第四十一話 同期の近藤は鬱な俺とは雰囲気が真逆だっての!
近藤が差し入れを持ってやって来てくれたらしいが、あいにく俺は睡眠中だった。
近藤が来たっていうのは、後になってから麗奈から聞いた話。
「ぅ、げっほげほ!……こ、近藤が?」
「ん。差し入れだって。お湯で溶かして飲むヤツとか、スープとか……あとは、冷えピタとか喉飴も大量に入っていたんだけれど……」
昼をちょい過ぎた頃になって、ようやく俺は一度目を覚ますことが出来た。
たまたま目が覚めたのか、それとも空腹でも感じたのかははっきりとは分からなかったけれど、それでも一度目が覚めるとこういう状態の中では、再び眠りにつくことは難しいもので……渋々、ベッドから這い出ると厚手のセーターを着込みながら先ほど麗奈が差し入れてくれたカップを片手に(もちろんズボン……ほとんど寝間着と化してしまっているジャージだと生地が薄すぎて寒く感じてしまったので、しっかりと裏生地が付いていて肌触りの良いスウェットを箪笥から引っ張り出してきて履いていた)スウェットのポケットのなかに一応スマホを入れて、下の階に下りた。
俺の咳は、かなりうるさいみたいで、部屋から出て下の階に下りてくるとすぐに誰かしらに気付いてしまうらしい。
たまたまキッチンに立っていた麗奈も俺が咳をしながらリビングに顔を出せば、すぐに顔を向けて様子を伺いにやってきてくれた。一応、心配はしてくれているようで気持ちは嬉しいのだが、こんな状態で数日後に差し迫ったライブに行く行く!発言を繰り返し聞いているから呆れているというか、かなりご立腹のようである。
「あ、起きて来た。……おうどん、一人前ぐらいなら食べられそう?なるべく茹でて食べやすいように柔らかくするけれど……」
「お、おお。悪い悪い……っごほ、ごほ!」
「あ。そう言えば、近藤さんって人が来たよ。……兄貴に『近藤』って言えば通じるからって言われたんだけれど」
「え、マジか……ごっほごほ……」
それ……、と麗奈が指差す先にはテーブルの上にビニール袋が。中身は?と、がさごそと開けていくと、そこにはお湯を入れて溶かして飲むレモネードだとかポカリだとか。それからインスタントのスープとかが大量に。そして、冷えピタや喉飴といった類のモノも大量に入っていた。いやいや、飲料系はそこそこお世話になっているから嬉しいんだが、喉飴って多すぎだろう。結構、次から次へと口に入れていくから消費が激しいかも……って思うかもしれないが、喉飴はいったん喉が落ち着くと途端に需要が無くなってしまう代表的な商品の一つだ。麗奈は普段から喉飴系統のモノを口にしているから苦では無いかもしれないけれど俺、こんなに一度にたくさん貰っても食べきれる自信ってないかも……。
「兄貴と仲良いの?私のときにも差し入れしてくれたんでしょ?……同期とかってヤツ?」
「そうそう。同期で苦労しながら生き残っているヤツの一人……ごっほごほ!近藤は俺の趣味についても広い心で受け止めてくれているからなかなか一緒に過ごしていても楽しいヤツだぜ?」
「へぇ……。なんか、趣味とか大っぴらにしないかと思ってたんだけれど……意外。兄貴とは雰囲気が全然違う感じの人だったじゃん」
麗奈の作る、うどんとやらが出来上がるまでインスタントの粉をカップに入れお湯を注いでいくとあっという間に作ってしまったレモネードをゆっくりと口にしていった。さすがに、熱いし、火傷の恐れもあったのでしっかりと息を吹きかけて冷まして口を付けたつもりだったんだけれど、それでも熱くて喉が火傷するかと思った。
「雰囲気?あー……まあ、オタク系とかでは無いっぽいからなー……っごほ、ごっほ!陽キャだし、現実主義者っつーか、ちゃんと現実のことを考えられるヤツって感じ。……でも、俺だってなんでもかんでもアニメ好きってわけじゃないんだからな……げっほ!」
「はいはい。分かった分かった。……咳き込むなら、無理に喋らなくても良いから……」
バカだなぁ。
お前だってこの咳の苦痛は味わったばかりだろう!?別に話している途中に言葉と一緒になって咳が出てくるわけじゃねえんだよ。例え喋らなくたって咳はどんどん出てくるものなんだ。くぅー……っ、咳がおさまらん!
「ん。卵とかネギとかも入れたから……」
大きめの丼に入れられた、うどんは卵がかきたまスープのように入れられているようで美味しそうにうどんに絡められている。そして、喉にもイマイチ効果が良いのか分からないがネギの存在もあった。
「さ、さんきゅーな……ごっほごほ……いただきます……」
正直、味はよく分からん。
薄味にしてくれているのか、そもそもが薄味に作られているのか、もしくは体調不良のために薄味に感じられるのか分からないのだが、今の俺にはこれぐらいがちょうどいい。卵もふわふわ状態だし、美味い。ネギも小さく切られているので食べやすい。それになにより、うどんがよくよく煮込まれているみたいで、結構柔らかく感じるのだが、これも胃になるべく負担を掛けないようにしてくれたんだろう。
「ん、うまい……」
「そりゃ、どうもー……」
さすがに、ずるずるーっと元気の良いときに麺類を食うみたいに啜って食べることが出来ないんだが(かなり喉が痛いため)これ、元気なときに出てこられたら絶対に、ずずーって啜って食べちゃうんだろうなあ。
一口一口に、かなり時間を掛けつつも麗奈はそう遠くない場所に座って俺が食べ終わるのを待っててくれているようだ。別に、麗奈はテレビを観たりしているし、たまにスマホをイジることもしているから退屈そうには見えないのだけれど、わざわざ俺のために食べるモノを用意してくれたことは有難く感じている。俺一人だったら、ここまでちゃんとしたモノを食えていただろうか?……いや、あまり自信が無い。適当な栄養補助食品系ばかりを口にしていたと思う。
こういうのは実家に暮らしているから助かるよなあ。
「……ごっほ、ごちそーさま……」
「全部、食べられた?」
「おう。……ごほごっほ、……美味かった、あったかかったし……」
丼の中を覗き込むと『おおー』と感心しているようだが、内心では驚いているんだろうか?それとも偉いなぁ、とかって考えたりしているんだろうか。
温かなモノをやっぱり食っていくと体もポカポカしてくる。まあ、この後には……薬を飲まなくちゃいけないんだけれど。
「あ。薬、ちゃんと飲んでよ?」
「うっ……わ、分かってる!……ごっほごほ!」
後片付けをささっと終えるとコップに水を持ってきてくれたので、急ぎ処方された薬……錠剤型と、液体型の甘苦い薬を口に入れ、このときばかりは咳をして噴き出してしまうことの無いように気を付けながら水をごくごくと飲み干していった。うえ、甘苦い……喉飴でも貰っておくか……。
「夕方ぐらいまで、また寝るんでしょ?暖かくしてなよ?」
「んー……分かってる。毛布とかすげー被って過ごしてるから……うん」
「……くれぐれもアニメなんて観てないでよ?」
「ぎくっ!」
「ぎくっ!ってなにそれ。……そんな状態なのに、アニメ観るつもりだったわけ!?」
「い、いや、その……ごっほごほ!眠くなるまでは……って感じで……」
「すぐに寝て!つか、寝ろ!」
「…………ハイ……」
麗奈の言葉が厳しい!
仕方なく、ビニール袋から二袋分ぐらいの喉飴を手にしていくと、新たにインスタントのあったかい飲料をカップに用意して部屋に戻って行った。
さすがにアニメは無理かー……。いやいや、こう体がしんどいときこそ愛しの人の声を耳にしたいところなのだが、そういう気持ちって麗奈には分からないんだろうか?まあ、あまりアニメに集中出来そうには無かったので最初からアニメを観るつもりは無かったのだけれど……シン、と静かな室内に小さく溜め息を吐いてしまう。
音楽でも掛けようか……いやいや、たぶん途中で気付かれて麗奈に止められてしまうかもしれない。大人しく、寝転がるか……。幸い、体はまだポカポカしているから、この分なら気持ち良く眠りにつけるかもしれないからな。
ぼふん!とベッドに寝転がり、何枚もの毛布を被ってまん丸くなりながら少しでも体調が良くなるように!!と願掛けをしながら大人しく瞼を閉じていった。
美味しそうだなぁ、おうどん。卵が溶かれていて、ネギも入っていて……じゅる。食べたくなってしまったじゃないか!!(苦笑)
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