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白き獣は世界を見下ろす  作者: HANA
人間大陸編
15/41

出会いの価値

 グランツと別れたあと、俺は無事、時間内に宿に辿り着いた。


 そそくさと衣服を脱ぎ、変身魔法を解除すると──

 今となっては、この姿の方が落ち着く。


 ふわりとベッドに跳ね戻り、尻尾を丸めてしばし休息。


 予期せぬハプニングはあったものの、ノアヴェルたちを視れたこと、

 そして、魔法が想像以上にうまく機能したのは大きな収穫だった。


 今後も、使う機会はきっと訪れるだろう。


 *


 ほどなくして、ティアナたち三人が宿へ戻ってきた。


 それぞれがとても満足そうな顔をしている。

 都市探索を満喫してきたようだ。


 すると、ティアナがふいに何かを後ろ手に隠しながら、俺の方へ近づいてきた。


 なんだ……?


 目の前に立った彼女は、満面の笑みとともに──

「じゃーん!」と、勢いよく手を差し出す。


 俺の目に映ったのは──ネックレス?


 首を傾げていると、ティアナが自然に説明を加えてくれた。


「アストにずっとお留守番させて悪かったなってことで、みんなで相談したんだ。

 何か、お土産を買ってあげようって。

 そしたら、これが目に入って」


 彼女が持ち上げたネックレスには、この都市の騎士団紋章があしらわれていた。

 通行証代わりに使ったバッジに、どこか似ている。


 ティアナは自然な手つきで、俺の首元に手を伸ばす。

 カチリ──首に、ネックレスが触れた。


 俺はなされるがまま、じっとしていたが──

 ……悪くない。

 それに、予期せぬサプライズのプレゼントはやっぱり嬉しい。


 俺はその場で一回転。

 ぶんぶんと尻尾を振って、喜びを全力でアピールした。


 その姿に、三人は安堵したように胸をなで下ろす。


「良かった〜。気に入ってくれたみたいだね」


 そんなティアナの安堵の声に、カイルとエミリオが続いた。


「そうだな。結局、あーでもない、こーでもないってウロウロして……

 午後は、ほとんどプレゼント選びで時間使ったからな」


「でも、こんなに喜んでくれて良かったです。

 頑張って探した甲斐がありましたね」


 彼らの顔は、どこか誇らしげで──何より優しかった。


 俺は、そんな様子を見て、ふと思った。


 この世界を創った立場でありながら──

 最初は彼らの名前も、存在すら知らなかった。


 それが今では、まるで物語の中心にいるような光を放っている。

 華々しく輝く“主人公”の裏で、こんなストーリーも存在しているのだ。


 そう思うだけで──なんだか、心が躍る。


 これから出会うであろう、さまざまなキャラクターたち。

 その一人一人との関わりを、大切にしていこう──そう、改めて決意した。


 *


「アストも喜んでくれたようだし──飯にするか!」


「賛成!」


 どうやら三人は、“宿の食事が無料だから”という理由で、昼は一切食べていなかったらしい。


 普通なら遠慮してしまいそうなところだが──

 それをしないのが、冒険者らしいハングリーさというものだろう。


 早速、部屋のベルを鳴らし──

 三人は思い思いに、それぞれ好き勝手な注文を始めた。


 そして今更だが、俺もこの世界に来てから人間と同じものを食べている。

 この世界の料理は……どれも、やたらと美味い。


 現代にいた頃、グルメ漫画を良く読んでいたせいだろうか。

 自然と、その記憶が反映されているのかもしれない。


 今思えば、カーラの宿の飯もかなり美味かった。


 甲乙つけがたいが──

 もし、あの宿がここに勝てるとすれば……それは、“飯”だ。


 そんなことを考えながら、笑い声の中で食事が進む。


 やがて、時間はゆっくり流れて──

 夜は静かに、更けていった。


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― 新着の感想 ―
おじゃましてます! プレゼント貰ってはしゃいじゃうアストも、そのプレゼントを一生懸命選んでくる3人もほっこりかわいいですね。 そのご飯私も食べたいです一緒に泊めさせてくださいっ!w(まだ言ってる) …
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