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WEB版 転生特典なし、才能も平凡な私が最強の騎士を目指したら、なぜか先に二児の母になっていました。  作者: 品川太朗


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第41章:王都への道、決意の天秤

この章で、光の騎士リーンは、転生者モディから突きつけられた冷徹な現実を受け入れ、王都での修羅場に臨むための覚悟を決めます。


共犯者の契り:ジョウとの「一夜の過ち」は、「二度とない友人関係」として封印されました。しかし、「今はただの戦友」というジョウの言葉は、危険な依存と未来の可能性という名の新たな禁断の絆を静かに結びました。


騎士の決断:「嘘で親友を欺く」という罪悪感と、「真実をぶつける」という痛みを天秤にかけたリーンは、ついにカテナへの告白を決断します。それは、彼女の騎士としての矜持と、親友への信頼の証でした。


修羅場、最終準備:モディによるカテナ妃への面会要請。リーンの決意を承知した彼の言葉は、嵐の前の静けさを告げます。


王都の城門は目前。ジョウ、リーン、モディが抱える三つの秘密は、カテナ、そしてマリンを巻き込み、いよいよ愛憎渦巻く修羅場へと突入します!


「友情」という名の硝子細工を壊す覚悟を決めたリーンの、最後の戦いが始まります。どうぞお見逃しなく。

夜明け前のダイテ要塞の空気は、冬の訪れを告げる鋼のように冷たく、鋭かった。

練兵場に一人佇む私の吐く息は白く、夜の闇に溶けて消える。モディさんから突きつけられた冷徹な処方箋を、私は何度も、何度も頭の中で反芻していた。

『お前の夫も邪魔だと思われるかもしれんな』

『お前一人でこの重荷を背負うより、女二人で同盟でも組んだほうが、うまく乗り越えられそうな気がしてな』

最悪の可能性。そして、不器用な気遣い。

彼の言葉は、私の心に深く突き刺さっていた罪悪感という名の甘えを、容赦なく抉り出した。そうだ、これは感傷に浸っていい問題ではない。王太子と、王太子妃と、そして私自身の家族の未来さえ左右しかねない、対処すべき『危機』なのだ。

騎士として、私はこの危機に正面から向き合わなければならない。

夜明けの光が城壁を染め始めた頃、私の心は決まった。

私は汗を拭うと、決意を胸に、ジョウの部屋へと向かう。もう、逃げないと決めたから。


要塞の城壁の上は、吹き抜ける風が容赦なく体温を奪っていく。人影はなく、ここなら誰にも聞かれる心配はないだろう。

呼び出しに応じたジョウは、憔悴しきってはいたが、あの夜の狂乱が嘘のように穏やかな、しかし虚ろな瞳で私の前に立った。罪悪感が、彼の全身から滲み出ている。

「ジョウ」

私は、彼の目を見て、はっきりと告げた。

「あの夜のことは、過ちです。そして、二度とありません。私たちの関係は、これまでも、これからも、大切な友人です」

モディさんの言葉をなぞるだけの、無機質な宣告。だが、今の私たちにはそれが必要だった。

その言葉に、ジョウは何かから解放されたように、深く、長い息を吐いた。

「……ああ、そうだな。すまなかった、リーン。君を巻き込んだ」

彼の声には、もう絶望の色はなかった。ただ、全てを諦めたような静けさだけがそこにあった。

「だが」

彼は続けた。その瞳が、初めて私を真っ直ぐに捉える。

「君はもう、ただの友人ではない。私の過ちと弱さを知る、唯一の人間だ。……今は、ただの『戦友』でいさせてほしい。互いの背中を預け、この国を守るための」

「今は」という言葉。

その言葉に、私の胸の奥が微かに疼いた。それは、未来への可能性という名の、甘く危険な響きを持っていた。私たちは過ちによって、友情とは違う、より深く、そして戻れない場所で繋がってしまったのかもしれない。

「はい。戦友として、殿下をお支えします」

私は頷いた。その瞳に宿った光が、ただの忠誠心だけではない、より複雑で、熱を帯びたものであることに、私自身はまだ気づいていなかった。

私たちはもう何も言わず、ただ眼下に広がる冬枯れの景色を見つめていた。言葉にならない共犯者のような絆が、冷たい風の中で静かに結ばれた。


数日後、ナロ王国軍はダイテ要塞を後にし、王都への長い帰路についた。

勝利したはずの軍の雰囲気は、どこか重く沈んでいる。長かった戦いが終わり、兵士たちの間には安堵と、失われた多くの命への哀悼が入り混じっていた。

道中、私とジョウは時折、馬を並べて言葉を交わした。会話の内容は、今後の軍の再編や国境警備について。極めて事務的で、冷静なものだった。しかし、その視線が交差する瞬間、周囲の者には分からない、秘密を共有する者同士の濃密な空気が流れた。

「なんだか、殿下と妙にぎこちないわね。喧嘩でもした?」

隣を走るマリンさんが、訝しげな顔で私に囁く。

「……色々、ありまして」

私が曖昧に言葉を濁すと、彼女はそれ以上何も聞かず、ただ「ふーん」と意味ありげに呟いただけだった。

一方、モディさんとシムさんは、軍の本隊から少し離れた場所を、まるで物見遊山でもするようにのんびりと馬を進めていた。

「軍の補給部隊の動きは非効率の極みだな。荷車の車輪の配置を変えるだけで、輸送効率は15%は上がるだろうに」

「モディ、聞こえますよ」

物理学者の視点から繰り出される辛辣な批評を、シムさんが呆れたようにいなしている。彼らだけが、この軍の中で唯一、戦いの後とは思えぬ日常の空気を纏っていた。


王都を翌日に臨む、最後の野営地。

パチパチと音を立てて燃える焚火の炎を、私は一人、見つめていた。

ジョウとの関係は、危険な均衡の上で一旦の決着を見た。残された問題は一つ。カテナに、全てを話すべきか、否か。

黙っていれば、これ以上彼女を傷つけずに済むかもしれない。だが、嘘をつき続ける重荷と、何より親友を欺くという罪悪感から、私は一生逃れられないだろう。

モディさんの言葉が蘇る。『女二人で同盟でも組んだほうが…』

そうだ。私は、カテナの強さを信じなければならない。嘘で塗り固めた偽りの平穏よりも、真実をぶつけ合ってでも再構築する関係を選ぶべきだ。それは、彼女を対等な親友だと、心から認めているからこその決断だった。

「決まったようだな」

いつの間にか、背後にモディさんが立っていた。

彼は、私の返事を待たずに告げる。

「明日には王都に着く。カテナ妃への面会の要請は、既に出してある。お前も、マリンと共に同席するのだろう?」

それは、最後の問いかけだった。

私はゆっくりと顔を上げ、決意に満ちた目でモディさんに告げた。

「話します。私が、カテナに全てを話します」

その答えに、彼は驚きも賞賛も見せず、ただ静かに頷いた。

「そうか。なら、覚悟を決めておけ」

彼の瞳は、燃え盛る炎の向こうにある、避けられぬ嵐を見据えていた。

「お前がこれから壊すのは、友情という名の硝子細工だ。修復できるかどうかは、お前たち次第だ」

リーンの決意が固まり、王都での修羅場への準備が整いました。騎士として、そして親友として、彼女が下した「真実を話す」という決断は、彼女の人間的な強さを示しています!


ジョウとリーンの新たな関係:「戦友」という名で封印された禁断の絆。虚無的な落ち着きを得たジョウが、王都でモディやカテナと対峙したとき、その均衡は保たれるのでしょうか?この脆い関係は、今後の物語の時限爆弾となります。


モディの警告:「お前がこれから壊すのは、友情という名の硝子細工だ」。モディのこの言葉は、告白後のカテナの反応が、想像を絶するほど破壊的であることを示唆しています。


次章は修羅場!:王都が待っています!マリンの結婚報告、モディの冷徹な挨拶、そしてリーンによる裏切りの告白――王太子妃カテナの感情が爆発する瞬間が迫っています!


友情か、真実か。愛か、嫉妬か。四人の関係が、王都の宮廷で血を流すことになります。次章からの王宮修羅場編に、どうぞご期待ください!


(リーンの覚悟と、モディの静かな警告に「ドキドキする!」と感じていただけたら、ぜひブックマークと評価ポイントをお願いします!皆様の応援が、修羅場の激しさを加速させます!)

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