真相
……その後、俺はみんなに小一時間ほど、問い詰められた。
色々と話したいことがあるが、まずは順を追って話そう。
まずは、俺が手を出した理由。
新たに出現した、あのもう一体のレヴィウス?については―― 創造主が勝手に付け足した設定だったからだ。
やつが創った設定に関しては、元々存在しなかったもの。 つまり、俺が手を出しても問題ない。
そう判断して、手を下した。
ただ、この付け加えられた設定には、さらに気になるものがあった。
まず、新たに現れたのは“つがい”であったこと。 もう一つは、“一年の中で決まった時期にだけ”あの海域に現れること。
倒してしまったから、もはやどうしようもないのだが―― 俺たちが来るタイミングをずらせば、あの2体の魔物は正直、倒さなくても良かった。
つがいだったことも、決まった時期にだけ現れることも―― それを俺たちが壊したのだとしたら……少し、胸がざらつく。
そのことに気づき、俺がレヴィウスたちを倒すのをためらうのか試したかったんだろうか?
……いまいち、創造主の意図が読めない。
俺たちを試しているのか、それともただの気まぐれか。
どちらにせよ、やつの“遊び”に巻き込まれていることだけは確かだった。
ちなみに、リューシャからは、俺が手を出したことについて結構怒られた。
「なぜ、手を出されたのですか! やはり、私の行いは許されなかったのか……。 何卒、もう一度、チャンスを!」
恐らく、プライドを傷つけられたのであろう。
彼女は、すごい勢いで俺に迫ってきた。
その目は、怒りと悔しさと――ほんの少しの悲しみが混じっていた。
さすがに創造主のことまでは話せない。
そこで、なんとか彼女を宥めるために、 これからエルフ大陸までの道中をすべて任せることにした。
それでようやく、彼女の気持ちは落ち着いたようだった。
次は、先程の戦いについて。
俺は今回、完全に“神としての立場”を演じると割り切っていた。
だから冷静に見えたかもしれないが―― 実際のところ、めっっっっっっちゃくちゃに大興奮していた。
町でのザエルとの出会い、大型船への乗船、魔物の襲来、ピンチからの共闘、そして撃破。
この展開に燃えないやつなんているか? いや、いない。断言する。
リューシャが海を割き、ザエルが“ここしかない”というタイミングで見事にレヴィウスを打ち抜いた瞬間。
その後、リューシャがこちらに振り向き、船員たちが歓声を上げたあの一瞬――
もう、鳥肌がヤバかった。
そして何より、レヴィウスの圧倒的迫力。
どっかのサメ映画や恐竜映画には悪いが―― 仮に俺が現代社会に蘇ったとしても、今日見た光景を超えることは絶対にないだろう。
そして、最後に俺……いや、俺たちについて。
ザエルや船員たちには、“絶対に他言しない”という約束を取り付けたうえで、 俺たちの旅の目的と正体について、一部を明かした。
俺たちがローブをとって姿を見せた瞬間――
この日、何度目か分からない静寂が訪れる。
分かっていたことだが……俺たちの顔は、彼らには刺激が強すぎた。
誰もが言葉を失い、ただ目を見開いていた。
そして、ザエルはおもむろに俺たちの前へ歩み寄り、
――土下座した。
「頼む! どっちでもいい! 俺の嫁になってくれ!」
当然ながら、俺もリューシャも丁重にお断りした。
そんな茶番もありつつ、今回の戦いは――
誰一人欠けることなく、無事に幕を閉じたのであった。




