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「ちなみにあなたの信仰している神が消えてしまったというのはそんなにショックを受けるようなことではないのか? 人によってはとても大事な気がするんだが」
「まあ驚きはしましたけど、もう魔物との戦いも佳境と聞いているので何があっても受け入れるだけといいますか、僕の信仰している神以外にも天界にはほかにもいらっしゃるはずなので、その方たちが何とかしてくれるのに期待、ですかね」
「そうなのか? もう決着が着くのに俺は呼ばれたのか? よくわからないな」
「仕事柄いろいろな情報が入ってきますけど、そろそろ勇者様たちは魔王と戦う準備が整ったという話を聞いてますね」
「ますますわからないな、失敗したときの後詰とかで呼ばれたのか?」
とそんな話をしていると部屋の外から話声が聞こえてくる。どうやら年上の門番が戻ってきたようだ。
「司祭様どうぞ」
と門番が扉を開け、部屋にワインレッドのローブを着た司祭と呼ばれる人物が入ってきた。
かなり凝った装飾の入った上に、長い黒い帽子を被っている。
顔を見ると女性だった。金髪で碧眼、均整の取れた顔立ちでかなり若そうに見える。
前に座っていた門番が退いて、そこに司祭が座る。
「初めまして勇者候補様、急ぎですので堅苦しい挨拶は省略させていただきます、が、どうかご容赦ください。私はこの街でゴース教徒を収めておりますマイヤでございます。勇者候補様のお名前はアキラ様と聞いておりますが?」
「はい。あっています」
「ではまずはアキラ様の足の治療をしたいと思うので痛む場所をこちらに見せていただけますか? 座ったままで構いません。私がそちらに行きますので」
司祭がこちらに来る。言われた通りに左側を向き患部を指さすと司祭がそこに手を当てて呪文のようなものを唱える。
「慈悲深き光の神ゼレよ、この者の苦痛を取りさりたまえ」
司祭の手からほのかに光が出て、患部を包み込むと、途端に痛みが消え去る。
「皆さん、今ここで行ったことは他言無用でお願いいたします。勇者候補様のためとはいえ、信仰外の神の力を行使したことを司祭が使ったのは問題なので」
と注意される。司祭は席に戻り、
「アキラ様のおっしゃるとおり、どうやらゴース様は討たれてしまったようで、力をお借りすることができなくなってしまっているのです。お手間を取らせますがもう一度門番の方々にされたお話を聞かせてもらっても?」
そう言われ、俺は先ほどの教皇が首を切られ光となって消えた話をした。
一通り話が終わると司祭は、
「やはり、昨日から神託を受けたりできなくなっているのはそういうことでしたか。私たちにはどうすることもできなさそうですね・・・・・・アキラ様、お話ありがとうございました」
「ところで俺はこれからどうすればいいんだ? 特になにも聞いてないし、何も役にたたないと思われるんだが」
せっかくの異世界なのにむなしくなってきたが現実はこんなものだ。
俺は、言葉の通じる海外旅行だと思って割り切ることにした。
司祭が答える。




