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恋人のフリを頼んできた美少女がなぜか全然別れてくれない件  作者: 海月 くらげ@書籍色々発売中
第三章

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78/90

第78話 学園祭、出し物決め

「――それでは、学園祭での出し物を決めたいと思います」


 そう言いだしたのはうちのクラス委員長、長月だった。

 肩口で揃えた黒のセミロングと薄ぶちの眼鏡が特徴的な、真面目そうな文学少女といった風貌の女子生徒である。


 俺たちの手元には去年の学園祭で各クラスが行った出し物の一覧表が配られていた。

 喫茶店、お化け屋敷、演劇など定番のものが多いな。


 高校の学園祭ということもあり、本格的な調理が必要になるものは出来ないらしい。

 万が一にも食中毒などが発生したら責任は学校へ向くのだから当然だろう。


 ただし、完全に飲食系がダメなわけではないようだ。

 調理という工程を挟まなければいいだけなので喫茶店が許可されている。


「皆さんに渡してある表はほんの一例です。最終的には多数決で決めるため、新しい案も歓迎です。時間を取るので周りの人と話し合ってみてください」


 どうぞ、とクラス全体へ雑に投げられる。


 学園祭の出し物……どうしようか。


「出し物どうする? 何やっても楽しそうだよねー」


 真っ先に声をかけてきたのは隣の席の花葉。

 花葉はこういうのも好きそうだ。


「正直、何がいいかわからん。去年の記憶すら曖昧でな」

「そっかー。んじゃ、今年はいっぱい楽しまないとね!」


 にっこり笑いかけられ、これが陽キャかと思い知る。

 そこからさらに花葉は前二人……月凪と燐へ声をかけた。


「るなっちとしのっちはどう?」

「私は……あまり目立たないものがいいですね」

「確かに白藤さんは大変そうだなあ」

「るなっちがいるってみんな知ってるから行列が出来そう」

「当日は地域の人も来るだろうからな。何もなきゃいいけど」

「不審者は入場の時に弾かれる……よね?」

「真人間の擬態していたら別だけども」

「怖いことを言わないでください」


 月凪が恨めしげに俺を見ながら告げ、申し訳なく思う。

 楽しい学園祭の話をするべきだな。

 不審者が来るなんて俺たちにはどうしようもない。


 対抗策は学校側も考えてくれているはず。

 それでも入り込んだなら……出来る限り、守るつもりではいる。


 ただ、出くわさないのが一番であるからして。


「それより肝心の出し物の話をしましょう。私は喫茶店がいいと思います。無難ですし、他と比べれば表立って動く時間も少ないでしょうし」

「あたしはお化け屋敷も楽しそうだなーって思ってた。舞台の準備が大変だけど。中学校の頃にしたのが懐かしいなあ」

「どっちにしても珀琥くんと白藤さんは引っ張りだこになりそうだね」

「裏方仕事は頑張るつもりだよ。何になったとしても力仕事くらいでしか貢献出来なさそうだし。あー……ギリギリお化け役ならいけるか?」


 俺の顔では接客に立つのは望ましくない。

 意図とは関わらず、いい印象は与えないだろう。

 逆に活きるのがお化け屋敷のお化け役だとも思うが、どうだろう。


「でも、喫茶店だと衣装に着替えるのか? 制服のままだと味気ないというか、雰囲気が足りないというか」

「喫茶店の衣装……メイド服?」

「それなら男子は燕尾服かな」

「執事かよ。女子もメイド服だと趣旨が変わってこないか?」

「主従喫茶でしょうか。面白そうではありますが……私がメイド服を着てもてなす側であると考えると、羞恥心やその他諸々の問題から賛成はしにくいですね」


 コスプレじみた服装で接客まで求められるのは月凪の許容量をオーバーしているらしい。

 接客に選ばれるのは顔が良くて人当たりがいい人だろう。

 どうあがいても月凪が選ばれないなんてことはない。

 花葉と燐も同じだろう。


 唯一被害がなさそうなのは俺だけだが、素直には喜べない。

 月凪が目立つなら、それだけ問題が起こる可能性も上がるわけで。


「――一旦話をやめてください。表にないもので候補が上がったところは挙手をお願いします」


 長月の声で話し合いをやめることになり、ちらほらと手を上げたクラスメイトから案を募っていく。

 とはいえ、その多くが既に票に書かれている内容の発展形。

 中にはメイド・執事喫茶もあり、月凪がげんなりとしていた。


 それから投票用紙が配られ、第三希望までを書くように告げられる。

 三つも希望を書くのは他のクラスと被った際に上手くやるためだとか。


 正直、メイド・執事喫茶以外ならなんでもいいかなという気がしていた。

 あれだけちょっと異質というか、一部本気の人間が生まれかねない。


 とりあえず当たり障りのない候補として普通の喫茶店とお化け屋敷を記入し、最後の一つは射的としておいた。

 夏休みにお祭りでやってきたからイメージしやすいのも理由の一つ。


 全員が記入を終えたところで投票用紙が回収され、長月が「集計が終わって正式に決まり次第お知らせします」と締めくくる。


「どうなるか楽しみだな」

「メイド・執事喫茶以外ならなんでもいいです。珀琥の執事姿が見られるかもしれないメリットより諸々のデメリットの方が大きいので」

「俺の執事姿なんて見てどうするんだよ」

「なんかいいじゃないですか」


 気持ちはわからなくもないけど、仮に決まったとしても執事としての出番はないと思うぞ。

 もてなすはずの執事が怖かったら……それはそれでありなのか?


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