第十八話 好きな人が誰かと連絡先を交換!?……鬱だ
一瞬だけ、妹の麗奈がREONAでは!?と思ったが、やっぱり無いな……。
やっぱりREONAは俺とは住んでいる世界そのものが違うんだ!そうに違いない!(いや、住んでいる世界は同じに決まっているだろう、っていうツッコミは無しにしてくれ!)
第一、もし麗奈がREONAだったりしていたら……俺は、毎日のようにREONAと朝の挨拶を交わし、日常会話もおこなっていたってことになる。いやいや、有り得ないから!REONAが俺と!?あーでもない、こーでもないっていうバカみたいな話に付き合ってくれているってことだぞ!?無いわー!それだけは無い!それに、麗奈の口からは『キモイキモイ』ばっかりだ。REONAが『キモイ』だなんて言うと思うか!?ファンである、俺にはもっと優しくしてくれても良いだろう!あ、なんか現実を受け入れると途端に物悲しくなってきた……鬱になりそう……。
「だいたい、REONAも紛らわしいSNSを発信するなっての!こっちは、マジラブしているんだから些細な共通点を見かけるだけで、胸がドキドキしまくるんだって!……でも、REONAって写メ撮るのも上手そうだなあ……さっきのシュークリームの写真だってきちんと綺麗に撮ってたみたいだったし」
日常的なモノを写真で撮るのは簡単……だと思っていないか?ちょっとした光の加減で、ぼやけることもあるし、写真に映る対象物によってはどれぐらいの距離で写真を撮るべきか、ってめちゃくちゃ悩むんだからな!
俺はー……その、なんだ……REONAグッズキャラクターたちには愛を込めて写真におさめているだけであって、特別写真の技術が上手いってわけじゃない。とにかく、グッズを写真に、スマホの中に保存しておきたい!って気持ちだけがある。だから多少ぼやけようが構わないんだ。
ピコン、ピコン!
「な、なんだ?」
これはREONA関連の情報が入ったときの連絡通知じゃない。通話……電話がかかってきた音だ。さっきハゲ上司からは緊急の連絡が入るし、今度は何処のバカだ!?と思いつつ電話の主の確認すると、そこには『近藤』の文字。はあ?今度は、近藤からかよ。また、仕事関連の話でもする気なんだろうか。やれやれ、とベッドに腰かけながら通話に出ると『もしもし?』と声を発していった。
『よぉ!和馬!明日からしばらくの間、会えなくなるだろ?だから寂しいだろうと思ってさ!』
「だーれが、寂しがるもんか。ウチには……つか、俺の部屋には、REONAグッズに囲まれているから全然寂しくなんかないからな」
『まったまた~。ホントは寂しくて今にも泣きそうなんじゃないのか?』
「アホ話がしたいってだけなら切るぞ?」
『わぁ~!待て待て!!結構、お前にとって重要な話だから!よく聞けっての!!』
重要な話?仕事の話だろうか。それならハゲ上司からさんざ聞かされたよ。しっかり予防しろ、とか。体調には気を配れ、とか言うつもりなんだろう?それぐらい俺でも分かってるっての。だいたい俺たちの働いている会社はどんな会社なのか忘れたわけではないだろうな?一応、医薬品を扱っている会社なんだぞ?世に出回っている医薬品の会社!だからこそ一般企業よりも新たなウイルスとか感染症にはデリケートな部分もあったりするんだ。
「はいはい。だから何だよ?」
『いや、たまたま寄ったコンビニでさ。ほら、和馬もたまに読むっていうアニメ雑誌があるだろ?そこに、とある声優の取材が掲載されていたんだけれどさ。……なんつーか、同じく声優のREONAと仲が良い感じに匂わせてるようなコメントがあったんだよなあ……』
「は?」
REONAとの仲を匂わせる記事、だと?一体どこのどいつだ、それは!!
『とあるアニメ関連の取材だったと思うんだけれどさ。REONAも一緒に出演しているらしくて空き時間とか作品に関しての相談をしていくうちに連絡先も交換し合っていて、作品の相談だけじゃなくて日常的な会話も楽しんでるふうなコメントがあったぜ?』
俺の、何処かがぷつんと切れた気がした。
「……なんていう声優だ?」
『は?な、なんだよ急に真面目口調になりやがって?』
「そいつは何処の声優だ!!」
『うわ、ちょ……はぁ!?何キレてんだよ、俺だってそんな声優には詳しくねえよ!ただ、そういう記事が載っていたってだけで……』
「アニメ雑誌っつーと、アニ〇ディアだよな!?アニメキャラが表紙になっているあの雑誌だよな!?」
『た、たぶんな……つか、おいおい。今から外出るのか!?あんまりフラフラ出歩かない方が……』
「バカ野郎!REONAにもしものことがあったらどうするんだ!?その輩を徹底的に調べ尽くす必要が俺にはあるんだよ!」
半ギレ、というかかなり怒鳴りながら通話を続けていくと、不意に部屋のドアが『コンコン』とノックされた気がした。やべ、うるさかっただろうか……と思い、近藤との通話はそのままにしながらそーっとドアを開けると、ドアの真ん前には真顔の麗奈が突っ立っていた。
「……ど、どーしたー?やっぱり設定、上手くいかなかったか?」
「……うるさい。兄貴のうるさい声がこっちにまで聞こえてくるの!もうちょっと静かに喋れないの!?」
「はい……ごめんなさい……」
俺が素直に謝罪をすると、それだけが言いたかった麗奈はそのまま静かに自分の部屋へと戻って行ってしまった。さすがに俺も近藤からの知らせでぶち切れてしまっていた感はあったものの、ちょっとぐらい良いじゃないか!だって重要な……俺の生活で何よりも重要なREONAに関することなんだぞ!?
シュン……としながら、ベッドに置きっぱなしになっていたスマホを片手に近藤との会話を再開していった。
『はは、今の妹ちゃんか?お前、妹にも頭が上がらないのかよ?』
「う、うるさい……お前がいろいろ言ってくるから俺だって白熱しちまったんだっつーの」
『はいはい。悪かった悪かった。今度妹ちゃんの好みのスイーツでも持ってってやるよ。妹ちゃんって何が好きなんだ?』
「麗奈か?んー、特に好き嫌いは無かったような気がするなあ。あ、つかどうせ妹に持ってきてくれるんなら飴とかにしてやってくれよ」
『飴?おいおい、そんなんで良いのかよ?』
「あー、ほら。感染症の話しただろ?そうしたら喉をしきりに気にしてたみたいだったからな。俺もさっきコンビニ行って喉飴買って来てやったし」
『へぇ~?和馬もREONAばっかりじゃなくて、きちんとお兄ちゃんしてるんだな』
「当たり前だろ。妹なんだし、なんたって俺はお兄ちゃんだからな」
『へいへい。んじゃ、またなー。あ、本当にREONAと仲が良いとは知らんがあまり相手の声優のこと調べたりだとか嫌がらせとかしたりすんなよー!』
「わ、分かってる!ほどほどにするっての!」
『ほどほどかよ』って最後には爆笑されながら近藤からの通話は切れた。
それにしても……REONAの名を出した声優、だと!?何処のどいつだ。それに連絡先を交換!?それって、普通に仲が良い友達以上ってヤツじゃないのか!?あ、今の時代的にはどうなのか知らないが、だいたい連絡先の交換って好意があるヤツじゃないとしないよな!?だいたい業界は一緒なんだからいちいち連絡先を交換なんかする必要は無いだろう。
アニ〇ディアだったか……今からコンビニ……に行く気力はさすがに無い。明日にでもコンビニに顔を出してみるか……。だが、声優界も誰と誰が交際をはじめただとか、結婚報告だとかって話をよく耳にするようになったもんだ。ちょっと前なら声優のそういう話なんてほとんどメディアに出なかっただろう?時代も変わればメディアの取り上げ方も変わってくるもんなんだなあ……。
あー、でもREONAと連絡先の交換かー……ちくしょー、羨ましいヤツめ!!!
趣味を知っているからこそ、ここぞとばかりに情報をくれる同期!こういう人がいると楽しいんだろうなあ!!あ、でもREONA関連だとお兄ちゃんが興奮しまくるので内容には注意しないと!!(汗)
良ければ『ブックマーク』や『評価』などをしていただけると嬉しいです!もちろん全ての読者様には愛と感謝をお届けしていきますよ!