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白き獣は世界を見下ろす  作者: HANA
人間大陸編
19/41

決意と別れ

「エルフって……あの?」


 ティアナが、戸惑いながらエルミナに問いかけた。


「ああ。君が思い浮かべている“あの”エルフだ」


 それを聞いた三人は顔を見合わせ──

 何かを察したように、声を漏らす。


「……会えるんですか?」


 エルミナは静かに頷いた。


「ああ。私の知り合いに、エルフと交流のある方がいる。

 その方を通じて、接触を試みるつもりだ」


 *


 森に住む種族──エルフ。


 この人間の大陸とは異なる土地で暮らす、いわば“異種族の長命者”。

 基本設定は王道で、容姿端麗。

 長寿の種族であり、争いを好まない。


 ──そして、何より人間を嫌っている。


「君たちも知っての通り、エルフは人間に冷淡だ。

 いつからなのかは定かではないが、ここ数百年、直接の接触が絶えているのは君たちも知っているだろう」


 エルミナの言葉は、感情を抑えながらも真実を語っていた。


 神話にも、特に記されていないが──

 かつての戦争の火種も、人間がエルフに危害を加えた可能性が高い──そう、エルミナは付け加えた。


「だから、君たちは連れていけない。……分かってくれ」


 ティアナたちの表情に、戸惑いと複雑な色が浮かぶ。

 そう──

 この“人間とエルフの不仲”という設定は、俺自身が世界構築の段階で組み込んだものだ。


 過去に人間がエルフに行った仕打ちによって、関係が崩れた。

 これは、神話とは関係なく俺がこの世界に刻んでおり、周知の事実として世界では認識されている。


 それは、“今生きる人間”に責任があるわけではない。

 ……けれど、三人は少しだけ申し訳なさそうな顔をしていた。


 ティアナは、その事実を知りながらも、ためらいがちに問いかける。


「アストをエルフに会わせて……どうするんですか?」


 エルミナの答えは、はっきりとしていた。


「エルフの寿命は、おおよそ二百年〜三百年。

 人間よりも長く生きる彼らは、神話について我々より詳しく知っている可能性がある。

 さらに、噂では千年近く生きている“長老”がいるとも聞く」


「その者にアストを会わせることができれば──

 より確かな答えを得られるかもしれない」


 その言葉に、三人は言葉を失った。


 “神話の謎を解くため”──

 “エルフと接触するため”──


 そう言われてしまえば、軽率に反論することはできない。


 応接室に、重い沈黙が流れる。


 *


 やがて、その空気を切るように──ティアナが声をあげた。


「アストは……どうしたい?」


 彼女の柔らかな瞳が、俺をまっすぐ見つめている。

 今にも泣き出しそうな目。


 ティアナ自身、わかっているのだ。

 ──きっとここで、お別れになることを。


 正直なところ、俺もかなり寂しかった。


 短い期間だったとはいえ、彼女たちと過ごした旅は、本当に楽しかった。


 初めて一緒に旅をした仲間が、彼女たちで良かったと──

 心から、そう思える。


 だが、それでも。

 俺には“じっとしている”という選択肢は、残されていない。


 この世界を創った者として、

 世界を見守り続ける義務がある。


 そんな思いを胸に、俺はティアナの目をじっと見つめ返した。


 ……そして。


「そっか。寂しいけど……仕方ないね。

 もし、アストがそんなすごい神獣様なら……私たちなんて不釣り合いだもの」


 彼女は、声を震わせながら笑ってみせた。


 そして──


「……でも、もしアストが戻ってきたくなったら、必ず私たちの所に、帰ってきてね!

 約束だよ!」


 そう言って、ティアナは涙を目いっぱいに浮かべ、俺をぎゅっと抱きしめた。

 その腕は温かく、少しだけ震えている。


 俺の身体を撫でながら、何度も、何度も──俺の名前を呼ぶ。

 カイルとエミリオも、言葉にはしなかったが、目にはうっすらと涙が浮かんでいた。


 いつになるかはわからない。

 けれど──また彼女たちに、必ず会いに行こう。


 その時は、隠さなくていいかもしれない。


 普通に喋って、驚かせてみるのもいいだろう。

 彼女たちが目を丸くして、俺が旅の話を自慢げに話して、そして──また一緒に笑い合う。


 そんな光景を思い描きながら──

 俺は、この出会いに深く……深く、感謝した。


挿絵(By みてみん)


すいません、ティアナの耳が尖っててエルフみたいになってるんですが、彼女は普通に人間です笑

AI生成の画像で、そんなこと頼んでないんですがなぜか、勝手になっちゃいまして。。

別に伏線でもなんでもないので、普通の人間として御認識くださいm(_ _)m


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― 新着の感想 ―
普通に続き気になって、感想もそこそこに次の回来たんですが、えー?! ここで? ここで彼らとはお別れなんですか???(;;) くっ……ありがとうティアナ……。 ティアナ終止いい子すぎましたね。 君が私…
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