優しいお姉様ですね
「ああ、昨夜のことなのですが
久しぶりに、実家に、一時帰宅しまして
弟の悠司とゆっくり会話しました」
「あら、久しぶりに!」
「はい、弟は弟で、次男坊なのに、優秀な兄貴の代わりが出来るのだろうか…とプレッシャーを抱いていることが分かりました」
「まあ! 弟さんも…」
「似た者同士の兄弟だったようです」
「ふふふ、お話し出来て良かったですね」
「はい、ありがとうございます」
前回お会いした時より、雰囲気が柔らかく……
礼央様にとって、弟さんとの和解は、劣等感を解きほぐす、良い結果となったようです。
「珍しく、私が帰省することを聞いて、姉夫妻と甥っ子も、帰省していました」
「お姉様もいらっしゃるのですね?」
「ええ、姉上は、辺境伯位の竜崎家の次期当主、珀人様に嫁入りしました」
「もしかして、玲華夫人でしょうか?」
「おや? 姉上をご存知なのですか?」
「ええ、お会いしたことが」
玲華夫人は、美しいプラチナブロンドの長髪に濃い緑色の鋭い目付きの女騎士様です。
高飛車な雰囲気からして、近寄りがたい貴婦人なのですが、実は、人付き合いが苦手すぎて、戸惑っているだけの、優しい方です。
厳つい騎士の次期辺境伯様に嫁入りした為に、本物の美女と野獣のようだと言われています。
「実は、玲華夫人には
大変お世話になりまして…」
「えっ? そうなのですか?」
「お恥ずかしながら、夜会で転んでしまった時がありまして、助けてくださいました」
「転んで………」
ドレス姿で転んでしまうのは大変良くないこととされている中、転んでしまったのです。
その時、エスコート役として来ていた、婚約者候補だった雨宮様は、呆れた表情で、近寄りも助けもしませんでした。
プライドが高いお方だからでしょうね。
「玲華夫人は、優しいお姉様ですね」
「姉上を優しい方だと思って下さるのですね」
「はい、破れたドレスに気付いて下さいまして、代わりのドレスに着替えれるように、すぐに、個室を手配して下さいました」
「そのようなことが………」
「その後に、玲華夫人にお礼をお伝えする為に、お礼の手紙を送りましたよ」
「そうでしたか、姉上がお優しい方だと気付いて下さって、ありがとうございます」
礼央様の表情が、ふんわり優しくなりました。
玲華夫人は、巷で話題の恋愛小説の悪役令嬢によく似ていまして、そっくりなのですが…
けれど、勘違いされやすい見た目をしているというだけで、優しくて、真面目な方です。
「あ、竜崎辺境伯領の、ぶどうジュースがとても美味しくて、よく注文するのですよ」
「確かに、あのジュースは、美味しいですね
我が家に注文したら、安めに注文できますよ」
「まあ!そうなのですか?注文しても、宜しいのでしたら、是非、お願い致します」
「ふふ、分かりました
ご注文ありがとうございます」