5点取っている。
最大6点なので、少なくとも赤が勝つ望みはほぼなくなった。
「・・・・・・こんなことあるんすね」
最後の1セットも青が2点取って完封だ。
俺は労せずして2枚の大銅貨、約2万円を大7枚と中2枚の約7万2千円相当に増やすという体験をしてしまった。
こんな簡単な賭けはもう2度は無いだろう。
これ以降、賭けはしないようにしよう。
人生が狂ってしまう感覚を味わうのはやめだ。
「ダン、食酒所でなら好きなもの食べていいぞ」
「まあ兄貴が勝てたならいいか・・・・・・」
こうして俺はこの世界の娯楽である賭けボッチャを体験した。




