79話 運命の模擬戦30分前。(ロンとリン)
−模擬戦が始まる30分前、続いてロンとリンのいる闘技場の控え室にて−
「ハァ…想像してたけど、本当に田舎の町だね…」
「そう言わないであげて。さっき町のギルドの人から聞いたけど、この町、10年ほど前に魔族達に襲撃されて、半分以上の建物が破壊されたらしくて、再興して今の状態らしいわ。」
「ふーん。まぁ私にはどうでもいいけど、ふわぁぁ…ド田舎なのは変わらないから。」
「姉さんは相変わらず口がわるいわよね…?」
「ねぇ、それよりロン、私、さっき面白い情報を聞いちゃったの。」
「面白い情報?」
「この町にクマ耳の女の子が居るんだって、きっとその子、魔物じゃない?可愛かったら捕まえて、私達のペットにしようよ?」
「何バカなこと言ってるのよ、小さな女の子がおもちゃのクマ耳をつけてただけじゃないの?」
「えー?そう?」
「というか魔物が居たら、即刻、この町のギルドが捕らえてるか、退治してるはずでしょ?」
「それもそっか、ガセの可能性が高いってわけね。」
「そんなことより対戦相手について調べたのよ、教えるわね。」
「確かにそっちの方が重要かもね。」
「対戦相手はアリスって子とソノサキユリって子、歳はどっちも女の子で15歳らしいわ。」
「私達と2歳しか違わないのね。」
「まずアリスって子はリーベルの住人で、現在、Cランク冒険者、ギルドでは期待のルーキーって呼ばれてるらしいわ。」
「期待のルーキーね。」
「何でも10年前に当時、5歳だったのにも関わらず、魔族の部下を一人倒してるらしいの。」
「ほえ〜それは凄いじゃん、私達ですら、初めて倒したのはスライムだったのに。」
「私も驚いた。でもスキルを聞いて納得したわ。どうやら青い炎を体に纏うことが出来るらしい。」
「青い炎って確か、炎系の中でも3番目に強いはずよね?」
「ええ、昔、師匠が青い炎を扱えたら、Bランクは確実にあると思えって言ってたから。」
「よく覚えてるわね?まぁでも、所詮はBランク程度、Aランクの私達の敵じゃないって。」
「姉さんったら、すぐ油断するんだから。オッホン、でも重要なのは次のソノサキユリって子だよ、この子に関しての情報はあまり手に入らなかったんだ。」
「おや、どうして?」
「どうやら最近、冒険者登録したばかりらしい。」
「ふわぁぁ…なるほどね、ド新人さんってわけね。 だから情報が少ないのか。」
「だけど、唯一手に入れられた情報があるんだ。」
「ふーん、聞かせて?」
「冒険者登録した当時、スキルもなくランクがまだFランク程度のレベルでしかなかった、なのにそんな彼女が魔族を倒した張本人らしいの。」
「なるほどね。」
「これだけ聞いたら姉さんならわかったでしょう?」
「ええ、つまりそのソノサキユリって子は私達みたいに"上級スキル"を持っていると思っていいわね。」
「その通り、情報が確かならね。そしてそれを本人が意図して隠している可能性がある、相当の手練れと考えるべきだわ。」
「ふわぁぁ…まぁでもどんなすごいスキルを持っていても、レベルが私達より弱いんじゃ心配する必要ないでしょう。」
「ほらまた姉さんはすぐ油断する!私達の想像よりその子が強かったらどうするの!」
「考えすぎだって、私達に倒せない相手なんかいるはずないってば。」
「ハァ…沢山いるわよ…例えばリュナ師匠とか…」
「あはは、あの人ね、確かにリュナ師匠は色々と別格だからな?
私達より背が小さくて幼い顔してるのに、40歳越えてて、それでいて世界で数人しか居ないSSランクの冒険者の一人でもある、すごいよね、あのロリババア。」
「ロリババアは余計でしょう…?私達の師匠なんだから…?」
「だって本当のことじゃん?」
「あのね…?」
「師匠は元気でやってんのかな…?」
「そうね?忙しくてあまり会ってないから、今度、久しぶりに師匠の家に遊びに行こうか。」
「やだ!王都から遠いし!あの家の周りこそド田舎で何もないじゃん!師匠から会いに来てくれればいいんだよ、あの人、どこの冒険者ギルドにも属さない、放浪の旅が好きな暇人なんだし!」
「暇人って…あれでも師匠は…」
すると扉をノックされた。
「どなた?」
「ギルドの者です!模擬戦10分前になりましたので、お迎えに上がりました!」
「わかりました。今、行きます。ほら、起きて?姉さん、行くよ?」
「は〜い。ふわぁぁ…」
ロンとリンは闘技場の舞台に向かった!




