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第十七話 身内を疑うのは、鬱になるのでやめましょう

 一瞬、ほんの一瞬だけ……REONAってもしかして麗奈?って思ってしまった。

 が、よくよく考えてみると、それは有り得ないだろう!と納得した。

 麗奈が、もしかして……REONA!?

 いやいや、落ち着け、俺!あまりにもREONA愛が強くなっているから、そばにいたらどんなに良いか!と妄想してしまっているんだ。だって落ち着いて考えてみろ。麗奈は学生。普通に学校に通っている。何処の学校?それは知らん。麗奈だってそろそろ良い年齢だし、いつまでも『何処の学校なんだ?学校の人とは仲良くしているか?』なんて聞くわけにはいかないだろう。それに、家の中でアニメをチェックしているところなんて一度も見たことがない!普通、声優だったら自分の出演した作品とか観直しするものじゃないのか?作品の完成度とか、自分の演技力とかをアニメを観ることで点数を付けたりするものじゃないのか?麗奈は、リビングでアニメとか二次元の話なんて一切したことが無い!一般的な、あまり二次元的なものには興味が無さそうな若者だ。


 昔、俺が半泣きになりながらリビングでREONAが出演しているアニメを観ているときだって、後からやってきた麗奈は呆れた顔をしながら何て言ったと思う?『……キモイ』の一言だぞ!?もしもREONAだったら、自分が出演したアニメを観てくれている人が身内にいたら感動するかもしれないし、『キモイ』なんて言うはずがないだろう!だいたい、声優ならアニメには詳しかったりするもんだ。それがそれが……リビングでアニメを観ていれば、すぐに違う番組にチャンネルを変えてしまうし、どちらかと言えばきちんとニュース番組に目を向けて世の情勢について考えているような妹だ。だから、有り得ない。


「はは、無い無い……うん、それは無いだろう……」


 アニメの台本らしきモノを持っている素振りだって見たことは一度も無い!演技の幅を広げるために、何かしようとしているようなことだって見たことはない。役者とか声優なら台本を貰ったりすれば、家の中で読み込むことぐらいあるんじゃないのか?……あまり、その……芸能の世界っていうのは詳しくは無いのだが……。家の中で麗奈がしていることは……リビングでは、テレビ(ニュース番組)を観るか、スマホを操作するぐらい。スマホねぇ……まあ、さっきは妙に神妙そうな顔でスマホを操作していたけれど……学校がしばらく休校状態になるっていう話だったし、その関係で『どうしよう……』とかって考えていたんじゃないか?うんうん。


「麗奈は、ちょい低めのボイスだけれどREONAは普通に中音域から高めの音質をしているしなあ……」


 さっきは、もしかして……と思って、頭の中でちょっと声が高い麗奈を想像してしまった。が、人間そこまで器用に出来るもんか?しかも家の中で。家の中なんて、簡単にぼろが出るような場所だろう?今まで麗奈の慌てた声だとか、高めの声を聞いたことは……たぶん、無いはず。

 って、身内を疑い出したらキリが無いよな。……家族のことを疑っていたら、鬱になってくるから止めよう止めよう。


「……でも、もしも麗奈がREONAだったら……え、それって俺、妹にマジラブしちゃってるって事か!?いろいろな意味で、まずいだろうそれは!!」


 アニメキャラクターに愛を向けるより、実の妹へ愛を向ける!?その方が、何倍もやばいだろう!世間的に考えてもまずいことだ!声優だとかキャラクターに愛を叫んでいる方がよっぽど安全的じゃないか!?……だ、大丈夫だ。取り敢えず、今のところ麗奈がREONAっていう説は、どんどん消えていっている。だから、うん。大丈夫大丈夫……。


 ピロン!


 おっと、そうこうしているうちにREONAがまたもやSNSにて発信したようだ。えーっと、どれどれ……。


『スタジオにも一時的に行けなくなったみたいです……。明日も収録の予定があったんだけれど、これから先……どうなるんだろう……』


 と、それはそれは不安をSNSで発信して発散させているものだった。収録?新しいアニメ、もしくは今やっているアニメの続きとかだろうか。そうか……飛沫感染するって言っていたし、狭いスタジオで(スタジオには詳しくないが、そうそう広いってわけでもないだろう)何人もの声優が集まって収録するというのはしばらくは厳しいものになっていくんだろうなあ。

 あれ、でもスタジオに行けなくなったら……収録はどうするんだ?仕事みたいに、リモートを使って収録する?そんなことは可能なのか!?でも、スタジオに行けなくなったら、そうなるんだよな……。あまり麗奈の部屋ってズカズカ入ったことはないけれど(無断で入ったりしたら絶対に怒られそうだから)どうなっているんだろうか。さすがに俺の部屋みたいにキャラクターグッズとかで埋め尽くされているような部屋ではないはず。むしろ、片付いている……っていうイメージがあるんだけれど……もしかして、マイクとか、パソコン機器がしっかりと備わっている部屋だったとしたら……?そうなれば、わざわざスタジオに足を運ばなくてもリモート収録っつー手も考えられるんじゃないか!?


「……一人で勝手に想像していても仕方ない。……ちらっとでも良いから部屋、覗いてみるか」


 麗奈は、リビングか?それとも自室に戻ったんだろうか。

 俺は、自分の部屋から出て行くと隣の麗奈の部屋のドアを軽くノックしてみた。すると、ガチャと音を立ててドアが開き、控えめにドアを開くと部屋の中にいた麗奈が出て来てくれた。


「……なに、どうしたの?」


「あー、いや、うん……えっと……ほら、さっき何とも言えないような顔でスマホ操作していたからさ……何か悩み事でもあるのかと思って……」


 くそーっ、ドアが少ししか開いていないからはっきりと部屋の中まで見渡すことができないじゃないか!もうちょっと……もうちょーっとだけで良いからドアを開けてくれないか!?


「悩み事っていうか……明日からしばらく学校が休校になるから、どうしようかなって友達と話してたところだよ。……なに、気になるの?」


「あー……まあ、な。麗奈のお兄ちゃんだし?心配ぐらいはするさ!」


「……兄貴は、いつものようにアニメでも観てれば?REONAの出演するアニメ、撮りダメしているんでしょ?だったら、こういうときに観まくれば良いじゃん。……あんまり深夜まで爆音で観るのはちょっと避けて欲しいけれどさ……」


「お、おう……気を付ける……」


「……それだけ?」


「あー、えっと……そうそう!可愛いぬいぐるみがあるから麗奈の部屋にもどうかなって思って……」


「キャラクターグッズ?いらないいらない。兄貴の部屋に飾ってあげなよ……用が無いなら、いい?パソコンでリモート使えるようにしておきたいし……」


「あ、そのやり方分かるか?」


「うーん……あんまり。専用のアプリとか使うんだっけ?」


「そうそう。なんだったらお兄ちゃんが設定してやろうか!?」


「……一応、説明は受けてるからそれ見ながらやるから何とかなるよ」


「そ、そっか……それじゃあ、またな……」


 大した成果は得られないままトボトボと自室に戻る俺の背中を、麗奈は呆れたような顔をしながらしばらく見つめていたらしい。


 自室に戻ると、深い溜め息を吐きながら床に座り込んでしまった。麗奈の部屋もどうなっているのか分からなかったしなー……真相は謎のまま、ってか?くそーっ、無理にでもドアを押し開けて中を観察してやれば良かっただろうか。でも、妹には嫌われたくはないしなあ……。


『どんまいどんまい!次、頑張りましょう!どんまいどんまい!次、頑張りましょう!』


「おっと、いけね。イヤホン、耳に付けっぱなしだったのか」


 ついつい忘れがちになってしまうが、昼……仕事中でも夜、家で過ごしているときでもワイヤレスのイヤホンはずっと耳に付けっぱなしになっていることが多い。だから自室で過ごしているときに、流れてくるREONAの声を耳にするとイヤホン付けっぱなしだったのか、と慌ててイヤホンを外して充電をしていくのだ。


 やっぱり……身内を疑うもんじゃないなぁ……。

 あ、あれ。

 気付かずに、違うものとして納得しちゃった!?あら、残念!!


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