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白き獣は世界を見下ろす  作者: HANA
エルフ大陸編
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邂逅

ちょっと仕事が忙しい&メンタルやられ気味なので、更新がまた週一ぐらいになりそうです。。。

続きを見てくださっている方、いらっしゃいましたらすいません(T ^ T)

「こちらです。お入りください」


 リューシャに促され店に入ると、そこにはキラキラと輝く装飾品がキレイに並べられていた。 色使いも鮮やかで、赤、青、緑――まるで宝石のように散りばめられている。


 こんな店を知ってるなんて、リューシャにも実はこういう“女性らしい趣味”があるのかもしれない。そんなことを思いながら、店内を見渡していると奥の方で気配が動いた。


「おや?これまた怪しい二人組だね。昼間からそんな目深にフードなんて被って」


 声の方へ目を向けると、店の奥から二人の獣人が姿を現した。一人は、吊り上がった眼が印象的な店主らしき獣人。もう一人は、耳と尻尾を揺らしながら、こちらに静かな視線を向ける獣人の女性だった。店主は細く吊り上がった眼をさらに険しくして、 俺たちをじっと見つめてくる。


 そして、ふいに鼻をスンと鳴らした。


「……あんたたち、人間じゃないね。背の低い方はだいたい想像がつくが……もう一人の方。あんた何者だい?背格好は人間のようだが、においが違う」


 予想外の問いに、心臓が一瞬跳ねた。視覚では、無く嗅覚。そんな方法があるなんて——完全に盲点だった。


 不穏な空気が漂う中、俺がなんと答えるべきか悩んでいると、リューシャが店主に向かって静かに告げた。


「突然押しかけてすまない。 悪いが、今からこの店に誰も入れないようにして欲しい。 あとは、外に声も聞こえないようにしてくれ」


「ん?それはどういう意味......」


 店主の言葉にかぶせるように、リューシャがフードをゆっくりと外した。 その顔を見た瞬間、店主の隣にいた獣人の目が見開かれる。


「久しぶりだな、ライラ」


「その顔、その声……まさか、リューシャさん?」

「ああ、そうだ。大きくなったな」


 その答えに、ライラと呼ばれた獣人の顔がぱっと明るくなる。


 リューシャも、いつもの鋭さとは違って、どこか柔らかな表情を浮かべている。 それは、歳の離れた姉が見せるような、優しく包み込むものだった。二人の会話は、懐かしい思い出を辿るような温かな空気に包まれている。


 俺と店主は二人揃って呆気にとられていたが、会話の端々から察するに、ライラはリューシャが過去にこの島に来た際に世話になった獣人のようだ。二人はしばらく世間話を交わし、やがて視線が俺に向けられた。


「そちらのかたは……?」

「それについて相談がある。ほかには聞かれたくない。悪いが、頼めるか?」

「……ああ、なるほど。分かりました。おい、あんた!店の奥に下がっていてちょうだい!」


 その一言で、ライラと店主の関係と立場がなんとなく見えてしまった。店主は口答えもせず、尻尾を垂らして、とぼとぼと店の奥に消えていく。なんだか申し訳ないことをしたような気分になって、俺は心の中で謝罪した。


 店主が去った後に、ライラが指を鳴らすと、店内に並べられた装飾品の一部が淡く光り始めた。


 空気がわずかに震え、耳の奥に静かな圧がかかる。 まるで舞台の幕がすっと降りたような、不思議な感覚だった。目に見えない膜が店全体を覆い、外のざわめきがすっと消える。


「時々、魔道具の効果をお客さんにこうやって実演してるので、この状況でも周りから変に思われることはないはずですよ」

「恩に着る。しかし、すっかり大人になったな。板についている」


 感心するリューシャに、ライラは鼻を鳴らして照れ笑いを浮かべる。


「そりゃあ、リューシャさんに会ってから十年以上経ってますからね。今ではもういい歳ですよ」


 その言葉に、リューシャは口元をわずかに緩めてから、俺の方へ向き直り告げた。


「この店の魔道具は、エルフの魔法とドワーフの技術を組み合わせたもので、効果は間違いございません。人払いしましたので、ご安心ください」


 *


 その後、俺たちは、この島に来た経緯や目的、これからの動きについて話した。話を聞き終えたライラは信じられないというような顔をしている。


「......まるで、おとぎ話ですね。しかも、あの海魔を倒してこの島に来たとは......。ですが、確かに今リューシャさんがここにいるということは事実なのでしょう」


 ライラは、俺とリューシャを交互に見て小さく頷いた。


「先ほどの話の通り、我々はこれから大陸に向かう。次に交易船が出るのはいつだ?」

「そうですね……確か船を出したのが1ヶ月前なので、恐らくちょうど明日出るかと」

「了解した。それでは、また明日こちらに来よう。神獣様、宜しいでしょうか?」


 あまりにもトントン拍子で話が進むので逆に不安になるが、断る理由も代案も思い浮かばない。 気づけば、俺は首を縦に振っていた。


 若干の置いてけぼり感を味わいつつも―― 俺は、ついにエルフ大陸へ向かうことに、少しだけ胸が高鳴る気配を覚えた。

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