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第十三話 鬱になる光景は、何処にでもあるモンだ

 へへ、美味そうなモノを買えて良かった!それに、シュークリームがおまけだと!?

 めちゃくちゃ良い店じゃねえか!

 しばらくは、スイーツはあの店で買うことにするか!

 自宅までの最寄り駅に着くまで、電車の中は、マスクだらけだった。あ、いや、正確にはマスクを着用した乗車客ばっかりだったってこと。やっぱりみんな昼の速報を気にして、マスクを着用しているんだろうか。そして、速報を知らない、もしくは聞き逃してしまった一部のマスクを着用していない乗客に対して、マスク着用している乗客たちからは厳しい視線が向けられることとなった。そのうえ、マスクをしていない乗車客が少し咳払いをしようものならば、さらにグサグサと体に刺さらんばかりの視線が向けられる。マスクをしていない乗車客はあまり気にしていない様子だったけれど、俺だったらあんなに痛々しい視線を浴びようものなら、鬱が悪化すること確実かもしれない。

 そりゃあ、いろいろな予防のためにマスクは必要かもしれない。けれど、マスクをしていない人だって何か理由があるかもしれないじゃないか。もしかしてマスクを付けることができない皮膚を持っている人かもしれない。たまーにだけれど、マスクが皮膚に合わなくて皮膚が荒れてしまう人がいるってことも聞いたことがある。だから、大多数のマスク着用者でマスクをしていない人をガンガンに視線で責めるようなことはするなよ……なんつーか、弱い者イジメに見えてしまって気分が悪くなる。

 だいたいマスクをしていれば絶対に健康体そのものでいられるのか!?マスクさえしていればなんでもかんでも予防できるのか!?予防の一つにはなるかもしれんが、マスクだって万能アイテムってわけじゃないんだ。だからマスク着用者は、マスクがあるから最強!という意識を持つのはちょっとおかしいと思う。


『私は、革命を起こしてみせる!私は、革命を起こしてみせる!私は、革命を起こしてみせる!』


 不意にイヤホンから聴こえてきたREONAのボイスに、まさに乗車客が多い電車の中で、一つのy発言をしてみたいと思ってしまったが、実践は……無理だな。よく分からん人たちの中で、思い切って何か発言をするなんて、鬱の俺には不可能だ!

 でも、相変わらずREONAのセリフには酔いしれてしまう。もっと聴いていたくなるような、そして、もっと勇気付けてくれるようなセリフを聴いてみたいような……でも、たまには弱っている感じのセリフも聴いてみたくなるような……いやいや、別に意地悪でそう思っているわけじゃないんだ!俺は、REONAのいろいろな感情のこもったセリフを耳にしたいだけで、別に他意は無い!

 REONAは今のところ、ちょっと大人なキャラクターを演じていることは無いはず。そのため、セクシーなセリフというものも無いはず……だが、REONAへの愛が強い俺としては、ちょっとだけ……ほんの、ちょこーっとだけセクシーなセリフも聴いてみたいもんだ。が、そんなセリフをアニメで聴こうものなら世の多くのREONAファンたちにもそのセリフは耳に届いているということに……それは、ちょっと嬉しいような、嬉しくないような……。う、うん。セクシーなキャラクターは、まだしばらくは挑戦しないでもらえると……精神的に助かる気がする。


『さあ!着いたわよ!さあ!着いたわよ!さあ!着いたわよ!』


 自宅から近い最寄り駅に着くとドッと心身に疲れがあらわれたような気がしたが、まだまだ自宅へは徒歩で歩いて行かなければならない。改めて気合いを入れ直さないとな!


 だが、今日はいろいろとツイていたかもしれない。薬局ではゆっくり話し込むことができたし、総合病院でちょっとしたトラブルに遭遇することにはなったものの顔見知りの先生とご一緒することで院長先生とも話すことができた。俺の趣味の話でも盛り上がることができたし、万々歳だったかもな!そして、突然のREONAからのライブ出演の情報!かなりビックリしてしまったが、チケットは既に購入済み!あとは、ライブの日まで健康に過ごすことを目標にしていこう!


「ただいまー」


「あら、お帰りなさい。今日は和馬の方が早かったのねぇ」


「え?麗奈はまだ帰って来てないのか?」


「そう。少し遅くなる、とは連絡があったんだけれど……まだなのよねぇ」


 夕飯の仕上げをしてくれている母親に声をかけるのと同時に、買って来たスイーツを一旦冷蔵庫の中へしまった。すると、妹の麗奈がまだ帰宅していないことをつげられた。……まあ、アイツも子どもっていうほど子どもじゃないんだし、そこまで心配するようなことは無いと思う。専門学校?で、もしかしたら分からないところを先生に聞いているかもしれないし、友達と楽しく過ごしているってことも考えられるからな。あ、ほら、噂をしていれば……。


「た、ただいま~……あー、疲れた……」


 この声は麗奈だ。

 学校で勉強でもしてきたのか、それとも友達と遊んで来たのか……いずれにしても、だいぶお疲れの様子だ。


「お帰りなさい」


「お帰りー」


「……ただいまー……って、アレ?なにこれ……」


 真っ先に冷蔵庫に向かう我が妹。麦茶でも飲もうとしていたらしいが、冷蔵庫に入っている小箱に視線が止まったらしい。ふふん、聞いて驚け!


「それは、俺が買ってきたスイーツだ!後でみんなで食べよう!」


「……ってことは、例の声優の子絡みってことでしょー……はぁー……兄貴、キモイよ。まだ声優の追っかけしてんの?」


「う、うるさい!好きなものは好きなんだからしょうがないだろう!」


「……はいはい」


 ぐぬぬ……。一応、俺のREONA愛っていうものは家族には知られている。もちろん俺の部屋がどうなっているかということも。親は、しぶしぶ……といった様子でスルーしてくれているが、妹の麗奈だけは『キモイキモイ』ばかり言ってくる。あのなあ、声優……つか、REONA愛を語る俺をキモイって言うのは、REONAをキモイって言っているのと同じなんだぞ!そして、アニメ業界につとめているいろいろな人たちのことをキモイって言っているのと同じなんだ!まったく、失礼なヤツめ……。


「あ。そう言えば、母さんって昼に出た速報知ってる?」


「あぁ、ウイルス性の咳ですって?聞いたわよ。おかげで施設のみんな慌ててマスクを用意して、午後からはマスクしながら仕事していたんだから」


「おー、さすが。……麗奈……そう言えば、マスクしていなかったよな……」


「お昼の、速報?ごめん、分かんない。なに、それ?」


「今、子どもたちの間で熱は無いが咳が流行ってるんだと。飛沫感染するらしいからマスクと消毒をするようにって言われてんだぞ?学校ではそういう話、しないのか?」


「……あー、うん。全然、知らなかった。え、それ感染力強いの?」


「たぶんなー。飛沫感染するってことは、くしゃみすれば簡単に、そのウイルスが散らばるってことだろ」


「……そう、なんだ……気を付けなきゃ、ね……」


「ほら。マスク。まとめて買ってきたから、いくつかやるよ」


 昼頃にはまだドラッグストアに在庫はたっぷりと存在していたマスク。だが、今はどうだろうか。もしかしたら既に在庫は無くなってしまったという店もあるかもしれない。余分に購入しておいた未開封のマスクを麗奈にいくつか渡しておいた。


「!あ、ありがとう……」


「なんのなんの!それに俺も仕事柄気を付けないといけないしな。それに……へへ、今月末はライブだー!!!」


「……は!?」


「ライブだよ、ライブ!声優のREONAがSNSで発信してたんだよ!今月末のライブに出演するって!チケットももう買ったしな!」


「ちょ、ちょ……は!?え、行くの……?」


「当たり前だろ!REONA愛の俺が行かなくて誰が行くんだよ!」


 すっかり俺は今月末の声優ライブに気分をあげていたのだが、そんな俺のかたわらで妹の麗奈が何か言いたそうな顔をしていたことには気が付くことができなかった。

 麗奈ちゃん再び登場!そして、お母さんも登場!お父さんは……ゆっくりリビングでテレビでも観ていたのかもしれませんねぇ。麗奈ちゃん!兄貴の趣味にキモイキモイ言っていますが……ふふ、それは本心かしら??おほほ。


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