第四十話 鬱も酷いが、他人からの優しさに泣きそう……
ライブまで、とうとう一週間を切ってしまった。
だが、俺の具合は最悪のままだ。
「!っげっほ、ごっほ!」
大人しくしているのに、食事をする以外はほとんどベッドの中で、静かに過ごしているというのに全然体調の具合が良くならない!何故だ!?薬もきちんと飲んでいるし、胃に負担を掛けないモノを母さんやら麗奈やらが気を遣ってくれて作ってくれているのでそれをきちんと食べて、食後の薬をきちんと飲んでいる。そーれーなーのーに!咳は止まらん。寒気もする!おまけに熱も出ていて頭もガンガンしている。
別に風邪だとかを侮ったわけじゃない。しかも、ライブまでは一週間を切っているから体調には気を付けていたつもりだった。それなのに、ここに来て最悪だな、おい!
しかも、今日は珍しいことにリモート朝会が入っていたりする。こんな状態で?俺は参加しなくちゃならないのか!?
でも、別に具合が悪くてもリモートなら誰にも迷惑を掛けるようなことにはならないか……それだけが幸いかもしれない。
なるべく厚着をして、何枚も服やらセーターやらを着込み、その上には毛布を羽織ってパソコンの前に着席した。本当ならこうして起き上がっているのもツラくてツラくて、すぐにでも横になりたい。でも、横になったところで頭は痛いからすぐに眠れるってわけでもなかったりする。たまーに、処方してもらった薬の影響だろうか夜辺りになると、普段よりも早めに眠れるようになってきた気はするが昼間は全然ダメだ。むしろ夜きちんと寝ているから昼間は寝ようとしていても全然眠れないのかもしれない。
「ふぅー……っげほごっほ!……こんな状態で、みんなと顔合わせするのか……ごっほ!」
リモート朝会の十分ぐらい前になって俺はようやくリモートアプリを立ち上げてカメラも起動させていった。もちろんリモートで顔を合わせることになっているのは、いつもの顔ぶれ。みんな、パッと見では健康そうに今のところ過ごしているみたいで……めちゃくちゃ羨ましい。一時期は、具合が悪くなったという連中もいたらしいが今日見る限りでは一番の重傷者は俺なのかもしれない。
「お、おはよー……ごっほごっほ!」
『く、黒瀬さん!?どうしたんです!?凄い咳じゃないですか!!』
『ま、まさか妹ちゃんのが移っちゃいましたか!?』
『つか、めちゃくちゃ着込んでんじゃんよ!しかも毛布も羽織ってんのか?どうした!?』
「……わ、悪い……っごっほ、ごほ!見ての通り、あんま体調良くないから……今日の朝会は手短に頼む……ごっほごほ!」
俺の様子を察してくれたらしく、あまりみんなは騒ぐことなく、手短に今日の連絡事項やら共有しておきたい情報だけを伝えておくだけに留めてくれたようだ。いつもなら、和気あいあいとしてそこそこに楽しい時間を過ごしているっていうのに、悪いな……。でも、マジでこうして起きているのもツラいんだよ……。こんなに厚着して毛布も被っているというのに体は寒いし、咳も出る。おまけにパソコンに向かっているだけだというのに頭が痛い……しんどい……コレ、鬱状態になっているときよりも、しんどいんじゃ……?
俺が使いモノにならなくなってしまっているから進行役には近藤が気を遣ってくれて、なんとかリモート朝会を終了させることが出来た。よし、これでベッドに行ける!横になれる!と思っていたが、まだちらほらリモートを繋いでいる連中がいるっていうのに、近藤が話し掛けてきた。
『おーい。マジ大丈夫かよ?世間の方は、だいぶ落ち着いてきて在庫ヤバかったらしい薬の発注もなんとかなってきているし、医療関係の方も咳の患者も落ち着いてきているってのにここに来て、ダウンか?家には一人じゃないんだろ?妹ちゃんも確かいたよな?後で、見舞い行くから』
「あー……いや、とにかく休む……げっほげほ!……あと、数日でライブに行かなくちゃいけないし……今のうちにダウンしまくって、ライブ当日は健康体で行けるようにするから、さ……げほごほっ!」
ほとんどリモート朝会ではどんな話をしていたのか、ほとんど頭に入っていなかったりしている。まあ、緊急の用があればスマホの方にも連絡を入れてくれるように頼んでおいたからそっちを確認すれば良いしな。
とにかく早く、横になりたい……。
「悪い、先に……接続切るわー……っげほごっほ!」
まさか、こんなにしんどいモノだとはなー……。こりゃあ一度罹って体験してみないと分からないツラさかもしれない。今一番ツラいのは?って聞かれたら、咳も寒気も頭痛も!って応えられる自信がある。そんな自信、持ちたくないけれど……。
『ゼェゼェ』と、まるで喘息の人がするような変な呼吸をすることも苦痛に感じながら厚着プラス毛布を被った状態のままベッドまで移動するとそこにごろんと寝転がった。はぁー……頭いてぇ……。喉もしんどいが、頭が痛いととにかく何もする気が起きなくてしんどい。これって熱のせいか?
「ごほごっほ!……ぅー……しんどい、寒い……REONAー……助けて、マジしんどい……うぅ……っ……」
ベッドの上で体を丸めながら咳をしつつ、弱音を吐いているとコンコン、とドアがノックされた。父さんか?麗奈、だろうか。
マスクを付け、毛布を被りながら(我ながら凄い恰好をしていると思う)ドアを開けると眉を顰めている麗奈の顔を目にした。
「……えっと、コレ……生姜湯じゃなくて、ホットレモンで悪いんだけれど……」
ホカホカと何か湯気が立ち上っているなあと思って視線を下げればわざわざ温かい飲み物を用意して持って来てくれたらしい。
「さ、さんきゅー……ごっほごほ!」
「……ねぇ、そんな状態で、ライブ行くつもり?」
「あ、当たり前だっつの……っげほ!ごっほ!……こっちは、待ちに待ったREONAなんだから!?ごほごっほ!」
取り敢えずカップは受け取るが麗奈のいる前でマスクを外すのは躊躇われたのでしばらく両手で包み込むようにカップを持ちながら、そして咳込むときには麗奈に飛沫がいかないようになるべくそっぽを向いて咳をしていた。
「……バカじゃないの!?ライブに出るってことは、これからいくらでも顔とか情報公開していくでしょ!?なんで、ライブにこだわるの!?」
「……初、お披露目の日になるんだぜ?……ごっほごほ!……俺の、REONA愛、知ってんだろ?俺が行かなくて誰がライブに行くんだっつの……まだ、あと数日あるんだから……だいじょぶだいじょぶ、治るって……」
「……無理して治さなくても良いでしょ。後で、おうどんとか作るから下来られそうなら下来て。無理そうだったら部屋に運んで来るから」
「ん。さんきゅー……ごっほごほ!」
なんつーか、してくれることはめちゃくちゃ優しいのに、顔とか言葉とかは厳しく感じたのは俺の気のせいだろうか?それとも体調が悪いせいで、厳しく感じたか……?咳き込みつつ、麗奈に用意してもらったホットレモンをゆっくり口にしていくと、甘酸っぱい感じが美味い!なんか、これ普通のホットレモンか?なんか、妙に美味い気がする。……自分で用意したモノじゃなくて、人に用意してもらったモノだからだろうか。飯とかもいつも以上に美味く感じるんだよなあ。そういう優しさとか温もりについつい泣けてきそうになるけれど『大』の大人がめそめそしていたら笑い話にされそうだから、そこは我慢だ我慢!
それにしても、麗奈は俺の体調が戻って欲しいのか無理して治さないでほしいとか……一体どっちなんだ?あー、普段はREONAREONAってうるさいから、これぐらい大人しいぐらいの方が良かったりするんだろうか……ちょい、寂しいけれど。
ホットっていうぐらいだから、すげぇ体が温まる感じがした。それに寒く感じていた体もちょっとはマシになった感じがして、ちょっとはゆっくり休める気がする。うん、飲んだらすぐに寝よう……。
『おーい!今、家の近く!起きてるかー?家族の人いるんだよな!?差し入れ持ってきたからちゃんと食えよー!』
っていう近藤からのメッセージが来ていたけれど、既に俺はベッドで寝入ってしまっていて気が付かなかったらしい。
ライブまで一週間を切った、だと!?それ、体調が戻ったとしてもライブに行けるわけ!?(汗)
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