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第三十四話 鬱の俺がオススメするアニメを観てくれるようで、気分が上がる!

 今朝は久しぶりに自然と目を覚ますことが出来た。

 昨夜は早めに寝たし、たぶんめちゃくちゃ睡眠をとったせいもあるかもしれない。

 だいたい深夜遅く……朝方近くまでREONAが出演していたアニメを何回も観て過ごすことが多い俺の日課ではあるが、なんとなく昨夜は早く寝付いてしまったらしい。まあ、麗奈の看病のちょっとした疲れもあったのか?病院にも、患者側として訪れるのも久しぶりだったしなあ。


 小さな欠伸とともに体を伸ばすと改めて時間を確認した。イヤホンを外して充電をはじめていく。どうやら音楽諸々は俺の寝相のせいか、無意識のうちに止めてしまったらしく音楽はずっと流れていくはずが途中で止まってしまっていた。


「……手が当たったか?」


 しかも曲のど真ん中辺りで止まってしまっていたらしいから、俺の寝相が原因だったんだろう。でも、そこまで俺は酷い寝相をしている方でも無いと思うんだがなあ……。


 あ。そうそう、今日も朝には確かリモート会議があるんだった。時間には、まだまだ少し余裕があるな。会社関係、そして薬の研究・開発部ともそろそろ連絡を取り合っても平気そうな時間になってきたし、取り敢えず開発部の中で面識があるヤツに向けて『朝から悪い。咳止め系の薬の発注を多めに頼む。たぶんあちこちで在庫切れだ』と簡単なメッセージを送っておいた。まあ、そんなに悪いヤツではないが、あまり個人的なプライベートの趣味まで把握している……とまでは言えない間柄。なので、どうしても義務的なメッセージになってしまうのは仕方のないことだろう。

 簡単に、だが一応リモートもやるってことなのでシンプル過ぎることのない恰好に着替え(決してスーツなどには着替えない。リモートだぞ!?営業みたいに別にこれから外まわりに行くわけじゃないんだぞ!?それなのにわざわざスーツなんて着るヤツがいるか!?)一旦、自室を後にした。もちろん片手には飲み物を飲み終えてしまったカップ、そしてズボンのポケットにはスマホを入れて。


「……麗奈ー?おーい、起きてるかー?」


 そのまま真っすぐ下の階に降りるという考えもあったのだけれど、昨日の今日だし、具合が悪化していたら大変だから……と思って麗奈の部屋のドアを軽くコンコンとノックする。寝ていたのか、もしくはスマホでもイジっていたのか。少し間を置いてから少しばかりドアを開けてくれたがマスクをしていても何度も聞こえてくるのは咳の音。


「おは、よ……ごほっごほ……」


「……どうだ?咳は、まだまだ治まっていないのは分かる。熱とかは……?」


「一応、貰った冷えピタ……張りまくって、早めに寝たけれど……ごほっ……測ってないから、分かんない……」


「ふ~ん?なら、ちょうど良い。一緒に下行こう。ついでに何か食って薬も飲まなきゃだろ?」


 ドアが閉まらないように軽く押さえていると麗奈はちょっと離れ、カーディガンを羽織ってきて戻って来た。おお、ちゃんと部屋の外に出るときにはカーディガンを羽織ってて偉いなあ。……まあ、具合悪いのもあるかもしれないけれど。


「それだけ咳してて、ちゃんと眠れてるか?」


「ごほっ……いや、あんまり……」


「……だよなぁー……」


 ツラいのは本人が一番分かっているだろうから下手に慰めの言葉を掛けるのは逆に失礼だろう。まあ仕事柄いろいろな病気の人の状態とか、具合とかを見てまわることもあったりするからいろいろな病と日々戦っている人を目にしてしまうと自分がどれだけ健康に恵まれているかがよく分かる。そして、今回で言えば麗奈がこんなに近くで具合悪くしているのに、俺は今のところ何とも無いから微妙に申し訳無い気分にもなってしまったりするのだが、そこは敢えて自分に出来ることを、麗奈のためにやれることをしてやるだけだ。


 リビングのあるソファーに座って近くに畳まれていた毛布にくるまりながら体温計で熱を測りだしたのを確認しつつ、冷蔵庫を開けて喉を傷めている麗奈でも食えそうなモノを見繕っていく。あんまり朝は元からがつがつ食べるようなヤツじゃないけれど、食後の薬を飲ませなきゃいけなから何かは食べさせないといけない。

 母さんか、それとも父さんだろうか。昨日見たときよりも明らかに在庫が増えているプリンやらゼリーといった商品についつい苦笑いしてしまった。どっちかって言ったら……ゼリーで良いかな。

 ゼリーとスプーンを手に、麗奈の元へ行くとちょうど測り終わったらしい。さて、熱は……。

 37.8分。

 う~ん……微妙にまだまだ高熱の範囲……だよな。

 だが、マスクの隙間から見える麗奈の顔色を見ると昨日よりかは全然良さそうな感じはする。昨日はマスクで顔の大半が隠れているというのに赤い顔が見え隠れしていたものだからどんだけ熱いんだ、コイツ!とびっくりしたものだ。


「ほら、これ……。取り敢えず、食って薬飲んでくれ」


「……分かってる……ごほっごほ……」


 咳しながらゼリーを食していく麗奈を横目に、お湯で溶いて飲む生姜湯を用意してあげるとそれもテーブルに置いてやった。もちろん自分用にはインスタントのコーヒーを用意した。

 時折、咳き込んだ拍子だろうか、喉の変なところにゼリーを詰まらせたらしく軽く胸元をバンバンと叩いている姿も見受けられたが、小さくははっと笑ってやった。別に、バカにしたわけじゃないぞ?そういう仕草が可愛いと思って笑ってしまったっていう意味だ。


「おお、食った食った。つか、食欲って結構あったりするか?昨日もあんまり食って無いけれど……」


「う~ん……ごほっ、食欲は普通ぐらい?でも、喉が痛くて……あんまり食べたくない感じ」


「なるほど……」


 まだ小山先生のところから処方してもらった薬もあるし、喉の炎症に効くとされている噴射スプレーも近藤からの差し入れで貰った。喉飴は元々たくさん用意していたからしばらくの間は大丈夫だろうか……。


「あ。ちょいこれからリモートやってくる。そろそろ母さんたちも起きてくるだろうけれど部屋に戻るか?」


「んー……部屋に戻る……ごほっ……」


 ただ、このぐらいの歳の子がただ寝て過ごすってなかなかに大変なことだよな。いくら具合が悪いっていっても退屈しないんだろうか。やっぱり昨日のうちに話していたアニメの円盤でも貸そうかな……。


「取り敢えず、お大事に。スマホばっかイジってんなよ?退屈だったらいくらでもアニメの円盤貸してやるから」


「……えー……まあ、気が向いたら……観るから、貸して……ごほっごほ……」


 !お、ついに麗奈が折れた!いつもならアニメ系なんていくらおすすめしても観ようともしないのに、今回は折れた!

 すぐさま俺は自室に戻り、棚に並んでいる円盤(青春学園系アニメ)をごっそり手に取ると自分の部屋の前で待機している麗奈の手にドンと乗せてあげた。


「……え、こんなに?……ごほっごほ……」


「え、取り敢えず2クール分。原作の方は続いているらしいからアニメの続きもこれからやるんじゃないか?」


 きっと麗奈のことだから円盤を一枚か二枚だとでも予想していたんだろうが、俺はREONAが出演したアニメの円盤はきっちりしっかり全て購入済みだ。なので、今のところ販売されている2クール分の円盤全てを持ってきたので十数枚ほどあったりする。

 さすがにこれだけ一度に手渡してきたものだからビックリしたんだろう。目がまん丸くなっている。


「まあまあ!ゆっくり観て楽しんでくれ!んじゃ、また後でな!」


 リモート会議がはじまるまでは三十分ほど余裕があるものの、先にリモートを繋いでおいても良いだろう。先に来た連中と体調とかいろいろ聞いてみるのも良いだろうしな。

 ってことで、俺はしばらく自室にこもることになった。

 いきなりあるだけ円盤を持って来られるとそれはそれでビックリでしょう!絶対一話目から観るのが普通だけれど、全部見終わるまでに何時間かかるんだか……(汗)


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