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「はい到着」
ドアを開けるとベルが鳴る。
棚にはガラスや陶器や木のカップ、鞘に入った小さなナイフや、歯ブラシと思われるもの、櫛や髪飾りなどがあった。
「いらっしゃいませー」
金髪で茶色い目の若い女性店員だ。
「割れにくいコップと歯ブラシ、あとは髭剃りが欲しいんですけど」
まさか歯磨き粉や髭剃り用のクリームなんて無いだろう。
洗濯用洗剤もシャンプーもないみたいだし。
「それならコップは木製ですかね? 歯ブラシはこちらで、えっと、あと髭剃りですよね?」
「あ、お客様、勇者様ですよね? 床屋を目指すとか?」
「あ~、いいからいいから、髭剃りはあるの? ないの?」
アイフェが割って入ってくれた。
「いや、ウチにあるにはありますけど、別途塗るものがないとうまく剃れないですよ」
「じゃあ出して、たぶん塗るやつはコッチにあるから」
「ああ、あなたは魔法使いの方ですか。いまお持ちします」
魔法協会に塗るクリームやジェルがあるのか?
「なあ、洗剤とかあるのか?」
「一応貴族様とかお金持ち用のがあるよ。髭剃りのとき塗るやつは大体30回分で大銅貨1枚だけど」
思っていたよりだいぶん高い。
でも髭を伸ばしっぱなしよりはいいか・・・・・・。
「はい、髭剃りです」
出てきたのは♂のような形をした1枚刃の髭剃りだった。
持ち手が丸で先のヘの部分両方が刃だ。
「どーも。あとはいい? 地図もあるし、また来ればいいよね?」
「はい、じゃあその3つをください」
「わかりました。髭剃りは危ないので刃のところに布を巻いておきますね」
「お会計は・・・・・・大銅貨2枚と中銅貨1枚ですね」
ギリギリ足りそうだ。が、髭剃り高くないか?
アイフェに目配せすると頷かれる。
適正価格らしい。
「ありがとうございました~」
店員に見送られ店を後にする。
「アキラ様、髭剃りはプロしか使わないから高いんだよ。それとハサミで食っていくんだからさ」
「そうだったのか・・・・・・」
現代じゃあ3枚刃の髭剃りですら200円代で売っている。
だが、言われてみれば床屋の1枚刃カミソリは10万円くらいするのを思い出した。
なら後悔する必要もないな。
「ところで、塗るやつは?」
「ああ、スライムから採れるジェルがあるから」
魔物から採れるやつらしい。
「安全なんだろうな?」
「もちろん、あとはバター塗るくらいしかないよ?」
仕方がない、俺には異世界の知識がないのだ。
「まあまあ、アタシはアキラ様の味方だから悪いものはすすめないよ。心配しなさんな」
「頼むよアイフェ」
「じゃあ明日にでも持っていくから。ギルドに渡せばいい?」
「いや、食酒所でいいよ。取りに行くから」
「わかった、お昼食べながら待ってるよ。大銅貨1枚だからね」
高い買い物だが仕方ない。
潤滑材なしの1枚刃は無理だ。




