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白き獣は世界を見下ろす  作者: HANA
エルフ大陸編
35/41

強者vs強者

 海の上を、風を纏って駆けるリューシャ――その姿は、まるで空を裂く閃光のようだった。

 波を蹴り、風を操りながら、彼女は一直線にレヴィウスへと向かっていく。


 やがて彼女の魔力の高まりと合わせるように、空気が震え、海面がざわめき、そして空が一瞬だけ暗く染まる。


 ――詠唱。ハザードストーム。


 解き放たれた言葉に呼応するように、風が咆哮を上げ、巨大な刃のような竜巻が、海面を切り裂きながらレヴィウスの胴体へと襲いかかった。


 だが、リューシャは止まらない。


 ――詠唱。ライトニングフォース。

 ――詠唱。フロスト・ノヴァ。

 ――詠唱。フレアピラー。


 次々と繰り出される魔法が、空と海を揺るがす。

 雷が海面を焦がし、氷が波を凍らせ、炎が空を焼く。


 それはもはや、魔法を知らないものから見れば天変地異だった。


 だが――レヴィウスは、微動だにしない。


 その巨体は、雷を受けても焦げず、氷を浴びても凍らず、炎に包まれても焼けなかった。 ただ、ゆっくりと首を動かし、リューシャを見据える。


 その目には、怒りも焦りもない。 あるのは――“強者”としての力を見せつける、静かな威圧感があった。


 *


「……あれだけの魔法を浴びせても、びくともしねぇのかよ……」


 ザエルが、目を見開いたまま呟く。 その声には、驚きと、ほんの少しの恐れが混じっていた。


「当然です。あの魔物の表面に見える鱗板――すべて、ミスリルです」


「ミスリル……って、あの?」


「ええ。魔法耐性に特化した金属。 あれに覆われている限り、魔法での攻撃は通りにくい。 今の連撃で、彼女も気づいたかもしれませんが……」


 言いかけた瞬間――空気が震えた。


 レヴィウスの巨体が、ゆっくりと首を持ち上げ、その周囲に急速に冷気が集まり始める。 そして、空中に――無数の氷の槍が出現した。


「ちっ!」


 リューシャの舌打ちと同時に、一斉にそれは彼女へと襲いかかる。


 彼女は風を纏い、海面を滑るようにしてなんとか回避に成功したが――レヴィウスは、それすら読んでいた。


 次の瞬間、巨体が海面を叩くように動く。


 その衝撃は、まだ遥か先にいるにもかかわらず、俺たちの乗っている船体を軋ませ、甲板を大きく揺らした。 リューシャも直撃こそ免れたが、風圧に押され、船の近くまで吹き飛ばされる。


 波が跳ね上がり、空気が爆ぜる。 水しぶきが視界を覆い、甲板に打ちつけられた風が、耳をつんざいた。


 その破壊力に、これまでの旅で見たことがない焦りの色が彼女の顔に浮かび、 さすがにこの状況はマズいと判断したのか、船の看板にふわりと着地する。


 だが、その足取りには、わずかな乱れがあった。


「理解しましたか? わたしの言っていた意味を」


 リューシャは口元をわずかに歪め、視線を逸らしながらも、頷いた。


「先ほどの行動は、不問にします。 ――ここから、頼みますよ」


 俺は視線を巡らせ、リューシャとザエルの二人を見渡す。


 ザエルは、状況が飲み込めていないようで、困惑した表情を浮かべていた。


「本来なら、お互いに出来ることを話し合って決めてもらいたいのですが…… 時間がありません。わたしが伝えます」


「リューシャは、ご覧の通り魔法主体の戦いです。 対してザエルは、魔法はほとんど使えませんが――あらゆる武器が使えます」


 驚いたように目を見開きながら、ザエルが俺を見た。


「スキル――《戦器万象》。 数多ある武器を自在に扱う能力……ですよね?」


「……なんで、それを……」


「今は、答えている時間はありません」


 俺は、レヴィウスの方へと視線を向ける。


「それよりも――来ますよ」

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― 新着の感想 ―
お久しぶりです\(^^)/ ちょっと自作に追い詰められて読みにこれてなかったんですけど、一段落ついたので一気にここまで読んじゃいました(笑) この回、ここまで読んできた中で正直一番滾りました。 強大…
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