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恋人のフリを頼んできた美少女がなぜか全然別れてくれない件  作者: 海月 くらげ@書籍色々発売中
第二章

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第40話 色々染みついてしまっていると思うので

「二日ほどご迷惑をおかけしました、珀琥」


 月凪が風邪を引いてから二晩開けた日の朝。

 平熱に戻った月凪は、そんな風に言いながら頭を下げていた。


 月凪の風邪の山場は一日目だったようで、急変してもいいように徹夜で傍にいたが、何事もなく朝を迎えることができた。

 二日目は比較的落ち着いたのか一日中眠ることもなくなり、俺と一緒に映画やアニメを観たり、限界が来た俺と昼寝したりと、ゆったりした時間を過ごせていた。


 二日目になって体調が良くなり、体調の都合で入れなかったお風呂にも入れたのが気分転換になったのだろう。

 月凪の雰囲気が目に見えて明るくなっていた。


 夜には微熱くらいまで下がっていて……朝も熱を測ったらこの通り。


 一時はどうなることかと思ったが、ちゃんと治ってくれて安心した。


「迷惑なんて思ってないから気にするな。でもまあ、すぐに治ってよかったな」

「本当にそうですね。折角の夏休みなのに風邪を引いては何もできませんし、一日目は怠さのせいでお風呂にも入れなくて女の子的には臭いとかすごく気になってましたし……」

「……一応言っておくけど臭くはないからな?」

「…………珀琥を信用して、言葉通りに受け取っておきましょう。でも、お布団は洗濯します。念のため。何がとは言いませんけど、色々染みついてしまっていると思うので」


 断固たる意志で主張されては従うほかない。

 まあ、月凪的には気になるだろうし、衛生的にもその方が安全だ。

 今日の天気はからっと晴れているから夜までには乾くだろう。


「それに、風邪が治ったことで病院に行く必要がなくなりました」

「喜ぶところそこかよ」

「……いいじゃないですか。苦手なものは苦手なんです」


 こういうやり取りをしていると、復調したんだなって気がして落ち着く。


 そんなわけで、今日は久しぶりに二人揃って元気な日だ。

 なので、午前中から布団の洗濯も含めて部屋の掃除をすることに。


 寝込んだ月凪がいるのに騒がしくできないと思って、ここ二日は控えていたからな。


「病み上がりなのに手伝ってもらっていいのか?」

「珀琥にだけ働かせるわけにはいきません。私も少しは成長しないと、とは思っているんですから」

「そういえば料理の練習がしたいって言ってたもんな。具合が良ければ今日からでも始めてみるか」

「そちらもお願いします。……呆れられないように頑張るつもりなので」

「呆れないって。月凪が完璧じゃないのはわかってるんだからさ」


 人間誰しもやり始めは上手くいかないのが当たり前。

 それを責めたところでどうにもならない。


 月凪が俺の勉強を見ているときと同じだ。


「……でも、ほんとに怪我には気を付けてくれよ?」

「わかっていますよ」


 これは呆れてるんじゃなく心配だからな。


 てことで、二人で手分けしての掃除が始まった。

 まずは布団を洗濯機に放り込んで洗うことに。

 丸洗いが出来るやつでよかったな。


 俺のベッドもシーツや枕カバーを取っておいて、次に洗うために纏めて置く。

 入れ替わりで洗っても替えがあるから問題ない。

 月凪の布団も外で干しておけば夜までには乾くだろう。


 その後で部屋から順に掃除機をかけていく……のは月凪にお願いすることにした。

 失敗することもないだろうと考えてのこと。

 こういうのは簡単なところから成功体験を積んでもらうに限る。


 ……掃除の成功体験ってなんだ? って疑問はあるけどさ。


 ぎこちなく掃除機をかける月凪とは別れて、俺は水回りの掃除をしてしまう。

 トイレ、洗面所、浴室、キッチン――共同生活をするなら清潔にしておきたい。

 これから一か月くらいは一緒に過ごすわけだし。


「……生活用品もちゃんと揃えないとな」


 昨日は俺と同じシャンプーとかを使っていたみたいだけど、月凪はスキンケアなどにも気を遣っているだろうから、こだわりがあってもおかしくない。


 月凪も買い物に着いてきてもらった方が良さそうだな。

 運動不足もついでに解消できる。


 それに……夏休みが終わっても、月凪が泊まる機会はあると思うし。


「うっかり着替えを覗いたりしないように気を付けないと」


 男女の共同生活で一番問題になるのはそこだ。

 恋人ならまだしも、俺と月凪は偽装交際で、友達と呼ぶべき間柄であるからして。


 風邪を引いているときに着替えさせるのはノーカンとさせて欲しい。

 あれは月凪からも求められたことであり、看病の一環。

 邪な意図(・・)は一切なかった。


 ……完全に下心がなかったとは口が裂けても言えないけど。


 とはいえ、もし仮に俺が月凪の着替えを覗き見したところで怒られない気がする。

 むしろ下着姿くらいなら余裕で見せてきそうな雰囲気すらある。


 だからと言って自分から進んで覗き見するつもりはないけどさ。

 今後の信用問題にも関わってくる。


 あと、あんな刺激的な姿を共同生活なんてしている間に見せられていたら、俺の理性的な限界が訪れかねない。


 偽物であっても彼氏。

 不義理なことはしたくない。


 一通り終わらせたところで月凪の様子を伺いに戻ると、ちょうどそっちも一段落ついたところのようだった。


「月凪も終わったみたいだな」

「そうですね。上手くできましたかね?」


 月凪に言われて部屋を見てみれば、ちゃんとできているように思えた。


 ……ちゃんと掃除機がかけられるだけでこんなに感動するとは。


「良いと思うぞ。頑張ったな」

「私だってやればできるんです」


 自慢げな笑みを浮かべる月凪。

 まったく掃除が出来ずに部屋を散らかしっぱなしだったことを、本人も案外と気にしていたのかもしれない。


「そういえば、一つ聞きたいことがあるのですが」

「なんだ?」

「珀琥はいかがわしいものをどこかに隠していたりするんでしょうか。一度も見たことがありませんし、掃除をしながらそれとなく探してみても見当たらなかったので」

「……もしあったと仮定して、隠し場所を話すわけなくないか? 別にどこにもないけどさ」

「それもそうですね。最近は電子媒体もありますし……」


 じーっと。

 怪しまれているのが丸わかりの視線を向けられ、疚しいことがないのにたじろぎそうになる。


 俺の返答が煮え切らなかったのも悪いとは思っているけどさ。


「心配しなくても月凪を襲うようなことはないから安心してくれ」

「明言されるとそれはそれで不満ですね」


 そう言われても……そこ(・・)を明かすのは色々問題があると思わないか?


面白い! 今後が楽しみ!と思っていただけたら、ブックマーク・星など頂けると嬉しいです!!

執筆のモチベーションにも繋がりますのでよろしくお願いします!!

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