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「起きた時のことを聞かせてくれないか?」
「昨日かな? 寝て起きたら頭に輪っかがある教皇みたいな恰好をした男? に魔物を倒してくれと、それで倒したら願いを3つ叶えて元の世界へと戻してやろうと、あとは5つ能力を高めるとかなんとか。それで説明中に教皇が誰かに首を切られて光になって消えて、そしたら俺は気を失って気づいたらこの近くに足をくじいた状態で寝てた」
初めは俺の話を鼻の頭をいじりながら聞いていた年上門番だったが、教皇が首を切られたというのを聞いた瞬間に顔が青ざめたのが分かり、「なんてことだ」という小声とともに手で顔を覆っていた。
「あなたは勇者候補様なのですね?」
と急に敬語で言われ、
「そんなことを言われた気がする」
と返すと年上門番の横で立って話を聞いていた若いほうの門番が「勇者候補なのに結構年いってませんか?」と年上門番に耳打ちしたのが聴こえた。
「真偽は分からんが、今日は天からの声がしないと司祭様がおっしゃっていたのだ。関係あるかもしれん」
「勇者候補様、お名前をよろしいですか? これから司祭様に会ってお話をしていただきたい」
と年上門番が問うてくるので
「木津川アキラ(きづがわ あきら)だ」
と返すと? という顔をされたので苗字と名前を分けて、
「木津川 アキラ、アキラが名前」
というと今度は伝わったらしく、
「ああ、わかりました。確か勇者候補の方は苗字という別のものがあるんですよね、ではアキラ様、司祭様を呼んできますので少々お待ちいただけませんか? 暖かい飲み物でも飲んで待っていてください。足のほうも司祭様ならば治せるでしょう」
と言い若い門番に「ここはお前に任せる、どうせ門には誰も来ないだろうが一応たまに見ておけ」
と言って年上門番は足早にどこかへ出て行った。
「どうぞ。アキラさん」
そういって、若い門番は暖炉の上で温めていたやかんからマグカップにあついお湯を入れてくれる。
それで一息ついたところで、
「アキラさんはどうしてこんな辺境の街へ? それに勇者候補だから何か能力があるんでしょう?」
「その辺は全くわからん。来たくて来たわけではなくていつの間にかいた、あと能力はおそらくなにも貰えていないと思う。話の途中で教皇みたいな人? が首を切られて光になって消えたのは覚えてるけども」
「アキラさんのいう、その教皇みたいな人っていうのがおそらく僕ら信仰している神さまだと思います。ほら、こんな格好じゃなかったですか?」
そういうと胸元からチェーンのついた500円玉より大きなコインを取り出す。
確かに、そのコインに書かれている顔は俺があった教皇服にそっくりだった。
「たぶんその人だと思う。残念だけど首を切られたのもその人」
「やっぱり、推測でしかないですけど、魔物が天界へ侵攻してしまったのかもしれませんね」
「俺のいた世界では天界というのは存在していなかった、というかあったかはよくわからないからなんともいえないけど人間より上位の存在である神というのがいる場所ってことでいいのか?」
「その認識であっています。空のさらに先にあるのが天界でそこに住んでいるのが神さま、神は地上に住む人々に様々なものを与えてくださいます。」
「空の先に宇宙はないのか?」
「うちゅう? 空の先は空の先ですけど?」
どうやらまだ宇宙に到達した人がいないのか、そもそも宇宙がないようだ。まあ普通の人に聞いてもわからないのかもしれないが。




