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酔った勢いでとこまでも

作者: シキ



 会社終わり、上司に悩み相談という飲みニケーションをした。

内容はオッサン上司の自分語り8割だが、入社2年目の俺からしたら会社の力関係やら仕事の仕方なんかの情報収集やら媚売る機会だ。

『自分はこういう奴なんです』って知ってもらって余計な誤解を回避したり『あいつはああいう奴だ』って聞いて気を付けたり…。

ほんと、『仕事は準備が8割』なんてどこの世界だよ。

『コミュニケーション9割』の間違いだろ。


 少しフラつく足取りで駅へと向かう。

オッサン上司は久しぶりの飲みニケーションとあって酔っ払っていたのでタクシーに突っ込んだ。

その後は知らん!あの人と俺の自宅は反対側なのだ。

あの酔っ払い、酔いすぎて財布出さなかったからな。

飲み代全部俺が出したんだ。タクシーに突っ込んで放置くらい許せ。金がない。


 前方に制服女子発見!

男性2人に絡まれている模様!

ってヤバくね?制服ってことは未成年だべ。

しかも女の子なんか見覚えあるな…?

ヤッベ、動画回しとこ。


「やあやあにーちゃん達、制服着た女の子に絡むのは中々感心しないなぁ。」


「なんだお前、関係ねぇだろどっかいっとけ。」


女の子の横に立ち少し大きめの声でにーちゃん達に話しかける。

こっちからの肉体的接触は絶対にノーだ。

いかにもヤンチャしてますな奴らはもう予想と全く同じ反応をしてくれた。


「いやいや、この子、俺の親戚。

俺のかーちゃんの妹さんの娘さん。

盆の年に1回しか会わんけどね、親戚なんよ。

わかる?ここで俺知らんぷりしたら俺の親戚中での立場ほーかい!」


「あ?知らねぇよウゼェ。」


「あのな、親戚付き合いちゃんとやってるか?

親戚の集まりにもふんわりカースト制度あるからな?

社会人になったら半人前扱いになるんだよ。

『大人なんだから』と『若いんだから』を駆使して雑用係にされるからな?

父方の方だともうちょい扱いが違うんだけどな…」


「マジで知らねぇよそんなこと。」


コイツら合いの手入れんの上手いな。

俺の喋りの邪魔にならん程度に言葉挟むからめちゃくちゃ話しやすいぞ。


「でな?ここで俺はこの子を助けました!ってなるとちょっと扱いが変わると思うんよ。

むしろここでスルー決め込むと多分10年はグチグチ言われるね。

だってあの人ら30年前のじっちゃんの浮気をまだ突いてるからね?

だったらまだ怖い思いしてもここは引けないな?

痛い思いしても治る!入院くらいまでは覚悟してる!

事情を話せば会社のお局様は多分味方になってくれる!

お局様が味方になれば俺の評価はヒドくならない!

引けない理由があっても引く理由はない!!」


足を振るわせながらも堂々と言い放つ。

ちょっと『自分カッケェ』とか思ってないですよ?いやホント。

確か名前は…美香ちゃんだったよな?大丈夫かな。ぁ…


「そして今!俺は無駄に声を大きく話してる!

こんな場面お前ら知り合いに見られて平気か?通報されてるかもよ?

ちゃちゃっと諦めるのもスマートなんじゃね?

時間はお前らを味方しないぞ?」


「ちっバーカ!」「死ね!」


捨て台詞を吐いて唾を吐き捨て去っていく若者達。

いや、多分俺とそこまで年変わらないと思うけど。


 そこへタイミング悪く警察官登場!

ヤバい、けどまだ助かる!

 通報者も居て目撃したのを証言してくれる人もいて俺は撮っていた動画を見せた。

現場は和やかな雰囲気が漂い始めて俺は少しヒーロー気分だ。


「じゃあ君とあのお兄さんは親戚なんだね?」


警察官が軽く確認みたいな感じで制服女子に質問した。

ぁ…


「いえ、知らない人です。」


「え?いや、ホント?」


「はい。助けていただいたのは事実ですが、知らない人です。」


うん。俺もあの子知らないもん。

後ろ姿めちゃくちゃ雰囲気似てたけど、顔全然違うし冷静になってみたら美香ちゃんもう大学生じゃなかったっけ?てなったし。

 一気に警察官2人の眼が疑いの眼差しに変わる。

俺は社会人になってやたらと重くなった頭を慣れた動作で下げた。


「酔った勢いです!他意はないです!!」


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