第二十九話 ふざけたメールは鬱が和らぐ
麗奈にお叱りを受けながら、ヒソヒソ話になりつつ母さんとの会話を継続。
もしかして、頭も痛いんだろうか……ちょい普通の風邪とは違うみたいだから分からないけれど、頭痛とかは酷いんだろうか、大丈夫だろうか……。
今月に予定しているライブにもちろん行く予定だよ!チケットも買ったしな!と母さんに当たり前のように言うが、今になってちょっと怖くなってきた。今、世間はこんな状態。ちょっと出掛けるだけでもマスクを付けることが当たり前になってきた。が、マスクをしてまでライブやらコンサートやらに行くものか……?つか、開催を予定している方だって、こんな状況の中で無理にやる……んだろうか。いや、そこは無理をしてでもやってもらわなきゃ困る!なんて言ったってREONAの初お披露目になるんだからな!REONAファンだったら、やっとその顔が見られるんだから例え具合が悪くても行くはず!(正直、具合の悪いヤツらは家で大人しくしていてもらいたいが気持ちは分からんでもない)俺なら、どうするだろうか……万が一、ライブの前日に風邪……いや、風邪ぐらいならば無理してでも行く。なら、インフルエンザとかだったらどうだろう?俺の足は、会場まで保ってくれるだろうか……REONAをその目に焼き付けた後ならいくらでもぶっ倒れてくれても良い、が……途中で、力尽きるぐらいだったら行かないかも……?
「う~ん……でも、俺がどんなに騒いでも今のところはライブ休止って連絡は入って来てないからなぁ……やるんじゃないか?」
「え~?でも、人がいっぱい集まるんでしょう?そんな所に行くなんて……お母さんだったら反対しちゃうけれど……」
「まあ、まだ今月だって始まったばっかだし。ライブは今月末だからさ。どうなるかなんて分かんないし」
「……その、声優さんは?情報発信していないの?」
「いや、体調崩したって言ってるだけかな、今のとこ」
スマホは部屋に充電して置きっぱなしにしてきてしまっているので、もしかしたら新たな情報が発信されているのかもしれないけれど、今はスマホをイジってる余裕も無い。あ、いや、もちろんREONA情報も欲しいけれどな!
ちょっと落ち着いたらしい母さんは早速夕飯の支度を始め出した。まあ、だいたいいつも母さんに任せっきり。ちょっとは……たまには、手伝った方が良いんだろうか……。
「……えーっと、ちょっと……たまには俺も手伝うか?」
「あら。いいわよ~。あなたは麗奈の様子でも見ていて?それにスマホは?まだ充電中?会社から連絡とか入っていないか確認しなくても良いの?」
うぅ、そんな痛いところを突いてこなくても……。へいへい、俺は大人しくスマホでもチェックしていますよ~っと。
一旦、自分の部屋に戻り、ついついあちこちに置かれているREONAが担当したキャラクターグッズに目を奪われてしまうが、そこをなんとか堪えてスマホだけをチェック。主に、充電具合を。そして、ほぼ充電されたスマホを片手に、再びリビングに戻って行った。……だ、大丈夫だ。部屋のキャラクターたちとはいつでも会える!つか、夜寝るときにはずっと一緒にいられるんだから、今ぐらいは妹のことをきちんと見ていないとな!
「えーっと……特には無し、か。……開発の知り合いは……あ、でも薬を作る機械の稼働量を増やしてくれって今日言っても実質稼働するのは明日からだよな……う~ん……」
いつ連絡を入れるべきか、迷っていると近藤からメッセージが届いていることに気が付いた。俺がメッセージを送ってから少し経ってから返事をしたっぽいな。
『はは!REONAも女の子だってことじゃね?そろそろ声優、つかREONA離れをする時期になってきたんじゃねえの?現実に向き合え!それから妹ちゃーん!マジ、心配!見舞い行きてぇ!!!』
フッ……俺が、REONAから離れる生活をするだと?そんなこと出来るわけねえだろうが!!REONAは永遠に不滅なんだよ!例え、REONAが声優界から引退するようなことになったってREONAが担当してきたキャラクターはいつまでも俺の中で生き続けるんだ!あー……でも、そんな……現実を見ろとか言うなよー……鬱になるじゃねえか……。
つか、やけに麗奈のこと気にしてるなあ、コイツ。まさか麗奈に気があるとか!?いやいや、面識は無かったはずだよな……。
『REONAは不滅でっす!ハート。つか、見舞いになんかゼッテー来るな!騒がしいのがいたらぶち切れるからな!あと、差し入れなら大歓迎!ハート。』
メッセージの内容とは合わない、ハートを飛ばしまくっているスタンプを付けてやると俺は一人ニヤニヤした。これを目にしたとき、少しでもウケたりすると面白いんだけれどなあ。近藤って仕事はもちろん真面目にやるけれど、ふざけるときにはとことんふざけて俺の話にもノってきてくれるからなかなかに反応が面白かったりする。まあ、だから俺の趣味も話せているんだけれどな。
『あ、あと。お前もフラフラ出歩いていないで、なるべく家にいろよ?あっちこっち歩いて感染貰うなよ!?つか、感染すんな!』
続けてメッセージを送ると、改めて薬の研究・開発をおこなっている部の人たちとの連絡はどうしようかと悩み始めた。別に今の時間帯にメッセージそのものを送ることは変なことじゃない。たまーに、勤務外の時間でも緊急の連絡があった場合には連絡していることもあるからだ。ただ、今回のようなケースだとどうだろう……もしかしたら、今も激務だったりするのか!?
『う~ん、悩ましいわね……でも、頑張るのよ!う~ん、悩ましいわね……でも、頑張るのよ!』
「うお!?」
かなりの大音量で流れてきたREONAのボイスにびっくりしたのは俺だけではなかったらしい。近くで毛布にくるまっていた麗奈もひょっこり顔を出すと目だけで『うるさい』と圧を掛けてきやがった。はい、すみません……コレは、俺が悪かったです……。
つか、かなりの音量が出たよな……本当にそろそろ変え時か?
……あれ?ちょーっと待てよ。今の……今のボイスを思い出せ。……冒頭の、『う~ん』っていう声、麗奈がさっきぼやいた声に似ていなかったか?つか、かなり似ていなかったか!?
「れ、麗奈ー?だ、大丈夫か?何か必要なモノでも用意するか?」
そーっと声を掛けるものの、毛布を被った麗奈は余計に口を開きたくないのか(喋ろうとすると咳も一緒に出てくるので)無言のまま、首だけを左右に動かしている。なんとも、ちょっと可愛らしいおもちゃのようになってしまったのだが……まさか、コイツ……前もちょっと思ったときがあったけれど、コイツがREONAだったりするんじゃないのか?
「いやいや、そう首なんて振らずに。あったかい生姜湯でも用意してやるよ」
「っ、い、いらな……ごほっごほ……」
う~ん……さすがに、咳き込んでいる状態の声を聞いても『少し似ているか?』ぐらいにしか聞こえないか……。さっきの唸り声のようなモノは、かなり似ていたから声質が似ていたように聞こえたのか?でも、REONAのボイスを毎日のように耳にしているんだぞ、こっちは。もう、声優マニアだとかの域じゃないんだからな!
「……な、なあ。麗奈ってさ……もしかして……」
どうする。ここで、ズバッと聞いてみるのは有りだろうか……。でも、なんて聞く?『お前って声優のREONAなのか?』と直球で聞くか?でも、普通の人間からすればいきなりそんなことを聞かれても困るだけ。でも、我が家では俺がかなりのREONA好きっていうのは知られていることだから、REONA愛がどうこう言っていてもおかしくはないだろう。ただ、ちょっと声の感じが似ているから『お前ってREONAに似てるとこがあるかもなあ』とかってちょい匂わせる感じで聞いてみようか……。
俺が途中で言葉を切ってしまったからさすがの麗奈も不思議がってどうしたんだ?と俺を見ている。うう~ん……どうやって聞くべきか!?むしろ聞いちゃっていいのか、これ!?
身内が大好きな声優だったら……そりゃあ、もちろん大喜び!……あれ、でも妹だぞ。妹に好き好きアピールしてる兄って、うざいキモイことこの上無いって感じで冷たくされる!?ど、どうしよう!?
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