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「なんで何もできないような俺にそんなことを言ってくれるんですか? もっと酷いことを言われても不思議じゃないと思うんですが」
「おいおいアキラ様は真面目がすぎるぜ。だいたい普通に暮らしていたところを、急に拉致同然に呼び出されて、世界をなんとかしろって言われて、報酬があったとしても命を懸けて戦うなんてそうできることじゃないだろ? あんた様たちの若い勇者様たちの感覚がおかしいんだよ。少なくとも俺は何もできない勇者候補様でも気にしないぜ」
マレインを見ると頷いてくれた。
たしかに見ず知らずの世界を急に救えなど、ゲームではありがちだがガリバのいうことはもっともだ。
俺はここをゲームの世界で、みんなには活躍しなくてはいけないと思われている、と考えていたが勘違いしていたのかもしれない。
ガリバの言葉を聞いてさらに気が楽になった。
「もし武器が必要になったらいつでも来な」
その言葉とともにガリバに見送られマレインと外に出る。
「ではアキラ様、家具屋へ行って箪笥を注文しに行きましょう。終わったらアキラ様の買い物を」
「わかりました」
マレインの横について一緒に歩く。
「アキラ様、ガリバさんの言っていたことは多くの人間が思っていることなのです。特に平和な街で暮らしている私たちは勇者候補様に望むことはありません。報酬があり、能力を渡すから戦ってください。それはこっちの勝手な都合に巻き込んでいるとしか言えません」
「それでも、あなたたち異世界から来たすべての勇者様は自ら戦いを選んでいます。私たちには信じられませんが、元の世界はそんなに退屈なのですか?」
俺は答えられなかった。
能力さえあれば、きっと俺も戦いを選んでいたのだ。
「答えられない、ということはきっとそういうことなのでしょう」
「着きました、注文してきますのでちょっと待っていていただけますか?」
「はい」
着いたのはさっきの武器屋と比べるととても大きな工房だ。
中に入るとスーパーの駐車場くらい広そうな場所に家具が並んでいる。
少し離れた場所でマレインは職人と思われるスキンヘッドの男とやり取りをしている。
5分ほどのやり取りのあと支払いを終えたマレインが戻ってくる。
「では行きましょう。明後日には箪笥が届くそうです」
マレインについて行く。
すぐ近くに服屋はあった。
広さは武器屋と大差ないようだ。
2人でドアを開けて中に入る。
入ってすぐカウンターに女性がいた。




