第三十一話 REONAの謎を語り鬱々気分も上昇?
リアコ化、キモイとかウザイとか言うなっての!
俺レベルがリアコだなんて言っていたら世の中のオタクのほとんどがリアコなんじゃねえの?
SNSをちょっと見てみろよ。
推しのぬいぐるみだとかアクスタと一緒に外出して、食べているご飯とともに推しグッズとの撮影を楽しんでいるオタクなんてそこらじゅうに見かけるじゃねえか。さすがに俺はそこまでは出来ん!……REONAの担当したキャラクターグッズを持ち歩きたい気持ちはもちろんあるさ!でも、俺の仕事を思い出してみてくれ。俺は営業だぞ!?スーツ姿なんだぞ!?そんな大の大人がこれでもか!というほどの二次元のぬいぐるみを抱えて仕事場に行ってみろ。白い目で見られるならまだしも、引かれて誰にも声を掛けてもらえないって状況になるかもしれない。ハゲ上司なんて二次元そのものに対して需要が無さそうな感じがするから……。
『なんだね、そのぬいぐるみは!後生大事に抱えていないで、とっとと片付けたまえ!』
とかって言うに決まっているね!
それに、俺の趣味を知っているのは今のところ同期でデスクワークをしている近藤だけだ。まだ、近藤だったら俺の趣味に軽く引きながらも『それ持って来たのか!?はは!すげぇすげぇ!!』って爆笑するに決まっている。
『推しぬいと!』
『新幹線で移動だーっ!』
とかって呟きながら推しグッズの写真を撮影しているオタクたちをこっちはいつもどんな気持ちで見ているか知らないだろうよ。めちゃくちゃ羨ましいわ!四六時中どこでも推しグッズと一緒にいられるなんて羨まし過ぎるっつーの!
でも、麗奈が言うには俺はREONAだけでなく、REONAが担当しているキャラクターたちへの愛情も凄いのだという。
……そうか?
確かに、魔法少女系作品でREONAが担当したキャラクターのセリフは、どんどん思い出すことができるし、これはどっちかっていうと……作品愛じゃないのか?麗奈が言うには、そのキャラクターの名前をたまに呟いては『可愛い……好きだ……』って口に出していることがあるらしい。え、まじか!気が付かなかった。
さらにロボットアニメ系でREONAが担当したキャラクターたちが少しでもアニメ本編の中で苦しんでいる様子があれば俺も一緒になって苦しんだり、泣いたりして感情移入をしてしまっている。これも普通に作品愛に入るんじゃないだろうか。だが、それが普通の人よりもかなり重いらしいのだ。『うぅ、ツライ……生きろ、生きてくれ……』って、アニメを観ながら俺が呟いているものだから一体何を見ているのかと思えばそのロボットアニメだった……という話らしい。
いやいや、全然リアコじゃねえだろう、このぐらい!
もちろん俺の部屋はREONAの担当したキャラクターグッズばかりと化してしまっているが、それはあくまでグッズを、な?REONAが担当した証っていうものをちゃんと残しておきたいっていう純粋な感情から来ているものなんだよ。それが、麗奈からすると『キモイ』らしくて、リアコ化してきているらしい。
まあ、仕事とかでツラいことがあると部屋にあるキャラクターグッズに話し掛けることは日常茶飯事だし、愚痴やら悩みやらをキャラクターグッズに吐き出してしまうこともあるが……もちろん相手はキャラクターグッズだから何も言ってくれないっていうのは分かっているんだけれど、それでも話を聞いてもらっているだけで気持ち的にはだいぶスッキリすることもあるものなんだ。
「……ごほ、だからそういうところが、キモイんだってば……ごほっごほ……」
「いやいや、むしろ俺はキャラクターよりもREONAに愛を向けているから。もしREONAがもうちょっと情報を公に出してくれればここまで俺はキャラクターグッズばかりを集めたりしていないって、たぶん……」
そうそう。
俺がここまで作品の円盤やらキャラクターグッズを買い集めているっていうのは、REONAにも問題があると思うんだ。REONAは、所属している事務所もあやふやなところがあったりしているし、REONAっていう名前も本名なのか、偽名なのかすらも未だにはっきりとしていない。そのため、何処までが本当なのか嘘なのかも分からない人物なのだ。
「REONAって、なんであんなに秘密主義者なんだろうなあ?」
「……ごほ……秘密主義者?」
「声優として登録されているのはREONAっていう名前だけだぜ?歳も誕生日も何もかもが今のところ不明ってなっているじゃねえか。そろそろ少しずつでも良いから情報出してくれても良いような気がするんだけれどなあ……。だって、今の時代、情報で売ることも大事だろ?そんななかでREONAって素顔も出さなければSNSでも作品に対してだったり、本当に些細な発信をするばかり。よく、それで炎上っつか、アンチみたいなヤツらに攻撃されていないよなあ……」
コレが不思議なところ。
人間って存在があやふやなモノに対してちょっと攻撃的なところがあったりするものだから、不明な部分が多いREONAに対して攻撃的なコメントを向ける人がいそう……と思われるが、今のところ無事なようなのが不思議なんだ。もしかして、背後にはめちゃくちゃ優秀なIT関連の人たちが付いていて悪質なコメントは即削除するようにしているとか?……凄いセキュリティーだな、それ!
「アンチって……ごほごほ、声優にも、アンチっているわけ?」
「そりゃあ何処の界隈にもいるだろ。些細な一言でも今や炎上のきっかけになるような時代になってきているんだぜ?あー……もしかして、そのせいか?さりげない発言でも、それが情報の元になるかもしれないと思って、下手な発言は極力避けている、とか……?それにしても、作品とか……今回なら、体調を崩したっていうSNSの発信はしていたみたいだけれど、コメントに残るのはREONAの純粋なファンたちばっかりだったりするから『早く良くなってね!』とか『ゆっくり休んでくれ!』みたいなコメントばっか。アンチ的なコメントって一切見られない感じがするんだよな。普通、一人ぐらい『体調管理が出来てないからじゃね?』みたいなコメントがあってもおかしくないはずだろ?」
俺があまりにも熱を込めた語りをしてしまったせいだろうか麗奈はツラそうに頭を押さえて俯いてしまったのだけれど、単にちょっと頭痛がしただけのようだった。
「ごほごほっ……まあ、SNSにはいろんな人がいるからね……でも、そんなにファンっているモノなの?REONAって情報が少ない声優、でしょ?」
「まあ、俺みたいに古参のファンもいれば、ここ数年のうちから好きになったっていうファンもいるかもしれないけれどな。もち、俺みたいなヤツはREONAがどんな発信をしたって、その人の自由なんだからどんな発信でも受け止めるぐらいの覚悟はあるね!……だが、まあ……アニメ雑誌の他の声優との匂わせ記事にはびっくりしたんだけれどさ……」
「匂わせ、記事?……ごほっ」
麗奈も俺の語りに興味を示してきたのか、アニメ雑誌で他の声優とやけに仲が良さそうにしている感じの取材記事の内容を教えてやった。すると、麗奈は目を丸くしてしまった。何度か瞬きを繰り返すばかりで、特には何か言葉を発することもしない。
「ソイツの名前……あー、なんつったっけ。俺REONA以外はどうでも良い主義だからさ、あんま覚えていないんだけれど……最近出て来たっていう若手の声優。つか、相談ぐらいだったらスタジオ?とかで存分にやれば良いだろう。お前もそう思わねえ?」
「……あー……うん、そうだね。仕事先が同じなら、そこですれば良いと思う……うん……ごほっごほ……」
「だろだろ?ったく、たまたま職業が同じ、同じ作品に出演するから仲良くなろうだなんておこがましいっつの!」
だんだん、件の声優への愚痴になりながら麗奈と会話をしていると父親が帰宅し、麗奈の具合の調子をみながらゆっくりと夕飯をみんなでとると、家族団らんのためにソファーに座り、各々好きな飲み物を用意してくつろいでいた。
まあ、話せば妹ちゃんもしっかりと聞いてくれるっていうことよ。もしくは兄貴の熱意に負けた……のかもしれないけれども(汗)
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