13
目が覚める。
あくびとともにこれまでの出来事を思い出す。薪の火は消えているがあまり寒くはない。
疲れていたのか、10時間以上寝た気がする。鐘の音も聴いた覚えがない。
窓から外を見ると曇りだった。
昨日は大雪と言っていたのに、天気というのは分からないものだ。
布団から出てから気づいたのだが枕がなかった。
どうやらなくても寝られるたちらしい。
靴はベッドの横に脱ぎちらかしてあった。
靴を履いてトイレ兼洗面所のドアを開けて洗面所で顔を洗い、そのまま水を飲み、用を足す。
洗面所は、金属製の盆とポンプで水をくみ上げるタイプだった。
新聞紙と思わしきものが山積みになっていたのでそれで尻を拭いた。
誰に見せるものでもないし、尻がインクまみれでも気にならないだろう。
「♪♪~」
用を足して、ドアを閉めたあたりで外から薄っすらと声のようなものが聴こえてくる。
マレイン辺りの鼻歌のようだ。ご機嫌そうだ。
俺は鏡で自身の姿を確認する。中肉中背、黒い瞳にまばらな白髪の黒髪に無精ひげ。今までとどこにも変化はない。
やはり異世界に転移した、と考えるのが妥当だろう。
入口の鍵を開け、扉を開ける。
「♪~♪~」
音のするほうへ向かってみる。裏手のようだ。
じゃぶじゃぶとシャッという音ととも、にマレインが井戸で洗濯していた。
部屋の物と同じく井戸もポンプで水をくみ上げるタイプの物だった。
木のたらいの中にシャツなど服が入っておりそこに手を入れて手洗いしている。
「おはようございます、マレインさん」
「おはようございます、アキラ様。よく眠れましたか?」
「ええ、疲れていたようでぐっすり快眠でした。それは洗濯物ですか? 俺も手伝いたいです。寒いですし、早く終わらせましょう」
「ありがとうございます。ではそちらの服を持ってきてこちらで洗ってもらえますか?」
「わかりました」
現代では珍しい手洗いだが、俺は手洗いは初めてではない。
昔、中学生の時に職業体験でクリーニング店へ行ったときにやったことがあった。
別のたらいに入っていた服を持ってきて、マレインの向かいで洗い始める。
服をこすり合わせて汚れを落とす。
何枚かやった後に気が付いたのだが全部男性用の服のようだ。
「これってもしかして俺の服ですか?」
「はい。さっきラベンさんにアキラ様へ洗ってから渡すように言われました」
「そうだったんですか、ありがとうございます。あとでご飯でも奢りますよ」
「仕事ですから。お気持ちだけいただきます」
マレインに微笑まれる。
一通り洗い終わったので、服をつるつるとしたロープに吊るす。
洗濯用なのだろう、2mくらいの木製の棒が2本立っているので、その間にロープを近くにあった踏み台を使って吊るしていく。
「アキラ様はそちらから服を流してください。私は固定していきますので。」
服の袖をロープに通しマレインのほうへ流す。
マレインは木製の洗濯ばさみのようなもので服を固定していく。
全部で1時間くらいかかっただろうか。
湿度は低いし、曇っているので乾くのは時間がかかるかもしれない。
全部吊るし終えてからマレインが言う。
「お手伝いありがとうございました。お腹は空いていませんか? ちょっと遅いですが朝食を摂りに、隣へ行きましょうか」
「はい、お腹が空きました。行きましょう」
「では準備をしてから寮の入口に集合しましょう」




