第二十三話 妹の部屋にある家具が高級過ぎて……鬱になりかける
一応、米もある、うどん系もある。
具合が悪く、今の麗奈は喉をめちゃくちゃ痛めてるようだから……なるべく食べやすい方が良いか。
自分の昼ご飯にはまだ早く感じたものの妹の麗奈はきっとまともに朝食すら食べていないはずだ。だったら、少しでも食べやすいものを食わせてきちんと薬も飲ませてやらないとな。
さて、キッチンには立ったものの(もちろん家の中でもマスクは外していない)……何を作るべきか迷う。ここは、王道のお粥か?でも、お粥っていうのもなあ……よくよく煮込んだうどんとかの方が良いだろうか。麺類の方が、なんとなく喉も通りやすそうだし、食欲があまり無くても食える感じがしないか?そう思った俺は、冷凍庫からカチカチに凍られているうどん一玉分と、冷蔵庫を開けて卵やネギといった材料を出してキッチンへと並べていく。別に具合が悪いから無理に何かを食べさせなきゃダメってことはない。ただ、食後に飲ませる薬とかがあるから何かちょっとしたモノでも良いから食べさせないと。それに、とにかく栄養をつけてもらわなきゃ体もしんどいだろうしな。
冷凍うどんを解凍させて、茹でている間にネギを刻み、卵を溶きほぐしていくと軽い塩で味付け。茹でられたうどんの中に卵液をくるくると円を描くように入れていくと丼に入れた。最後に刻んだネギを入れて完成。簡単な料理だが、病気で弱っているときにはこれぐらいシンプルな料理が一番なんだよ。あ、俺って料理出来たのかって?別に小難しい料理はさすがに無理だろうけれど、今日みたいにササッと作れるものならば俺にだって作れるっての!
麗奈愛用の箸と丼、それから薬袋をお盆に乗せて溢さないように注意しながら麗奈の部屋の前へ。コンコン、と軽くノックするとゴホゴホッと咳の音とともに麗奈が顔を出した。
「な、なに……ごほっごほ!」
「ほら。お粥じゃなくて悪いな。卵入りうどん。喉痛いんだろ?うどん、よく煮込んだから食べやすいと思うぞ」
「……め、珍しいね……げほっ、兄貴が料理するの……ごほ、ごほっ」
「あのなあ。妹がこんな状態で何もしない兄貴なんているのか?ほら、お盆持ってきたから部屋入るぞ」
「え!?……ど、どうぞ……ごほ、ごほっ……」
なんか、久しぶりに麗奈の部屋に入った気がする。よく整理整頓がされていて無駄なモノは特には無い……と思っていたのだが、愛用しているパソコンの近くには、そこそこの値段がするんじゃないかと思えるマイクが。……は?マイク!?
麗奈の部屋の真ん中辺りにカーペットが敷かれその上にローテーブルがあったものだから、取り敢えずお盆はそこに置いた。つか、カーペットって……え、これフカフカじゃね?これ、二〇リとかで売ってるようなヤツとかじゃないのか?そこそこの値段するヤツだろう。このローテーブルだって決して安価なものではないはずだ。
決して無駄なモノは無い部屋。しかし、部屋にある家具たちはそこそこの値段のするようなものばかりが多い。おいおい、こんな高い家具一体どこから買ってきたんだよ。二〇リとかじゃないのか!?父さんや母さんに強請って買ってもらったんだろうか?もしくは、アルバイト……いや、夕方だってそんなに遅く帰ってくるってことは少ないよな……。
「げほっ……い、いただきます……こほっ……」
「お、おお。……熱いから気を付けて、な?」
なんとなく麗奈の部屋の家具たちが気になってしまって、というかきちんと食べて薬を飲むことも確認するついででもあったのだけれど、俺もカーペットの端っこの方に座らせてもらった。やっぱフカフカじゃねえか!
「……な、なあ。あのマイクって……お前、何か動画とか作ってるのか?」
「ごほごほっ……ど、動画?」
思わずパソコンの近くに存在しているマイクを指差しながらたずねると顔に?を浮かべる麗奈。あれ、違うのか。マイクがあるとついつい何かの動画を作ってネットにあげるとか……だと思っていたのだけれど違うんだろうか。
「なら、ゲームとか?今、オンラインゲームっていろいろあるし……いや、でもあのタイプのマイクだとゲームの邪魔になるよな……」
オンラインゲームでボイスチャットをする人もそこそこに少なくないとされてきている昨今。ヘッドフォンタイプって言うのか?頭に付けるタイプのマイク付きヘッドフォン。でも、麗奈のパソコンの近くにあるのは、なんつーか、ザ・マイクってタイプ。えーっと、昔の歌手たちが歌うときに手にしているのとはちょっと違うタイプで……なんつったかな……コンデンサーマイク?みたいなヤツだ。それって収録とかによく使われているようなマイクってヤツじゃないのか?なんでそんなものが麗奈の部屋に。というか、そんなマイク何に使うんだ?
「……べ、別に……ちょっとした、趣味……ごほごほっ……」
「趣味って……そこそこ値段するモノじゃないのか?」
「どう、だろう。アレだって別に私が買ったモノじゃなくて借りてるモノだし……ごほっ」
借りモノ?でも、何のためにだ?
う~ん、といろいろとワケの分からない家具が揃っている麗奈の部屋は、ある意味俺の部屋とはまた違った意味で飽きない。コレは、どこで買ったものなんだとか、これってもしかしてあのメーカーの商品じゃないか?とかって結構思いつくものばかりだからついつい室内を見てしまう。麗奈は喉が痛むのか顔を歪めつつ思いっきり息を吹きかけて熱々のうどんをゆっくりと食していたから俺があちこちに視線が動いていたなんて分からなかったのかもしれない。
一食分のうどんでも休み休み食べていたせいだろうか、かなり時間を掛けながらもなんとか完食してくれたようで作った甲斐がある。さて、食後にはコレだ。
小山先生から処方してもらった食後の薬をドドンとローテーブルに置くとペットボトルの水も置いてやった。ちなみに、錠剤の薬もあるが、所謂シロップ型の薬もあって途端に顔を歪めた麗奈の顔を見て思わず失笑してしまった。
「ちゃんと飲めよ?じゃないと良くなるものも良くならないからな?」
「わ、分かってる……」
気持ちは分かる。錠剤なら一気に流し込んでしまえば良いのだが、シロップ型の薬って微妙に甘苦い。その味が平気だっていうヤツももちろんいるのだが、なかにはその甘苦さがどうしても苦手だっていうヤツもいるものだ。正直なところ、俺もあまり得意ではなかったりする。どうやらキョウダイ揃って味覚の好みというものは合っているようだ。
錠剤型の薬をシロップ型の薬で飲み込むと、急いでペットボトルの蓋を開けてごくごくと水を飲み込んでいく様に、そこまで苦手だったのか……と苦笑いしてしまった。でも、こんなに弱っているところとか必死な様子の妹を目にする機会っていうのもなかなか無いので、新鮮なモノを見られた気がする。
「……っ、の……飲んだよ……ごほごほっ」
「おー、偉い偉い。つか食欲も無いって朝は言ってたけれど結局全部食べたんだな。薬も飲んだし、たぶん午後は眠れるだろ。起きてスマホなんかイジるなよ?」
「ちょ、ちょっとだけ……使ったら……ちゃんと寝るし……」
残りのペットボトルの水をゆっくりと飲みながらマスクを着用していく麗奈。寒くはないだろうか、一応エアコンはあるし、自分で好きなように設定できるものの多少の熱が出ていると寒気があったりするものだしなあ。
一応、食事をしているときにはカーディガンを羽織っていたみたいだし、やっぱり健康には気を付けているらしい。でも、まさか感染するとは思わなかった。一体どこで感染してきたんだ?
「……なあ、感染した覚えとか……まわりに感染してそうな人がいたとかって分からないのか?」
「さぁ……人だって、そこそこいるし……」
そう、なんだよなあ。感染症の怖いところが、それだ。下手すれば見知らぬ通行人とすれ違った際にウイルスが感染した!なんてことだって考えられる。電車やバスで、たまたまた感染している人と一緒に乗ったってだけで感染する危険性もあるんだよなあ……。
って考えていると、じっと見てくる麗奈。あ、やべ、長居し過ぎたか?
「あ。悪い悪い。んじゃ、片付けるわ。……ゆっくり休めよ」
「……ごちそう、さま……ごほっ、おいしかった……ありがと……」
「!おう、んじゃお休みー」
軽くなったお盆を手にして麗奈の部屋からキッチンへ戻る俺は、ニマニマが止まらなかった。麗奈が、あの麗奈が素直だ!くぅ、こういうところ、妹って可愛いんだよなーっ!!
妹萌え?いや、REONA愛も凄いけれど、シスコンの素質もかなりありそうです!!妹ちゃんの具合が心配ですね……少しでも良くなりますよーに!!
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