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創造の世界

新たに別ジャンルで投稿です!

一応、予定では結構な長編にするつもりなので、もし興味があれば是非、ご覧ください(^^♪


 ……目が覚めた時、俺は“何もない空間”にいた。


 音もない。匂いもない。風すらない。


 ただ、俺の“意識”だけが──ぽつんと浮いている。


 どこにも触れず、何にも包まれず、ただ存在している感覚。


 記憶は曖昧だった。

 でも、何か……何かをしようとしていた気がする。

 ......そうだ、思い出した。


 そう、あの日は──大雨だった。


 川が氾濫し、橋は通行止め。

 車の中で舌打ちして、引き返そうとしたその時──俺は見てしまった。


 激流の中、流されそうな子供が、必死に枝にしがみついている。


 周囲の人々も気づいたようだった。

 けれど誰も動かない。当然だろう。


 この流れに飛び込むのは、自殺行為だ。


 救急を待つ、それが最善。

 俺もそう思い、目線を車内に戻した──その時だった。


 目に入ったのは、昔観ていたアニメのCDジャケット。


 その作品の中で、俺の記憶に残っていたセリフが頭をよぎる。


「こわい時もある。でも勇気を出して一歩踏み出そう。

 そうすればきっと、明日は違う未来が待っている。」


 気づけば──俺は、車から飛び出していた。


 子供をめがけて、一直線に。


 泳ぎは得意じゃない。

 それでも、もがいて、溺れかけながら──手を伸ばした。


 そして、ついに──その小さな手に触れた瞬間……


 枝が折れ、俺たちは共に、濁流にのまれていった。






 ***






 《よく頑張ったね》


 声が響いた。


 柔らかくて、まるで親しい誰かに話しかけられたような感覚。


 どこから声が聞こえているのかは分からない。


 でも、声の主は……多分、子供のようだった。


 《君は死んだ……いや、正確には、生きる世界を終えたんだよ。

 だけど、退屈な世界なんて誰だって嫌だろ?》


 俺は何も言えない。


 ただ、その子供の声には、なぜか無視できない重みがあった。


 《だからさ、次は君に面白い世界を作ってもらうよ。

 自由に、好きなように。

 期限は……そうだね、とりあえず100年》


 その言葉は冗談めいていたけど、どこか本気だった。


 俺は何か返そうとしたが、うまく言葉が出ない。

 そもそも、今の自分に声を発する口というものが存在しているのかも分からない。


 戸惑う俺の様子を見て、その子供はクスクスと笑う。


 《ああ、ごめん、ごめん。君からも質問あるよね?》


 その言葉に、俺は同意の意思を示す。


 《ええと……なになに?あなたは誰で、ここはどこなんですか?》


 子供は自分で質問をして、自分で考えるという謎の行動をする。


 はたから見てたら、少し頭のおかしい子に見えそうだ。


 《あ、今とても失礼なことを考えていたね。全く……。

 では、君の質問に答えよう》


 《まず、私には名前は無い。

 しいていうなら……世界の創造主とでも言っておこうか。


 そして次の質問だが、ここは“無の空間”だ。


 文字通り無。何もない場所。


 そしてここからすべてが始まる場所》


 何を言っているか、さっぱり理解できない。


 創造主?無の空間?

 まるで、ゲームの世界のような話をしている。


 《ああ、その例えいいね。そう、まるでゲームの世界なんだよ。

 君たちの住んでいる世界というのは》


 その言葉に、なぜかぞっとする気配を感じる。


 皮肉や嫌味とかではない。

 でも、聞く者を不快にさせるような、そんな声だった。


 《ごめん、ごめん。そんなつもりじゃなかったんだけどな。

 気を悪くしたならすまない、謝るよ》


 再び発した声は、本心から謝っているような声だった。


 この声の持ち主の感情が読めない。


 《そういえば……さっきの話に戻すけど、君には自由に世界を作ってもらう。

 大丈夫、僕も手伝うから安心して》


 そして、その言葉には、最初に聞かされたような妙な温かさがあった。


 正直、訳が分からなかったが、そこから俺は対話した。


 まあ、対話って言っても俺は何にも喋れないから、頭の中の考えを読み取ってもらったって感じだけど。


 どれだけ話したのかは分からない。


 でも、俺はこれまでの人生でこんなに誰かと対話したのは、はじめてだと思った。


 だって、そうだろう。どうせ死んだんだ。 もう何も怖いものは無い。


 俺は自分の意見を、アイデアを、すべてぶつけた。


 《よし、これでいけそうだね。

 じゃあ、最後にひとつ、好きな動物は?》


 唐突すぎて面食らったが、なんとなく俺はこうイメージした。


「犬……いや、猫も……うーん、どっちも……」


 子供は笑った。


 《じゃあ、両方だね》


 そう言った瞬間、俺の意識がまた吸い込まれるように消えていった──。






 ***






 気がついた時、俺は土の上に立っていた。


 太陽が眩しく、風が頬を撫でる。

 土の匂い。遠くで騒ぐ人の声。屋台の音。

 ──確かに、生きている“世界”の気配がした。


 ふと、周囲の視線に気づく。

 人々がこちらを見て、ざわついていた。


「なんだ……あれ……?」


「魔物……?いや、でも雰囲気が違う……」


「白い……獣?」


 声があちこちから漏れ、俺を取り囲むように集まってくる。

 剣を握る手に力を入れる衛兵もいれば、好奇心に駆られた子供が身を乗り出している者もいる。


 戸惑いながら、俺は近くの水たまりに目をやった。


 そこに映っていたのは──

 白い毛並みに包まれ、猫のような耳、犬のような尾を持つ、不思議な獣の姿。


 神秘的な瞳が、太陽の光を反射して瞬いている。


 それが、俺だった。


「……!?」


 かっこいいような、可愛いような──

 いや、そんなこと考えてる場合じゃない。


 俺の姿が“完全に人外”であることは明白だった。

 見下ろした足は爪先の尖った獣のもので、背にはモフモフの尾が生えている。


 ──これは、どうすればいいんだ!?


 創造したはずの世界に、自分自身が創造物として放り込まれるなんて聞いてない。


 周囲は俺の姿に困惑していた。

 だけど、それ以上に俺自身が──混乱していた。


「……衛兵!あれ、危険じゃないか?!」


「いや、でも……あの瞳、何か知性があるような……」


「誰か知らないのか……?」


 混乱が覚めやらぬ中で、俺は気づく。


 この世界──街、人々、空気、建物の雰囲気──

 すべてが、俺が先ほど創ろうとしていた“ファンタジー”の形、そのものだった。


 剣を腰に下げた男が歩き、ローブ姿の魔法使いがすれ違う。

 屋台の香ばしい匂いが風に流れ、石畳の通りには光と陰が溶けている。


 これは──アニメやゲームで見ていた、“憧れの世界”。


 感動と驚きが交錯し、思わず言葉を失った。


 ……やばい、これ。本物だ。


 その瞬間、俺の“創造の旅”が始まった。


挿絵(By みてみん)


※アストのイメージ図の挿絵を入れてみました笑

全体的に犬感が強いので、もしかしたら変えるかも?

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― 新着の感想 ―
Twitterから面白そうだなと思って読みにきました。 匂い。音。雰囲気。プロローグから、読んでいてちゃんと伝わりました( ^ω^ ) 何よりわたくし重度のケモナーなので、もふもふが……もふもふがいい…
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