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「それは片手剣なんだけどな? 槍なら両手持ちだからいけそうか?」
俺は剣を返し、槍を受け取る。長さは1mくらい。
バランスが偏っており、木の持ち手と比べて金属の穂先の部分がめちゃくちゃ重たい。
これも穂先が地面すれすれに保持される感じだ。
「ちょっと素振りしてみな」
両手で持って突いてみる。
穂先の重さにつられて、体が思いっきり持っていかれ、転ぶ寸前だった。
「無理だ。少なくともこの勇者候補様は前線向きじゃねえな」
そうだろうな。
普通の現代人にはだいたい無理だろう。
「魔力はどのくらいなんだ?」
「たしか4です」
「まあ魔法使いになれなくはないってところだな」
「それが、アイフェさんに見てもらったそうなのですが魔力は分からなかったそうです」
「ってことは即戦力ではない感じなのか?」
やはり俺は武器を持つこともできないらしい。
「アキラ様、気にする必要はないですよ」
「そうだぞ、別にあんた様が戦えなくても他の勇者や冒険者がいるからな。心配いらない」
2人に励まされているようだ。
「ところで戦えない冒険者や勇者候補とかって何をしているんですか?」
「そんな勇者候補は聞いたことがないが、引退した冒険者でも簡単な依頼を受けて稼ぎにしている人はいるぞ。戦いの指南役やら魔法を教えたり」
「ギルドにくる依頼がすべて戦いに関係するわけではないのですよ。普通のおつかい程度の依頼も多いです」
それはよかった。完全にいらない扱いではないのかもしれない。
「とりあえず今日わかったところは、あんた様は前線に立って武器を振るうのには向いていないってことだ。ついでに魔法での援護もできないようだし、戦闘にはたぶん向いてないな」
「そうですね、確認する前に戦いにならなくてよかったです」
「まあ魔王との戦いももうすぐ終わるって話だ。それまでこの街でゆっくりしていればいいんじゃないか?」
「何もしなくても元の世界に戻れるんですかね?」
ふと疑問が沸いた、何も達成せず、世界を救っていなくても、誰とも合流せずとも、帰れるのだろうか?
「まだ元の世界に帰ったという勇者様の話は聞いたことがないよな? マレインは聞いたことがあるか?」
「ええ。ギルドにいて聞いたことがないということは、おそらくまだいないのでしょう」
勇者候補として呼ばれた誰も帰っていないらしい。
初めの勇者候補が呼ばれ始めてからどのくらいたっているのだろう。
「初めの勇者候補はいつ頃現れたとかって知っていますか?」
「ああ、13、4年前くらいかな。俺がまだここで店を持つ前に何人かあったことがある」
「そのくらいだったと聞いています。私はアキラ様以外には実際にあったことはないですが」
ということは13年前後は魔王と戦っているということか。
無数の勇者候補が呼ばれ散っていったのだろうか。
そう考えるとなにか申し訳ない気がしてくる。
だが僻地の街に1人では今更勇者たちに合流するのも難しいと思われる。
「もう1度言いますよ。アキラ様は気にする必要はないのです。きっと他の勇者様がすべてを終わらせてくれて、あなたは元の世界に返してもらえます」
顔に出ていたのだろうか、マレインに念を押される。
俺に無理や無茶はしなくていいと言ってくれた。
とてもありがたいことだ。が、普通はある程度勇者になるものに期待するものじゃないのか?




