20
「こんにちはグレさん」
「マレイン、こんにちは。後ろの人は? もしかして彼氏かい?」
グレは俺の母親と変わらなそうな年に見える、金髪碧眼だ。
ただ、服屋だけあってさっきの店の人たちより小綺麗だと感じる。
「いえ。勇者候補様のアキラ様です、昨日この街に来られました」
「ああ、そうなのかい。私はグレ、よろしくねアキラ様」
「よろしくおねがいします」
「それで、何が欲しいんだい?」
俺がジャケットと小銭を入れる袋が欲しいことを伝える。
「それならちゃんと測ってからのほうがいいね」
グレはポケットから巻き尺を出して俺に当てる。
流石に手馴れていて、すぐ終わった。
「この身丈だとこれがいいかね」
茶色の長袖ジャケットを渡され、鏡の前に立つよう促される。
ピッタリな気がする。
「うん、いいんじゃないか。ついでに半袖も買っていかないかね? 季節外れだし安くするよ」
どのくらいこの世界にいるのかわからないが、安くしてくれるなら買っておこうか。
そういえば支払いは建て替えてもらうのだった。
マレインを見る。
「少し高くても大丈夫ですよ」
「じゃあ半袖も買います」
「あとは袋だね」
布袋のコーナーから巾着がいくつか出てくる。
様々な大きさと色だ。
「腰に下げるならこれでもいいけど、アキラ様はベルトをしてないようだね。普通はベルトに括っておくから紐が短いんだ」
「ベルトも買っていくかい?」
そういわれて少し考える。
やっぱり首から下げていたほうがいいかもしれない。
「首から下げておくのはないですかね?」
「それならどの袋でも選んだやつにすぐ長めの紐を付けてあげるよ。タダでね」
裾上げサービスのような感じでやってくれるらしい。
「じゃあこれで」
俺は黄土色の袋を選ぶ。
「はいよ、ちょっと待ってな」
グレはカウンターの奥に引っ込んでいった。
「俺のこと何にも聞かないんですね、グレさんは」
「たぶん聞きたくてしょうがないとは思うのですが・・・・・・アキラ様も説明するのは面倒でしょう?」
「まあ多少は」
「ではアキラ様の話は他の方に聞いてもらうことにしましょう」
しばらくしてグレが袋に紐を付けて持ってくる。
「お待たせ、これでいいかい」
「はい、ありがとうございます」
「ところでアキラ様はこれからどうするんだい? 勇者様たちと合流かい?」
「グレさん、申し訳ないですがその話は他の方から聞いてください。ガリバさんやフマルに聞けば教えてくれます」
マレインがはっきり拒否した。
会った当初は銀髪のせいもあってか冷血なイメージがあったが全く違う。
むしろとても優しい、気遣いのできる女性だった。
「わかったよ。お会計だね」
グレはそろばんのようなものを出して計算を見せてくれる。
俺にはさっぱりだったが。
「全部で中銅貨7枚だね」
「では大銅貨1枚でお願いします」
マレインが支払いをしてくれる。
「毎度あり、勇者候補様にサービスね」
そういってグレは斜め掛けのカバンに服と袋を入れて渡してくれた。
「いいんですか? ありがとうございます」
「いいんだよ、アキラ様にはなんかあるんだろう? 余計な事聞きそうになったぶんさね」
異世界でも生きたやり取りがある。ゲームとは違うのだ。
買い物を終えマレインとギルドに戻る。
戻る途中に昼を告げる鐘が2回鳴る。




