78話 運命の模擬戦30分前。(優梨とアリス)
そして時が流れて、いよいよAランク冒険者の双子姉妹との模擬戦当日がやってきた。
模擬戦が行われるのはリーべルの町にある闘技場、圧倒知名度のある双子姉妹と魔族から町を救った優梨達による戦いとあって観客席は超満員。開始30分前だというのに会場に集まる観客のボルテージはすでに最高潮に高まっていた。
«ワァァ!!»
−優梨達がいる闘技場の控え室にて−
「ゴクリッ…すごい数の観客が来てるみたいだね…?」
「町にいる人達、ほとんど来てるんじゃないかな?」
「だっだよね…?」
優梨はモニターに映る、あまりの観客の多さに緊張していた。
「おーい!」
「ひゃ!?」
クマ子に肩を掴まれて驚いた。
「なにビクビクしてんだべ、試合前から。」
「だっだって…あんなに人が集まるなんて思わなかったら…」
「緊張しすぎたよ。」
「アリスちゃんは緊張しないの…?」
「そりゃしてないわけじゃないけど。いつも通りだよ。」
「肝が座ってるな…?」
「もっとリラックスしろ。深呼吸だ、深呼吸。」
「スゥゥ、ハァァ…スゥゥ、ハァァ…」
言われた通りに深呼吸をした。
「どうだべ?」
「少し落ち着いたかな…」
「アタシも付いてるから。」
「アリスちゃん…」
「オラにおまえらがかっこよく勝利する所、見せてくれよ。」
「うん…」
「頑張るね。」
「応援してるからな。」
«ありがとう。»
すると扉を開けて、ミーナとソフィーが入ってきた。
「アリス、ユリちゃん。特製のお菓子と紅茶を持ってきたわ。戦いが始まる前に食べて英気を養って。」
«わぁーい!»
「もちろんクマ子ちゃんの分もあるわよ。」
「やったべ!」
三人はお菓子を食べた。
「ふぅ。美味しかったです。」
「本当だべ。」
「だよね。」
「皆、喜んでくれたみたいで嬉しいわ。」
「特に苺のシュークリームが美味かったべ。」
「それはね、ソフィーちゃんが作ったのよ。」
「そうなのか?」
「うっうん…」
「そっか。オラはこんなに美味しいお菓子を作れる、ママ達の娘になれるのか、幸せ者だなぁ。」
«クマ子ちゃん。»
「これからよろしくな。ミーナママ。ソフィーママ。」
「こちらこそよ。」
「よろしくね。」
「おう。」
笑い合うその姿は親子そのものだった。
「いい雰囲気だね。あの三人。」
「うん。」
「アリス、ユリちゃん。二人ならきっと勝てるはずよ。応援してるわ。」
「私も応援してる。」
「お姉ちゃん。」
「ソフィーさん。」
そしてちょうどよく扉をノックされた。
「どなたですか?」
「私だよ、ミノリ。模擬戦開始10分前だから二人を迎えに来たよ。」
「だってユリちゃん。行くよ。」
「うん。」
ユリはアリスの手を掴かんだ。
«行ってらっしゃい。»
«行ってきます。»
「頑張れよ!」
«うん!»
優梨とアリスは闘技場の舞台に向かった!




