比べる必要はないわ
「弟さんと比べる必要はないわ」
「瑠花嬢…? 比べる必要がないとは?」
「入沢様は、優秀だからこそ、王太子殿下の護衛騎士として、選ばれたのではなくて?」
王太子殿下の護衛騎士という立場は、なかなかなれるものではない。
国王陛下、王妃、王太子殿下、宰相閣下などの方々の了承だけではなくて、難問の試験に合格する必要があるのだ。
それに合格するということは、このおふたりが身分関係なく優秀だということだ。
噂によりますと、とある公爵家の三男坊やら、とある辺境伯家の次男坊やら、身分が高い割に護衛騎士選抜試験に落ちている人が、ちらほらいらっしゃるそうなので。
ちなみに、とある公爵家の三男坊や辺境伯家の次男坊の方々は、残念ながら、子どもに恵まれなかった男爵家に養子入りしているらしい。
「そうでございます、礼央は非常に優秀でして、我々は、いつも助かっておりますぞ」
「ああ、そうだよ、将来的に、私の参謀として、その優秀さを発揮して欲しいんだ」
「皆様に認められているじゃないですか〜
大丈夫だと思いますよ〜」
「皆様… ありがとうございます」
入沢様が、ふわりと、にこやかに微笑んだ。
あら、笑顔が素敵なお方なのね。
「入沢様は、
ずっと劣等感を抱えていたのね?」
「はい、そうみたいです」
「誰しも劣等感はあるけれど、人と比べる必要は全くありませんよ?過去の自分と比べて、成長したかどうかが大事です」
「過去の自分と…確かに、昔の自分と比べたら、確実に、成長しています」
「ええ、そう気付けたのなら、大丈夫よ」
「瑠花嬢、ありがとうございます」
「ふふ、どういたしまして」
「瑠花様〜 瑠花様〜」
「はい、何かしら、千沙子?」
「入沢様とゆっくりお話ししてみては〜?」
「せっかくだから、そうしましょうか」
お父様ならば、雨宮様が婚約者候補から辞退をした為に、早めに、婚約者候補を増やしたいと願っているでしょう。
婚約者認定される前に入沢様のお人柄を知れる機会が必要だと思うわ。
「千沙子も、高樹様と
ゆっくり話したいということなのね?」
「お話ししてみたいと思っていますよ〜」
「良いんじゃないかしら?ただし、貴女の侍女が、一緒にいる必要があるから、後日よ」
「はい、そうですね〜 分かりました〜」
「入沢様、高樹様、もし宜しければなのですが、後日、それぞれの組み合わせで、話が出来ると嬉しく思いますが、いかがでしょうか?」
「ぜひ、瑠花嬢とゆっくり話してみたいです」
「そうですね、私も、千沙子嬢と話をしてみたいでございます、宜しくお願い致します」
「わあ〜 ありがとうございます〜」
「ふふ、宜しくお願い致します」