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恋人のフリを頼んできた美少女がなぜか全然別れてくれない件  作者: 海月 くらげ@書籍色々発売中
第二章

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53/90

第53話 せめて同居生活って言ってくれ

 駅に着いた俺たちは、外に出て母さんと妹の姿を探した。

 そして、それはすぐに見つかった。


「お兄ちゃーん! こっちこっち!」


 駅前の広場で俺と目が合うなり、笑顔で駆け寄ってくる少女が一人。

 その隣には母さん、祥子の姿もあった。


 セミロングの黒髪と、小生意気ながらも憎めない笑み。

 体格は小柄で小動物めいた雰囲気だ。


 桑染淡翠。

 彼女こそ約一年ぶりに会う俺の妹だ。


「おう、淡翠。久しぶりだな。元気だったか?」

「見ての通り元気だよーっ! お兄ちゃんも元気そうだね。……んでんで、そのお隣の超絶美人がお兄ちゃんの彼女さんだったりする?」


 再会の挨拶もそこそこに、淡翠の興味は俺の隣で固まっていた月凪へ移る。


 月凪も初めて会うから緊張しているんだろう。

 結構人見知りだからな。

 淡翠が初対面でもぐいぐいくるからかもしれないけど。


「ええと……初めまして、淡翠さん。私は白藤月凪です。珀琥とはお付き合いをさせていただいています」


 丁寧に、ともすれば緊張で硬い挨拶になってしまった月凪が腰を折ると、淡翠はぴたりと固まっていた。

 しかし、淡翠の目はとても輝いていた。


「……え、顔だけじゃなく声もめちゃくちゃいいんですけど? ……って、そうじゃなくて。お兄ちゃんの妹の淡翠です。うちのお兄ちゃんに彼女が出来たって聞いていたのでどんな人かと思ったら……こんな超絶美人だとは思っていませんでした」

「超絶美人だなんて、そんなことありませんよ」

「いやだって肌きめ細かいし綺麗だし髪つやつやだし銀髪だしモデルさんか何かだったりします?」

「髪と目の色はハーフだからですね。モデルなどはしていません。肌や髪は日々の手入れの賜物でしょうか。大丈夫ですよ、淡翠さんも凄く可愛いですから」

「いやいやいや……隣に並んだら月とすっぽんですよ? もちろんすっぽんは淡翠です。というか一応聞くんですけど……美人局とかだったりしませんよね?」

「違いますよ、と否定しても説得力がありませんよね。それは今後、色んな所で示していけたらなと思っています」


 よろしくお願いします、と。

 またしてもお辞儀をした月凪へ、淡翠も慌てて返していた。


「全くもう……淡翠、そんなに急がなくてもお兄ちゃんは逃げないわよ」


 少し遅れて追いついた母さんが淡翠を窘めつつ、俺たちへ「久しぶりね。元気だった?」と声かけてくる。

 母さんとは三者面談の時に会っているけど、それはそれなのだろう。

 親心とはそういうものなのかもしれない。


「お話は帰ってからゆっくりすればいいわ。とりあえず帰りましょう」

「だな。母さん、くれぐれも安全運転で頼む」

「大丈夫よ。母さんはこれでもゴールド免許なんだから」



 なんて一幕を挟みつつ、母さんの車に乗って家へと帰る。

 俺は助手席。

 後部座席に月凪と淡翠が座り、楽しそうな話し声がずっと聞こえていた。


 ……話題の半分ほどが俺に関わる内容だったけど、聞かなかったことにした。


 十分ほどの移動を挟み、郊外にある住宅地の一角へ。

 こじんまりとした一軒家に到着し、やっと車が止まった。


「遅れたけれど……おかえりなさい、珀琥」

「……ただいま、母さん」

「月凪ちゃんもうちを自分の家みたいに思ってくれていいからね」

「ありがとうございます、祥子さん。数日ほどお世話になります」

「楽しみねえ……娘が二人になったみたい」

「つまり月凪お姉ちゃんってこと……!?」

「あんまり変な絡み方するなよ。月凪も付き合わなくていいからな」

「大丈夫ですよ。私もお姉ちゃんと呼ばれるのは新鮮で、ちょっといいなと思っているので」


 歓迎ムードの母さんと淡翠にありがたいなと思いつつ、俺たちは家の中へ。


 桑染家は父さんと母さん、俺と淡翠の四人家族。

 父さんが建てた一軒家は一年空いてもなんら変わっていなかった。


「えっと……おじゃまします」

「改めてようこそ、月凪ちゃん。それと、おじゃましますじゃなくて、ただいまって言ってもいいのよ?」


 おずおずと玄関に上がる月凪へ母さんは言うけど、すぐには難しいだろう。

 でも、俺も気持ち的には同じだった。


「まずは荷物の整理だけしてくるか」

「珀琥の部屋はそのまま残して、お掃除もしてあるから大丈夫よ」

「ありがと、母さん。月凪は――」

「私も一旦珀琥のお部屋に置かせてください」

「了解だ」

「えーっ!? 月凪姉は淡翠の部屋じゃダメなの?」

「荷物を置いてくるだけですから。後で沢山お話しましょうね」

「そうしよ! 一緒にお風呂も入りたいし、入った後はガールズトークしたい!!」


 早くもはしゃぎ始める淡翠だが、それも仕方ないか。


 母さんから話を聞かされ、長らく焦らされ続けた月凪との邂逅だ。


 ……単に俺の彼女として紹介されていたからかもしれないけど。


「ところで、珀琥と月凪ちゃんは一緒に寝るものと思っていていいの?」

「俺は月凪がいいなら別にいいけども……」

「私も構いませんよ」

「えっ……お兄ちゃんと月凪姉ってそこまで進んでるんだ」

「住んでいる部屋もお隣ですし、夏休み中は色んな都合で珀琥のお部屋で過ごさせていただいているので」

「それって同棲じゃんっ!?」

「……せめて同居生活って言ってくれ」


 わかっているけど、いざ突きつけられると生々しさが増すといいますか。

 同居生活をしているだけで非常に健全な過ごし方をしていても、そういうことをしていると受け取られかねない。


「……珀琥。ちゃんと避妊はするのよ?」

「妹と彼女の前で息子になんてこと言ってんだよ。てか、そういうのはしてない」

「…………お兄ちゃんって枯れてるの?」

「淡翠も何言ってんだ。中三女子がそんなこと言っちゃいけません」

「本当に珀琥は手を出す素振りもないんですよ。困りますよね」

「月凪さんまで何を言っていらっしゃる????」


面白い! 今後が楽しみ!と思っていただけたら、ブックマーク・星など頂けると嬉しいです!!

執筆のモチベーションにも繋がりますのでよろしくお願いします!!

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