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「それならお金がかからなくていいですよ。この世界は娯楽の代わりにお酒を飲みますから、大体お金は酒代に消えるといっても過言じゃないです」
「付き合えなくてすいません」
「いえいえ、別に平気ですよ。お金かからなくていいな~と」
娯楽の代わりということは遊ぶ場所もないのだろうか。
「何か時間の潰せる趣味とかはないんですか? これから雪の日が続くなら、部屋にいても暇でしょうがないんですけど」
「う~ん、そうですね~」
「例えばマレインはぬいぐるみづくりとかしていますよ。売ればお小遣いになって、時間も潰せますし」
ぬいぐるみか、手先には全く自信がない。
せいぜい雑にボタン付けできるくらいだ。
「なにか他には? できれば手先が器用じゃなくてもいいやつで」
「それがあったら私がやってますよ」
確かにそうだな。
そう言えば、トイレに新聞らしきものがあったけど読書とかできないんだろうか?
「トイレに新聞ありますよね? 本ってないんですか? 異世界の本を読んでみたいです」
「ああ、あれは魔法協会が出しているやつで一般人向けじゃあないんですよ。紙がもったいないからギルドで引き取ってちり紙にしてるんです。本もこの街では識字率が高くないので出回ってませんね」
時間潰しができるかもと思ったが、とても残念だ。
「何もなくて暇なのはギルド的にはいいのかもですけど、ただ座って受付で待ってるのは仕事的にはいらないんですよねぇ」
朝から夕方まで暇なのはきついな。
現代と違ってパソコンもスマホも雑誌もないのだから。
現代の受付なら、カウンターの下でスマホをいじっているのが想像に難くない仕事だ。
「普段、ギルドの仕事ってどんなものがあるんですか? 冒険者のすることでもいいですけど」
「そうですねぇ、何か人手が足りないところに冒険者の方々を派遣したりとか。魔物を倒す、なんていう依頼は最近ほとんどないですね」
フマルは頬杖を突きながら返答してくる。
「冒険者の方には下水に大ネズミが見えるから倒してくれ~とか、作業所の近くに血を吸う大コウモリが出たから退治してくれ~とか、まあ田舎の街じゃあこんな依頼がせいぜいですかね」
ゴブリンやレッドキャップなんかのゲームで定番の敵すら出ないらしい。
そんなので冒険者というのは食べていけるのだろうか?
「冬場はともかく、春や秋は薬草を取ってくる仕事なんかは実入りがいいみたいですよ。万が一、魔物が出ても自衛できるから重宝されます」
「荷物運びの護衛も大き目の仕事ですかね。往復で何日かかかる場合は魔物よりも盗賊に狙われる危険もありますし」
魔物より人のが危険になるのか。
食えなくなったら盗みをする、どこの世界でもあるんだな。
暖炉の火が弱くなってきたので、横に置いてあった薪を足す。




