決意と別れ
「エルフって……あの?」
ティアナが、戸惑いながらエルミナに問いかけた。
「ああ。君が思い浮かべている“あの”エルフだ」
それを聞いた三人は顔を見合わせ──
何かを察したように、声を漏らす。
「……会えるんですか?」
エルミナは静かに頷いた。
「ああ。私の知り合いに、エルフと交流のある方がいる。
その方を通じて、接触を試みるつもりだ」
*
森に住む種族──エルフ。
この人間の大陸とは異なる土地で暮らす、いわば“異種族の長命者”。
基本設定は王道で、容姿端麗。
長寿の種族であり、争いを好まない。
──そして、何より人間を嫌っている。
「君たちも知っての通り、エルフは人間に冷淡だ。
いつからなのかは定かではないが、ここ数百年、直接の接触が絶えているのは君たちも知っているだろう」
エルミナの言葉は、感情を抑えながらも真実を語っていた。
神話にも、特に記されていないが──
かつての戦争の火種も、人間がエルフに危害を加えた可能性が高い──そう、エルミナは付け加えた。
「だから、君たちは連れていけない。……分かってくれ」
ティアナたちの表情に、戸惑いと複雑な色が浮かぶ。
そう──
この“人間とエルフの不仲”という設定は、俺自身が世界構築の段階で組み込んだものだ。
過去に人間がエルフに行った仕打ちによって、関係が崩れた。
これは、神話とは関係なく俺がこの世界に刻んでおり、周知の事実として世界では認識されている。
それは、“今生きる人間”に責任があるわけではない。
……けれど、三人は少しだけ申し訳なさそうな顔をしていた。
ティアナは、その事実を知りながらも、ためらいがちに問いかける。
「アストをエルフに会わせて……どうするんですか?」
エルミナの答えは、はっきりとしていた。
「エルフの寿命は、おおよそ二百年〜三百年。
人間よりも長く生きる彼らは、神話について我々より詳しく知っている可能性がある。
さらに、噂では千年近く生きている“長老”がいるとも聞く」
「その者にアストを会わせることができれば──
より確かな答えを得られるかもしれない」
その言葉に、三人は言葉を失った。
“神話の謎を解くため”──
“エルフと接触するため”──
そう言われてしまえば、軽率に反論することはできない。
応接室に、重い沈黙が流れる。
*
やがて、その空気を切るように──ティアナが声をあげた。
「アストは……どうしたい?」
彼女の柔らかな瞳が、俺をまっすぐ見つめている。
今にも泣き出しそうな目。
ティアナ自身、わかっているのだ。
──きっとここで、お別れになることを。
正直なところ、俺もかなり寂しかった。
短い期間だったとはいえ、彼女たちと過ごした旅は、本当に楽しかった。
初めて一緒に旅をした仲間が、彼女たちで良かったと──
心から、そう思える。
だが、それでも。
俺には“じっとしている”という選択肢は、残されていない。
この世界を創った者として、
世界を見守り続ける義務がある。
そんな思いを胸に、俺はティアナの目をじっと見つめ返した。
……そして。
「そっか。寂しいけど……仕方ないね。
もし、アストがそんなすごい神獣様なら……私たちなんて不釣り合いだもの」
彼女は、声を震わせながら笑ってみせた。
そして──
「……でも、もしアストが戻ってきたくなったら、必ず私たちの所に、帰ってきてね!
約束だよ!」
そう言って、ティアナは涙を目いっぱいに浮かべ、俺をぎゅっと抱きしめた。
その腕は温かく、少しだけ震えている。
俺の身体を撫でながら、何度も、何度も──俺の名前を呼ぶ。
カイルとエミリオも、言葉にはしなかったが、目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
いつになるかはわからない。
けれど──また彼女たちに、必ず会いに行こう。
その時は、隠さなくていいかもしれない。
普通に喋って、驚かせてみるのもいいだろう。
彼女たちが目を丸くして、俺が旅の話を自慢げに話して、そして──また一緒に笑い合う。
そんな光景を思い描きながら──
俺は、この出会いに深く……深く、感謝した。
すいません、ティアナの耳が尖っててエルフみたいになってるんですが、彼女は普通に人間です笑
AI生成の画像で、そんなこと頼んでないんですがなぜか、勝手になっちゃいまして。。
別に伏線でもなんでもないので、普通の人間として御認識くださいm(_ _)m




